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弟4章 狂信者集団と対決・前哨戦

256★やっと、白夜様から帰国の言葉をもらえました

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 白夜は、爺やの口ごもりに納得して、答える。

 『そうか、あれほどの《生気》に満ち溢れている和輝を見たら
  〔バンパイア〕など、直ぐに襲って自分のモノにしたがるのは
  たしかなコトだろうなぁ~………

  私も昨夜、桜の変化に必要不可欠な者でなかったなら
  抱いて私のモノにしたぞ

  あれなら、私達のシーズンを呼び込んでくれそうだと思った
  あと、1年の辛抱だと思って我慢したがな

  ゆっくりと、和輝との恋愛を楽しむのも一興だろうからな
  近年にない、極上の楽しみとしてな』

 白夜からの思わぬ言葉に、爺やは嬉々とする。

 それはようございましたね、白夜様
 爺やは、白夜様が再び恋愛をする気になったコトを
 とても嬉しく思いますぞ

 思えば、桃様が変化に入る前にお亡くなりになって以来
 ずっと、お沈みでしたから………

 言葉に出来ない思いを内心で呟きながらも、爺やは白夜に答える。

 「さようでございますか
  では、1年後を楽しみといたしましょう
  それは後で話しとして………

  今、白夜様がいらっしゃる、南米の○○○○でしたか……は
  謎の古代文明の痕跡から、白夜様が、その足跡をたどる
  という企画でございましたよねぇ~………」

 爺やの何時にない微妙なニュアンスを含んだ確認の言葉に、なんともいえない厭な雰囲気を感じたらしい白夜は、言葉の先を促すように聞く。

 『ああ………その通りだが、それがどうかしたか?』

 蓬莱一族の長であり、蓬莱家の当主でもある白夜に、なんとしても、そこから引き返して欲しい爺やは、言葉を飾るコトなく、和輝達がもたらした情報を口にする。

 「はい、実は………神咲君と、その仲間のみなさんが言うには
  そこにある謎の古代文明を作ったモノは、あのおぞましい
  〔バンパイア〕どもだと言うお話しでございました」

 爺やの言葉に、白夜は微妙な間をおいて、答える。

 『ふむ、確かに、可能性としてはあるな
  生け贄を好む神と言う伝承が残っていたからな』

 冷静沈着な白夜の言葉に、内心でヒキヒキとしながら、爺やは懸命に白夜が帰国したくなる言葉を捜す。

 「あと、これも神咲君達の言葉からの情報なのですが………

  そこには〔バンパイア〕どもの穢れた魂と
  自分達は選ばれた者だという、思い込みの激しい生け贄の魂と

  死してなお、まだ〔バンパイア〕に支配されている魂達の巣窟
  だと言っておりました

  そして、その近辺に残っている、それらの子孫の原住民達が
  昔の栄華を取り戻す為に、良き神々の末を探しているそうです

  そして、その良き神々の末裔である、白夜様を捕まえて
  生け贄に捧げようとするから、とにかく出来るだけ早く

  その区域から逃げろと、神咲君達は言っておりましたので
  早急に、お戻りを………」

 爺やの願いが通じたか、白夜は素直に答える。

 『そうか…なるほど、チャックモールとは、また別の古き神とは
  あのおぞましい〔バンパイア〕どもだったのか………

  生け贄を好む神とは聞いていたがな………ふむ、それでは………
  今回もたらされた、この情報はガセだったとでも……《力》で
  一緒に来たスタッフに思い込ませて、日本に帰国するか

  この地に来てから、何となくだが、厭な気配を感じていたのは
  そのセイだったようだな

  随分と退化してしまったように思ったが、まだまだ私の感覚も
  捨てたモノではないようだな

  今回の取材の代わりになりそうな面白い話しを知っていないか
  帰ったら和輝君に聞いてみるとしよう

  それでは、飛行機の手配がつき次第、日本に帰国すると桜に
  伝えておいてくれ………くれぐれも無理をしないようにとな

  それと和輝君には、今回のような謎の古代文明のようなもので
  何か代替になるような話しを教えて欲しいと伝えておいてくれ』

 直ぐに帰国するという、1番欲しい言葉を、当主の白夜からもらった爺やは、嬉しさに涙を滲ませながら、その言葉に答える。

 「はい、桜様にも、神咲君にも、お伝えします」

 『頼んだぞ』

 

 


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