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第5章 一難去っても、また一難

283★とりあえず〈カオス〉にプリンとスフレケーキを食べさせよう

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 和輝は、車の後部ドアを開けて、後部座席をフラットにし、積んであった綿毛布を敷いて〈カオス〉が座れるようにする。
 紅夜は和輝が用意したそこに〈カオス〉を下ろす。

 懐かしい匂いのする和輝と、飼い主の兄弟である紅夜の存在に安心した〈カオス〉は、既に体力的に限界だったので、綿毛布の上にペタンッと座り込む。

 それを確認した和輝は、空港内で購入したプリンやスフレケーキなどをつめた箱を手提げ箱から取り出す。
 和輝の行動で、なにが必要か認識した紅夜が、座席を動かして言う。

 「ほら、和輝………〈カオス〉の専用のプレート

  この車は、こいつらを(ボルゾイ)を連れて行けるようにさ
  こういうモンが積んであるんだ

  ほら、プレートの他に、水飲み用のボールと水もあるぜ」

 紅夜に出してもらった〈カオス〉専用のプレートに、プリンとスフレケーキを乗せ、ミルクアイスも添える。
 勿論、小さなビスケットに生クリームなどのトッピングも入っていたので全部飾る。

 和輝がプレートにプリンなどを乗せている間に、紅夜はボールに水を入れる。
 ちなみに、この水は災害対策用のモノで、5年保証の2リットルペットボトルだったりする。

 大きめのトレイに、水を入れたボールとプリンやスフレケーキを乗せたプレートを、和輝が〈カオス〉の目の前に置く。

 自分と紅夜の顔を見比べて、我慢する〈カオス〉に、和輝は許可を出す。

 「ステイッ…〈カオス〉…グット…OK」

 そう言って、和輝は優しく頭を撫でてやり、スッと食べるのに邪魔にならない様に手を引く。
 和輝の暖かい手と許可の言葉に、ずっと物を食べるコトを我慢していたらしい〈カオス〉は、まず水をアフアフと飲みだす。

 とりあえずの喉の渇きが癒された〈カオス〉は、ハフッと人間臭く溜め息を吐いた。
 そして、ちょっと落ち着くと、今度はプレートに盛られたプリンやスフレケーキを食べだした。
 勿論、トッピングに添えられた小さなビスケットもソッと口に入れて、味わうように………。

 和輝は〈カオス〉が落ち着いて食べ始めたのを確認してから、桜にその画像を写メールで送る。
 と、ほどなく、桜が電話がかかって来た。

 「はい、和輝です……」

 『和輝、なんでそんなに痩せこけた〈カオス〉と、一緒にいるの?」

 単刀直入な言葉に、和輝は色々と質問とかする予定を即座に諦めて、用件だけを口にする。

 「違うだろう、桜ぁ~……質問したいのは俺………なんだけどぉ………
  まぁイイ………とにかく〈カオス〉の飼い主に、連絡を取ってくれよ

  そうすれば、どうして〈カオス〉が、こんな見るも無残な姿で   
  ここに居るか、原因がわかるだろうからさ………

  それと、入国管理事務所だっけか? 動物の検疫する場所って?
  正式な名称って、なんて言ったか忘れたけどさ

  もしかしなくても〈カオス〉ってば、何らかの手続き必要だろう
  悪いけど、その辺のコトよろしくな

  とりあえず、あんまりに酷い姿だったんでさぁ………
  なぁ~んもしばらく食べてないと思ったんで、買ったモンだけど

  消化に良いだろうプリンとスフレケーキを食わせているから………
  ああ、水もたっぷり飲ませたから、胃が落ち着くまで移動できない

  だから、そっちに帰り着くのは、今日中に帰れるかな?
  ぐらいに思っていてくれ………

  あと、とりあえず、何かどうなっているか知りたいから
  〈カオス〉の飼い主との連絡を頼む」

 和輝の言葉に、お友達がいっぱい居る状態で、結構機嫌の良い桜は快諾する。









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