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第5章 一難去っても、また一難
281★〈カオス〉の為のプリンその他、お持ち帰りできるそうです
しおりを挟む展示されているディスプレイをもう1度確認し、和輝は女の子オススメとプリン2つを注文した。
女の子はにこにこしながら、頷く。
「はい、ご注文承りましたぁ~…それでは、直ぐにご用意しますね
少々お待ちください………ワンちゃん、ちょっと待っていてね」
と、小さな声で〈カオス〉に向けてそう呟いた犬好きの女の子は、店の中へと消えて行った。
和輝は、ディスプレイを見ていた〈カオス〉のお腹が、ギュギュゥ~グルグルと鳴り、身体を小さく震わせているのを不憫に思い、優しくいたわるように身体を撫でてやる。
勿論、その手には無意識に周囲から集められた濃厚な《生気》が纏わり付いていた。
その濃厚な《生気》を纏って手で撫でられた〈カオス〉は、暖かいモノがジンワリと身体を癒すコトに気付いて、小首を傾げていた。
う~ん、完全に栄養失調だよなぁ~……これってさ…
和輝が〈カオス〉の背骨まで浮き出てしまった、痩せこけた背中を撫でてやっているほんの数分で、お持ち帰り用に箱詰めされたモノを持って女の子が現われる。
「お待たせしましたぁ」
人好きするにこにこした表情で、そういう女の子に、和輝は財布を出しながら聞く。
「幾らかな?」
「はい、ちょうど○○○○円です」
和輝は、言われた金額を支払い、レシートと手提げ袋に入れられた持ち帰り用の箱を受け取り、そのままその場所から足早に立ち去る。
「ありがとうございました………またのご来店おまちしております
良かったねワンちゃん、優しい人に助けてもらって………」
そう呟いたコトを、和輝は気付かなかった………が、その気配りに目をつけた愛犬家は、それを見逃さなかったりする。
なぜなら、和輝が〈カオス〉を抱えたまま、犬の為に買い付けたデザートをテイクアウトしているのを、しっかりと見ていた夫婦や恋人同士などが、わらわらと集まって居た。
そして、どうやら、集まった人達は大型犬から小型犬まで飼っている人達らしかった。
和輝の対応をしてくれた女の子に向かって話しかけている夫婦の口から、グレートデンという言葉が切れ切れに聞こえて来たから………。
他にもウチの柴ちゃんとかいう言葉が聞こえ、和輝はちょっとだけ苦笑いして、急ぎ足で駐車場に向かった。
ちなみに、和輝が注文して、女の子が戻って来るのに、3分と係っていなかったりする。
たぶんに、女の子の安全の為と、作業効率を上げる為に、店内の厨房とマイクで繋がっているのだろうと推察された。
が、急ぐ和輝にはどうでも良いコトだったりする。
その為、検疫の為の預かり専用の檻から逃げ出してしまった〈カオス〉を求めて、空港内を捜している職員とはすれ違うコトすらなかった。
和輝は〈カオス〉を片腕で抱きかかえたまま、もう片手にはテイクアウトしたデザートを持って、その足で平然と駐車場に停めてある車へと向かった。
そんな和輝の耳に、キャーキャーという五月蠅い女達の声が聞こえて来た。
ぅん目………なんだぁ~……後ろの方がすげぇ~……五月蠅いなぁ~
って…ここってば成田の空港じゃん……つーことはだ…有名人か?
もしかして、誰か有名な芸能人でも、海外から帰って来たのか?
まっ………俺には、関係ないけどな
ちょっとイラッとした和輝だが、腕の中の〈カオス〉が心配な為、一切の騒音を無視して駐車場に向かって足早ら歩く。
が、その和輝の背後に、どんどん騒音が近付いて来る。
なんで、あの騒ぎが近付いて来るんだよぉ~………ったく、イラつくぜ
俺は、早く駐車場に行って〈カオス〉に買ったモノ食べさせたいのに
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