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第5章 一難去っても、また一難

293★和輝の災難

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 和輝が紅夜とやせ細った〈カオス〉を連れて、蓬莱邸に帰ると爺やさん数名のボディーガードのが待機していた。
 その中には、和輝も見知っている清瀬や武田なども待っていた。
 勿論、爺さんの指示で、サッと車を入れる為に車用の門を開け、即座に閉めたコトは言うまでもない。

 流石に、狂信者達の襲撃があった後なので、出入りには最新の注意を払っているらしい。
 ただ、和輝としては、他に使用人が居るのに何で?爺やさんやボディーガード達の中でも中枢にいる人達がわざわざ出迎えるんだ?と思った。
 が、何をどう聞いて良いかわからないので敢えて黙殺した和輝であった。

 桜の待つペットハウスか、車庫か少し悩んだが、二度手間を嫌って和輝は車庫へと車を入れる。
 車を車庫で停止したところに、爺やさんが声を掛ける。

 「おかえりなさいませ、紅夜様。神咲くんお帰りなさい
  桜様をはじめ、皆様がお帰りをお待ちしてましたよ」

 「お出迎えありがとうございます、爺やさん 清瀬さんに武田さん
  俺はこのまま〈カオス〉抱えた紅夜とペットハウスに向かいます

  爺やさんは、白夜さんからの連絡待機中だったんでしょう?
  桜達は、俺達がいるから大丈夫だから、本邸待機に戻ってください」

 和輝の言葉に爺やはハッとして頷き頭を下げる。

 「神咲君、気遣いありがとう……はい、実は白夜様からの連絡待ちです
  では失礼して、私は本邸に戻ります

  武田、清瀬、見回りが終わったら、通常勤務に戻りなさい
  紅夜様もあまり顔色がよろしくありませんから、早くお休み下さい」

 爺やの言葉に、紅夜は肩を竦めるだけだった。
 どうやら、何か言うのも億劫になっているらしかった。

 そんな紅夜と腕の中でおとなしくしている〈カオス〉を見て、和輝は軽く頭を下げて、車庫から出るのだった。

 和輝が紅夜と共に車庫を出れば、ペットハウスで待ちきれなかったのか、桜と優奈と真奈が車庫の外に何時の間にか待機していた。
 そして、車庫を出た和輝と〈カオス〉を抱っこしたままの紅夜を出迎えてくれる。

 「「おかえりなさぁ~い、和兄ぃ(おにいちゃん)
  お帰りなさい、紅夜さん」」

 「おかえりなさい、和輝。紅夜、遅いわよ、桜は寂しかったわ
  あぁ~……本当にひどい姿だわ〈カオス〉こんなに痩せてしまって

  返す返すも憎い狂信者達め……良く生きて帰って来たわね〈カオス〉
  本当に頑張ったわ、良い子良い子」

 桜が紅夜の腕の中の〈カオス〉の背中を優しく撫でる。
 そんなどこか微妙な雰囲気の中、聞き慣れた声が言う。

 「ほら、アタシが言った通りの時間で帰って来たでしょ………」

 「うん、すごぉ~い、竜姫ちゃんの言った通りの時間だったねぇ~……
  和輝くんてば、もしかして本当に、全部裏道を抜けて来たのぉ?

  竜姫ちゃんがねぇ……裏道オンリーで全力で最短で帰って来るなら
  そろそろ到着するって言ったんでぇ~ねぇ~………

  みんなで、車庫までお迎えにきちゃったぁ………」

 乙姫の言葉に、和輝はちょっと苦笑するが、ちょくちょく車の送り迎えをしているセイもあって、空港から帰宅するおおよその時間を推察する竜姫を見て肩を竦める。

 「悪いわね、ウチの親父が迷惑かけて………おじさんが逝っちゃって
  こんどは和輝に頼るなんてほんとぉ~に……困った人よねぇ」

 腰に手を当てて、嘆息する竜姫に、和輝は首を振る。

 「ああ、別にいいさそれぐらい。それより、流石に、あの狂信者達
  やるに事欠いて、外部連絡を絶ってやがった………

  お陰で、ダイエットが必要って言われるような子が、こんな姿だ
  こいつ〈カオス〉って言う名前らしい、長男の蒼夜さんの愛犬

  見ろよ、飼い主恋しいで、こぉ~んなにガリガリんなっちまってさぁ
  ちょー衰弱してるし…マジ、神の采配、巡り合わせって感じかな?

  紅夜の方も、無理したセイで疲労して、足元あやしい状態だし……
  取り敢えずは、桜が住むペットハウスに行こう………」

 そう言って、和輝達はペットハウスへと向かい、ゆっくりと歩き始めた。
 勿論、体力のあやしい〈カオス〉は紅夜に抱っこされたままである。

 しばらく歩いて、ペットハウスが見えた頃、突然物陰から何かが飛び出して来て、和輝に襲い掛かった。
 その次の瞬間、和輝は自分の首筋に牙がザックリと食い込むのを確かに認識した。

 ……っ………グッ………しまった…油断した……ウゲェ~…いってぇ~
 っと…もしもしぃ~………うっ…つー……これはぁ~………

 首筋を齧られた瞬間、和輝は条件反射で、それ以上の傷を負わない為に、齧り付いて来た者の頭を鷲掴んでいた。
 そう、噛まれた上で首など振られたらたまらないので………。
 そして、掴んだ手のひらに感じる、ボコボコとした感触に一瞬でソレが何かを知覚する。











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