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第5章 一難去っても、また一難
286★狂信者達の被害者が座敷牢いるようだ
しおりを挟むふ~ん、とりあえずは、ひと月くらい居られるのか………
だったら、俺が桜の部屋にお泊りする必要はねぇ~な
流石に、ホッとするぜ………ん?
何時もの明るくフレンドリーな態度と違い、どこか深刻な表情で、言葉数が少ない紅夜に違和感を覚えた和輝は、手渡したクッキーを食べもせずに、半分上の空の状態で、手の中でもてあそぶ姿に、眉をひそめる。
「………ん? どぉ~したぁー紅夜?
まだ、何か言いたいコトでもあるのかぁ? あるなら言えよ
黙っていちゃ、俺にはわからないからな
まぁ、喋りたくたなったらでかまわないからさぁ
言いたいコトあったら言えよ」
その和輝の言葉に対して、口を開こうとした紅夜の手の中にあるクッキーを狙って、和輝からもらったクッキーを食べ終えた〈カオス〉が甘ったれて鼻を鳴らす。
「ぴぃぃぃ~すぅ…ぴぃぃぃ~すぅ~………」
よほど口に合ったらしく、紅夜を見上げて小首を愛らしく傾げて欲しいのぉ~とでも言うような仕草で鼻を鳴らした〈カオス〉の姿に、フッと紅夜は微かに笑う。
そう、紅夜は〈カオス〉のおねだりに負けて、手の中でもてあそんでいたクッキーを手渡して、再び和輝に抱き付いた。
そして、ドサクサにまぎれて、今度は派手なディープキスをかました。
うげぇぇぇ~…またかよぉぉぉ~…ったく、いったいなんだってんだよ
いっくら、俳優が出来るくらい綺麗な顔でも、男はイヤだっつーの
まして、ガタイのイイ男に抱き込まれて、ディープキスなんて………
勘弁してくれよ………それも、こんな薄暗い駐車場でよぉー
そう内心で呻きながらも、和輝は紅夜の様子があまりにも普段と違うので、自分に絡むコトに飽きるのをただひたすら待つのだった。
何度も何度も口腔をまさぐられて、流石につらくなって来た和輝は、内心で思いっきり溜め息を吐きながら、紅夜の長い髪を鷲掴みして、無理やり自分から引き剥がした。
「………っ………はぁ~………ったく、いい加減にしろよっ…紅夜っ
ひとがおとなしくしていれば………いったい、なんだって言うんだよ
言葉で言ってくれよ………
俺は、桜じゃねぇ~から、お前にそんなコトされても、お前気持ちを
正確に汲み取ってやれねぇ~………何の為に、言葉があるんだよ」
和輝のがなりに、紅夜は何とも言えない表情で薄っすらと笑う。
「いや、ごめんな和輝
屋敷がさぁ~…あの狂信者達に襲われたって、爺やから連絡来たから
ちょっとな………種馬親父が焼死しちまって、藤夜(とうや)兄貴が
火傷のセイで失明した時のコトを思い出しちまってよ………
あいつら、また、俺達の生活を脅かすかと思ったら………
もう、居ても立ってもいられなくて………くそっ………
桜や俺達にかかわった、お前達兄妹が襲われたって聞いたから、ゴメン
あいつらつて、凄くしつこいから、1度撃退したぐらいじゃ………
また、襲って来るに違い無いし………ようするに、不安なんだ」
紅夜の様子に、和輝は苦笑する。
狂信者集団が、どれだけしつこくて情け容赦のない、無差別襲撃集団かを身をもって知っているだけに、和輝は肩を竦める。
ああ…トラウマってヤツか……桜も、あの時そんなコトを言っていたな
親父さんが狂信者達の襲撃によって、焼死したってーのは聞いたけど
藤夜(とうや)さんて………え~と…ああ、たしか2番目の人だよな?
火傷で失明しちまっているのか? それは知らなかったな
「あぁ………桜もそんなコトを言っていたけど………
藤夜(とうや)さんて、上から2番目の人だよなぁ?
あのウチに居たのか?
つっても、俺、本邸の方には行ったコトねーし
そういう野次馬的な興味って、無かったからなぁー………
その、家庭の事情に突っ込んで聞くのは好きじゃねーけどさ
聞いていいか? 桜とあんまり仲良くないのか?
藤夜(とうや)さんて人と………」
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