上 下
277 / 446
第5章 一難去っても、また一難

276★おじさんから、お土産をもらいました

しおりを挟む

 「うん、大丈夫、予定したモンは全部入っているから………
  勿論、いざという時の非常食もね

  いっくら便数と流通が増えて、携帯食の種類が豊富になっても
  俺が飛び回る地域では、こういう簡単便利で栄養バランスのイイ 
  非常食は、なかなか手に入らないからね

  味が良くて、栄養バランスのイイ携帯食を確実に購入して
  携帯するならば、こっちから持って行くしかないんだ」

 それを聞きながら、和輝は車を発進させ、今回の予定地を聞く。

 「それで、今回は、どこにいくんですか?」

 和輝の質問に、何時もと同じ、少しあやふやな言動で答える。

 「チベット…というか…ヒマラヤ…っていうか………
  まぁ……その辺りでね………ユキヒョウが居る辺りにね
  何時ものように、写真が取れたら送るね」

 動物好きの和輝は、その言葉に、嬉しそうにお礼を言う。

 「ありがとうございます」

 そんな和輝の態度に、竜姫の父親は、しみじみと言う。

 「はぁ~あ………残念だよなぁ~……竜姫は和輝君と違って
  僕が撮る野生動物の写真になんて、興味が全然無いんだもん

  竜姫は、身体を鍛える意味で通わせた空手にはまっちゃって
  空手バカ一直線だからねぇ………寂しいよ

  ………ってぇ~のは、まあおいておいて、今月の生活費だって
  竜姫にコレを渡してくれないかな………

  はぁ~……本音を言うなら、1人暮らしなんて止めて欲しいよ

  何時、竜姫がストーカーする男達にぶち切れちゃって
  傷害事件を起こすんじゃないかって、心配するのはちょっとね

  なまじ、竜姫は空手の才能あって強いから………」

 黄昏る竜姫の父親に、和輝はクスッと笑って、竜姫が一緒に住むコトになったコトを教える。

 「ああ、それだったら、大丈夫ですよ、ウチに下宿させますから
  竜姫達が入れてくれる家賃は、貴重な現金収入ですから………

  それに、最近、小学校周辺に変質者が出没しているようなので
  俺の方も竜姫が住み込んでくれるのは、助かるんですよ」

 和輝は、話しの内容から、竜姫の父親が、8年前の狂信者集団が再び現われたコトを知らないと推測して、そう言う。

 これはぁ~…おじさん、全然狂信者集団が現われたコト知らないな
 ホント、こういう世間の事情には疎いんだから………
 まっ………ある意味では幸いかな?

 おじさんて、別の意味で凄く心配性だからなぁ………
 あんなモノが現われたコトなんて、知らない方が幸せだろう

 そんな和輝の内心を知らない竜姫の父親は、のほほんとした口調で言う。

 「そぉーなんだぁ……いや…それなら…ホント、助かるよ
  ああ、これで、安心して今回の写真撮影に打ち込めるよぉ~

  あっコレは、和輝くんと優奈ちゃんと真奈ちゃんへのお土産
  あと、これは今日のタクシー代ね
  和輝くんの労働費だから、受け取ってね

  帰国したら、成田から家に帰る時も、頼みたいからさ」

 竜姫の父親の言葉に、和輝は首を傾げて聞く。

 「それで、おじさんの帰国予定日は?」

 和輝の言葉に、苦笑いして、またもや曖昧な返事を返す。

 「う~ん………実は、わからないんだぁよねぇ~………

  だって、ユキヒョウを見つけて、イイ写真が撮れなかったら
  僕は帰れないからさぁ………

  だから、写真が撮れたら連絡するねぇ~………」

 その答えに、和輝はやっぱりと思いながら頷く。

 「はぁ~…わかりました…それと、お土産ありがとうございます
  後で、優奈や真奈にも電話させます…ぅん?…あれ、竜姫には?」









しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

あやかし民宿『うらおもて』 ~怪奇現象おもてなし~

木川のん気
キャラ文芸
第8回キャラ文芸大賞応募中です。 ブックマーク・投票をよろしくお願いします! 【あらすじ】 大学生・みちるの周りでは頻繁に物がなくなる。 心配した彼氏・凛介によって紹介されたのは、凛介のバイト先である『うらおもて』という小さな民宿だった。気は進まないながらも相談に向かうと、店の女主人はみちるにこう言った。 「それは〝あやかし〟の仕業だよ」  怪奇現象を鎮めるためにおもてなしをしてもらったみちるは、その対価として店でアルバイトをすることになる。けれど店に訪れる客はごく稀に……というにはいささか多すぎる頻度で怪奇現象を引き起こすのだった――?

髪を切った俺が芸能界デビューした結果がコチラです。

昼寝部
キャラ文芸
 妹の策略で『読者モデル』の表紙を飾った主人公が、昔諦めた夢を叶えるため、髪を切って芸能界で頑張るお話。

毒小町、宮中にめぐり逢ふ

鈴木しぐれ
キャラ文芸
🌸完結しました🌸生まれつき体に毒を持つ、藤原氏の娘、菫子(すみこ)。毒に詳しいという理由で、宮中に出仕することとなり、帝の命を狙う毒の特定と、その首謀者を突き止めよ、と命じられる。 生まれつき毒が効かない体質の橘(たちばなの)俊元(としもと)と共に解決に挑む。 しかし、その調査の最中にも毒を巡る事件が次々と起こる。それは菫子自身の秘密にも関係していて、ある真実を知ることに……。

双葉病院小児病棟

moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。 病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。 この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。 すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。 メンタル面のケアも大事になってくる。 当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。 親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。 【集中して治療をして早く治す】 それがこの病院のモットーです。 ※この物語はフィクションです。 実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

後宮の裏絵師〜しんねりの美術師〜

逢汲彼方
キャラ文芸
【女絵師×理系官吏が、後宮に隠された謎を解く!】  姫棋(キキ)は、小さな頃から絵師になることを夢みてきた。彼女は絵さえ描けるなら、たとえ後宮だろうと地獄だろうとどこへだって行くし、友人も恋人もいらないと、ずっとそう思って生きてきた。  だが人生とは、まったくもって何が起こるか分からないものである。  夏后国の後宮へ来たことで、姫棋の運命は百八十度変わってしまったのだった。

こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

処理中です...