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第5章 一難去っても、また一難

274★そして、和輝には困った依頼が舞い込む

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 力説する和輝に、竜姫が何時にない情けない声で、背後にべったりと張り付いて訴える。

 「和輝ぃ~………啓太や水鳥と話している時に悪いんだけどぉ~
  ウチの手のかかる、親父を成田に送ってくんなぁ~い?」

 その言葉に、和輝が驚いた顔で振り返る。

 「えっ? おじさん、日本に居たの? 俺、聞いてないけど?」

 はぁ~…もしかしなくても、誰にも連絡してないわけね…まったく
 野生動物が好きなお陰で、アタシよりもよほど話しが合う
 和輝にすら、帰国の連絡してなかったのぉ~……はぁ~ダメ親父め

 和輝の言葉で、竜姫は自分の父親が、誰にも帰国したコトを連絡していないコトを知り、溜め息を吐きながら言う。
 
 「うん……あのウチに居たらしいのよ…そんな顔しないでよぉ~
  アタシも、親父が帰国しているなんて、知らなかったもん

  それを知っていたら、引っ越しの手伝いさせたわよ
  何時も何時も、必要な時に居ないんだからぁ………

  肝心な時にも、なぁ~んにも連絡ひとつくれないくせに
  自分の都合だけで、こっちに連絡するんだから………
  だから、アタシは一緒に住みたくないのよ

  でね、困ったことに、親父ってば…何時も、和也おじさんに
  車で成田まで送ってもらっていたから、タクシー使えないのよ

  それに、親父ってば、電車は苦手だから………
  どうして、電車に乗ると、極端な方向音痴になるのかしらね

  もう、随分昔の話しだけど………
  趣味でハンドメイトのカメラを作っている時のコトなんだけどね

  秋葉にイイ部品があるからって言って、電車に乗ってねぇ………
  熱海まで言っちゃったコトがあるのよねぇ~
  どうやったら、そんなところまで行けるんだか?  
   
  目的の野生動物が居る地域なら、その地域の地図本体が無くても
  バッチリ目的地に着ける特殊能力持っているくせに………

  はぁ~………そんな親父だから、電車でフライトの時間に
  間に合うように、成田になんて行けないと思うのよ

  それで、親父は和輝に頼みたいって言うのよぉ~………」

 それを側で聞いていた竜也が、不思議そうに首を傾げる。

 「あれ? 僕の父には、頼まなかったんだ?」

 竜也の言葉に、竜姫は首を振って言う。

 「竜司おじさんには、なるべく借りを作りたく無いって言うのよ
  おもちゃにされるからって………

  まぁ、和也おじさんが居ない今、押し付ける先が無いから……」

  言葉を濁す竜姫に、竜也も肩を竦める。

 「そうだねぇ~………父の完全な餌食だよねぇ~………
  まして、和也おじさんが居ない鬱屈が溜まっているだろうしねぇ

  和輝、可哀想だから、送ってあげなよ
  父が変な興味を持って、わいたら五月蠅いからさ」

 竜也の言葉に、何時も竜姫の父親から、野生動物の写真(それも、激レアなシーン)をもらっているので、和輝もちょっと溜め息を吐いてから、了解する。

 「はぁ~わかったよ………んで、竜姫、確認するけど
  おじさんのフライト時間は聞いているか?」

 和輝からの質問に、きちんと時間を聞き出していたので、竜姫は躊躇い無く時間を言う。

 「うん、23時の便だから、約4時間あるんじゃないかな?」
 それを聞いて、和輝は搭乗までにかかる(さまざまな手続き)時間をざっと計算する。

 「ん、わかった………それなら、啓太達を送る時間、充分あるな
  送ったら、すぐに迎えに行くって、連絡しておいてくれよ
  んじゃ、啓太、水鳥、せかして悪いけど、行こうぜ」

 竜姫と話し終わったと、そこで話しを切り上げ、振り返ってそう言う和輝に、水鳥はコクッと頷いて、桜に声を掛ける。

 「さんきゅー和輝、助かるよ……流石に、狂信者は怖いからね
  桜ちゃん、お邪魔しました、楽しかったよぉ~………
  今度どっかに、みんなで遊びに行こうねぇ」









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