お犬様のお世話係りになったはずなんだけど………

弟４章 狂信者集団と対決・前哨戦

234★まずは《光珠》の話しをしましょう

　「うん…和輝も、今日初めてコレを作ったって言っていたわ……
　　コレはね、桜に和輝が何時も口付けでくれる《光珠》よりも
　　ちょっと時間が掛かって、ちょっと面倒だって言っていたわ

　　和輝にとっては、わりと簡単に作れるコト出来るモノみたい
　　桜には、こうして紅夜の写真を入れてあるロケットの中に入れて
　　身体に触れているだけで、とても心地が良いの

　　爺や、コレは…本当に簡単に作れるモノなのかしら？
　　和輝の負担にはならないのかしら？　桜は心配なの

　　何時も、強請れは強請った分だけ、桜に《光珠》をくれるけど
　　それも和輝の負担にはなりはしないかと………
　　和輝が優しいから、つい甘えてしまうのだけど……心配で…」

　それを聞いた爺やは、ここに来た時の違和感と圧迫感が無かった理由に納得する。

　そうですか、その神咲君の《生気》の結晶のお陰ですか
　何時も感じる、桜お嬢様の歪んだ波動を感じなかったのは…納得です

　しかし、我等が真族の長であり、一族の中にあっても珍しい純血種の
　白夜様でも作れないモノを、普通の人間の神咲君が作り出すとはねぇ
　それも、簡単にですか………いやはや恐ろしいコトです

　これは、やはり………神咲君を手放すべきではありませんね
　ここは何が何でも神咲君をこのまま、この屋敷に留めて置くべきです

　それでは、早速、白夜様にこのコトを報告しなければなりませんね
　神咲君が居れば、桜お嬢様の変異に、なんの苦労もいりませんね

　ああこれで、この屋敷に桜お嬢様を一族に加える為にひらかれた
　《真血譲渡》の儀式以来、集まるコトの無かった一族の方々に
　お会いできますねぇ～………楽しみです

　じゃなくて……今は、この《生気》の結晶のコトですね
　私見解を、桜お嬢様に答えなければなりませんね

　たしか…こういう結晶を作れる者は、無尽蔵に天地の《気》をも
　集めるコトが出来るという伝承がありましたねぇ………
　そういう意味では、何ほども無いでしょう

　「神咲君がも桜お嬢様に《光珠》を与えるのは、彼が普段何気なく
　撒き散らし、無駄にしている《生気》を纏めているだけでしょう

　ですから、なんの負担にもならないと思いますよ
　結晶化もそうだと思われます

　ただ、カタチを成す為に、余分な労力がいるだけでしょうが………
　たぶんに、その工程に慣れれば、それも容易になるかと思います」

　桜は、爺やの見解に、かなりホッとした表情をして言う。

　「そうですの、良かったわ…もしかしたら、和輝にとても大きな
　　負担を掛けているんじゃないかと思ってたのよ」

　安堵の表情で納得する桜を確認し、早く当主であり、真族の長である白夜に、吉報を報告したい爺やは、お茶やお茶菓子に手をつけるコトもなく、腰を浮かせながら言う。

　「お話しは、この件だけでしょうか？」

　本邸に帰りたそうな爺やに、まだ、メインを話していない桜は引き留める。

　「いいえ、爺や………実は、本題はこれからなのよ」

　桜の真剣な表情に、爺やは腰を降ろして、眉を顰ひそめる。

　「本題ですか？　それは神咲君の件なのですか？」

　不可解そうな爺やに、桜はなんとも言えない曖昧な言葉で返す。
　
　「いったい、なんなんですか？」