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弟4章 狂信者集団と対決・前哨戦
232★【狩る者】が出現したらしい
しおりを挟む「ん? 和輝から? 何かあったかしら?」
テーブルに放り出したままのスマホに手を伸ばし、桜は画面をタップする。
『……と…もしもし……桜…和輝だけど』
その間に、その味を堪能していたパウンドケーキを飲み込み、甘味の残る口の中や喉を潤すために、ミルク入りの珈琲をひと口飲んでから、スマホの先にいるだろう和輝に応える。
「和輝?………どうしたの?………こんな時間に?
今、授業中なのではないの?
スマホをかけて、大丈夫なの?
教師に怒られない?」
首を傾げながら聞けば、少しなにかをためらう気配を滲ませた和輝が答える。
『ああ、それは、自習だから平気だ
それより、いいか、俺の言うコトをよく聞けよ』
珍しく単刀直入的な口調で言う和輝に、桜は再び首を傾げる。
………なんでしょう? あちらで、何かあったのかしら?
それとも、今日は、真奈ちゃんや優奈ちゃんをこちらに連れて
来れなくなってしまったという話しなのかしら?
それは、ちょっと………ううん、かなり哀しいのだけど………
そんなコトを考えながら、桜は、それでも和輝の話しの先を聞く為に答えた。
「ええ、なにかしら?」
『とりあえず、俺の話しを聞いてくれ』
「わかった、それで何があったの?」
なんとも言えない、ただならない切迫した雰囲気を感じ取り、桜は素直にスマホに無意識に頷いていた。
そして、そこで和輝から告げられた内容に、桜は沈黙する。
聖剣の騎士団?………って………それは、白夜兄ぃ様が言っていた
あの【狩る者】のコトではないのぉ~………えぇ~…どうしよう?
それが、この屋敷に住む私達を狙っていると言うのか?
それも、私のセイで……紅い瞳の〔バンパイア〕…って、きっと
桜のコトね…でも、何時?……桜の変異した瞳を見られたのは?
記憶には無いが、きっと私の…桜のセイなのでしょうね
聖剣の騎士団?という者達が、桜達を狙っているのね
どうしよう?……これでは、一族のもの達に顔向けできない
桜の存在が、一族の長たる白夜兄ぃ様の足を引っ張ってしまう
そんな桜の内心など気にする余裕の無い和輝は、出来うる限りの情報は伝えておこうと、自分が水鳥達から得た情報と推測を告げる。
そんな和輝に、桜は別のコトを考えながらも、ちょっとためらいがちに答える。
「それは……桜は…寂しいから…来てくれるのは
とても嬉しいけれど……和輝
狙われているこの屋敷に、妹達や女友達を連れて来て
本当に大丈夫なのか?」
寂しいという思いと、自分が、一族の長である白夜に負担をかけてしまうコトを考えて、桜は和輝の言葉にどう答えたらイイかを悩む。
そんな中で、当主不在の屋敷を取り仕切っている爺やと、海外にいる白夜や紅夜にも、その情報を伝えるようにと和輝に言われて、やっとハッとして答える。
「うん、わかったわ…桜は外に出ないわ
爺やには、変な集団が屋敷の周りをうろついているって
連絡しておくわ
桜は、和輝がみんなを連れて、屋敷に帰って来るのを
〈レイ〉と〈サラ〉と一緒に、待っているわ」
自分の言葉に、和輝がクスッと笑っているのを感じて、桜は無意識の安堵の吐息を吐き出す。
『うん、そうしてくれ
ちょっと遅くなるから、おやつを多めに食べて待っててくれ
勿論〈レイ〉と〈サラ〉にも食べさせてやれよ
帰ったら直ぐに、夕飯を作るからよ』
何時もと変わらない和輝の言葉と口調に、桜は【狩る者】に対する不安を振り払って言う。
「わかった…夕食は、和輝達と大人数で食べれるのね
楽しみにしているわ」
『んじゃ………そういうコトで』
和輝が電話の向こうで笑っている気配を感じて、桜も軽く応じる。
「うん…おとなしく待っているわ……」
そう言って、桜はスマホの通話をきったのだった。
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