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第5章 一難去っても、また一難

285★後悔ってモンは、後でするから後悔だと………気が付かなかった

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 そんな和輝に、プレートに盛られた2つ目のプリンをペロリッと食べ終わり、ボールに入れられた水も綺麗に飲み干した〈カオス〉は、寂しくなって和輝と紅夜にスリスリと摺り付く。

 ちなみに、和輝と紅夜は、車の後部のドアを開けたまま、後部座席をフラットにしたそこに〈カオス〉を乗せた後も、外で喋っていたりする。
 そう、ミーハーで自分勝手な、ファンやら野次馬やらが居るコトを綺麗さっぱりと忘れていた。

 あまりに紅夜が自分にフレンドリーな為に、和輝は綺麗に忘れきっていたのだ。
 紅夜が、結構有名な俳優であるというコトを………。

 そういう(抱きつかれる)コトに慣れて来てしまっていた和輝は、紅夜が有名人であるという事実を綺麗さっぱり忘れていたので、まるっきり考慮していなかった。
 その為に、後日とんでもない目に合うことになるのだ。

 そう、和輝は、後日『スクープ!これが紅夜の新しい恋人だ!』という見出しで、雑誌にデカデカとカラー写真状態で載るハメになったのは言うまでもないコトだった。
 なんせ、そういうモノも付き纏っていたが故に………。
 勿論、桜及び友人連中に指さされて、大笑いされたコトも追記しておく。

 それはさておき、まだお腹の空いている〈カオス〉は、和輝が竜姫の父親を見送りする為に、車においておいた荷物から、こころ魅(ひ)かれる匂い
を感じ、くぅ~んくぅ~んと鼻を鳴らす。

 和輝は、竜姫や竜也と共に、国境無き医師団に入って活躍していた父親達に連れまわされた経験から、外出時、何時でもディーバッグを持って歩いているのだ。
 その中には、常にサバイバルの7つ道具と、数日分の水と携帯食料が入っていたりする。

 そこに、和輝は自分で作ったクッキーを放り込んでいたのだ。
 その匂いを嗅ぎ付けた〈カオス〉は、和輝からもらおうと、甘ったれた仕草でスリスリと懐き、鼻を鳴らすのだった。
 〈カオス〉の様子から、その事実を思い出した和輝は、苦笑いする。

 あははは………流石に、犬だけあってイイ鼻しているわ
 すっかり、クッキーのコト、忘れていたぜ

 「ほら、紅夜……落ち着いたか? 落ち着いたなら、離してくれ…
  〈カオス〉が、クッキーを食べたいってねだっているんでな」

 和輝の言葉に、少し不服は覚えたものの、痩せこけた〈カオス〉が不憫なので、紅夜はしぶしぶ抱きついた腕を離した。
 動きが自由になった和輝は、ディーバッグに手を伸ばし、手元に引き寄せて、チャックを開いて、その中から手作りクッキーを取り出した。

 「なぁ~……それって、人間も食えるヤツだよな
  俺も、腹減ってるんだ」

 自分も、とクッキーを要求する紅夜に、苦笑しながらも手渡す。

 「はいはい………ほら、紅夜……はい〈カオス〉にもな………」

 そう言って、クッキーを手渡した和輝は、もう1度紅夜に聞いてみた。

 「んで、さっきの質問な
  なんで、今日………つーか、こんな時間に、ここに居るんだ?

  俺は、桜から来週って聞いていたんだけど………
  もしかして、なんかあったのか? 酷く疲れているようだし………

  それとも、桜が膨れたからって、慌てて帰国したのか?」

 そんな和輝の質問に、紅夜は力無く首を振る。

 「いや、桜から帰国をねだられた時は、まだ帰れない状態だったんだ」

 目的のクッキーをもらった〈カオス〉は、和輝と紅夜の様子を気にするコトもなく、和輝からもらったクッキーを銜えて、上手に前足の間に挟んで、ショリショリと楽しそうに食べ始める。
 その心情を表わすように、だいぶ寂しくなっている、本来はふさふさふわふわの尻尾を無意識に振っていた。

 和輝は、そんな〈カオス〉の様子に苦笑しながら、言葉を重ねる。

 「んじゃ、そっちでなんかあったんだな
  まぁ…それは、俺には関係ないから、どうでもイイ……

  それで、紅夜は何時まで日本に居られるんだ?
  桜を宥めたら、すぐに向こうに戻るのか? どうなんだ?」

 和輝からの明確な質問に、紅夜は肩を竦めて答える。

 「撮影中に事故があってな………メインの俳優が死んだんだ
  お陰で、そいつの代役が選ばれるまで、撮影は延期になった

  たぶん、ひと月は日本に居られると思う」

 紅夜の言葉に、和輝はホッとした表情をする。











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