上 下
283 / 446
第5章 一難去っても、また一難

282★もしかして、更に追加で一難ですか?

しおりを挟む


 う~ん~?………ああそうか、はた迷惑な有名人が向かっているのは
 もしかして、俺が向かっている駐車場と同じ区域なのかぁ~…迷惑な

 ふむ………仕方が無い、ここは〈カオス〉を1度腕の中から降ろして
 何処かで五月蠅い集団をやり過ごすしかないか?

 和輝はそう考えて、通路の端どころか壁に沿って歩き、他の通路へと曲がる角で〈カオス〉をソッと床に降ろした。
 そこに、後ろから知っている声が、気安く声を掛けて来る。

 「よぉ~和輝、イイところであったぜ、これから、家に帰るんだろう?
  だったら俺も乗せてってくれよ、早く桜に会いたいんだ

  予定が詰まっているから、直ぐには帰れないって言ったらよぉ
  思いっきり拗ねられちまったんでよぉ~………

  それと、お前が連れてる、そのボルゾイなんだけどぉ~……
  なんか〈カオス〉と同じ柄に見えるんだけどぉ~さぁー

  もうちょっと顔を見せてくれよ………っ………
  和輝、なんで、こんなに〈カオス〉が痩せているんだ?

  まぁ…いいや…俺は、こいつと家に帰るから、あんた等はも帰れよ
  付いて来られても困るんだよ」

 と、自分に付き纏うキャーキャー騒いでいる、トウのたったお嬢さん方に向かって言っていた。
 そんな紅夜を見て、和輝は無意識に肩を竦めて思う。

 あははは………後ろの五月蠅い集団の原因って、紅夜だったのか
 ………って、あれ? なんで今、紅夜が成田に居るんだ?

 帰国するのは、来週だったはずだろう、どうして?
 それと、このボルゾイ、やっぱり間違いなく〈カオス〉みたいだな
 見慣れているはずの紅夜が言うだから、とりあえず紅夜に手渡すか?

 紅夜の声がする方に振り向き、和輝は〈カオス〉を抱き上げなおして言う。

 「紅夜、なんでここに居るんだ?
  ………ってぇ~のは、ひとまずおいておいてだな

  このボルゾイって、やっぱり〈カオス〉なのか?
  突然、俺に擦り寄ってきたんだよ

  桜からもらった、スマホの中にある写真で姿を確認した限りじゃ
  柄が一緒だったんで、そうじゃないかと思ったんだけどな

  なんで、こいつが、ここに居たかは知らないんだよな
  とりあえず、受け取って紅夜の目で確認してくれよ

  歩きながらでも、確認は出来るだろう、駐車場へさっさと行こうぜ
  〈カオス〉の為に、空港内にある店でプリンとかを買ってやったから
  食べさせてやろうと思ってな

  どうやったら、こんなに痩せさせられるんだか………」

 和輝から痩せこけたボルゾイを受け取った紅夜は、自分に纏わり付いていたトウのたったお嬢さん方を無視して、早速〈カオス〉であるかを確認する。
 いや、あまりに変わり果てた姿だっただけに………ちょっと確信が持てなかったのだ。

 〈カオス〉の模様や仕草や懐き方から、自分の知っている〈カオス〉であると、断定して頷く。

 「ああ………間違い無い、蒼夜兄ぃの〈カオス〉だ」

 紅夜の言葉に、和輝はホッとする。

 やっぱり、あの〈カオス〉なのか………いや、写真しか見てないけどな
 ダイエット………って言葉が必要なくらいのコロコロしたボルゾイが
 なんで、こんなにガリガリになっちまってんだか………

 紅夜に張り付いていた騒音の元(野次馬やファン)を一切無視して、和輝はスタスタと駐車場に停めてある車に向かう。
 勿論、紅夜もさっさと桜の待つ我が家に帰りたいので、全部無視していた。
 一応、一言は断ったので、それ以上はしらんという感じで、けして振り返ったはしなかった。










しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-

猫まんじゅう
恋愛
 そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。  無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。  筈だったのです······が? ◆◇◆  「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」  拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?  「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」  溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない? ◆◇◆ 安心保障のR15設定。 描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。 ゆるゆる設定のコメディ要素あり。 つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。 ※妊娠に関する内容を含みます。 【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】 こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)

女官になるはずだった妃

夜空 筒
恋愛
女官になる。 そう聞いていたはずなのに。 あれよあれよという間に、着飾られた私は自国の皇帝の妃の一人になっていた。 しかし、皇帝のお迎えもなく 「忙しいから、もう後宮に入っていいよ」 そんなノリの言葉を彼の側近から賜って後宮入りした私。 秘書省監のならびに本の虫である父を持つ、そんな私も無類の読書好き。 朝議が始まる早朝に、私は父が働く文徳楼に通っている。 そこで好きな著者の本を借りては、殿舎に籠る毎日。 皇帝のお渡りもないし、既に皇后に一番近い妃もいる。 縁付くには程遠い私が、ある日を境に平穏だった日常を壊される羽目になる。 誰とも褥を共にしない皇帝と、女官になるつもりで入ってきた本の虫妃の話。 更新はまばらですが、完結させたいとは思っています。 多分…

前回は断頭台で首を落とされましたが、今回はお父様と協力して貴方達を断頭台に招待します。

夢見 歩
ファンタジー
長年、義母と義弟に虐げられた末に無実の罪で断頭台に立たされたステラ。 陛下は父親に「同じ子を持つ親としての最後の温情だ」と断頭台の刃を落とす合図を出すように命令を下した。 「お父様!助けてください! 私は決してネヴィルの名に恥じるような事はしておりません! お父様ッ!!!!!」 ステラが断頭台の上でいくら泣き叫び、手を必死で伸ばしながら助けを求めても父親がステラを見ることは無かった。 ステラは断頭台の窪みに首を押さえつけられ、ステラの父親の上げた手が勢いよく振り下ろされると同時に頭上から鋭い刃によって首がはねられた。 しかし死んだはずのステラが目を開けると十歳まで時間が巻き戻っていて…? 娘と父親による人生のやり直しという名の復讐劇が今ここに始まる。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 全力で執筆中です!お気に入り登録して頂けるとやる気に繋がりますのでぜひよろしくお願いします( * ॑꒳ ॑*)

(完結)王家の血筋の令嬢は路上で孤児のように倒れる

青空一夏
恋愛
父親が亡くなってから実の母と妹に虐げられてきた主人公。冬の雪が舞い落ちる日に、仕事を探してこいと言われて当てもなく歩き回るうちに路上に倒れてしまう。そこから、はじめる意外な展開。 ハッピーエンド。ショートショートなので、あまり入り組んでいない設定です。ご都合主義。 Hotランキング21位(10/28 60,362pt  12:18時点)

身代わりの私は退場します

ピコっぴ
恋愛
本物のお嬢様が帰って来た   身代わりの、偽者の私は退場します ⋯⋯さようなら、婚約者殿

処理中です...