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第3章 蓬莱家で住み込みのお仕事

220★独り占めは贅沢なコトで、うらやましい………らしい?

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 桜は和輝の言葉に、素直に納得して答える。

 『うん、わかったわ…桜は外に出ないわ
  爺やには、変な集団が屋敷の周りをうろついているって
  連絡しておくわ

  桜は、和輝がみんなを連れて、屋敷に帰って来るのを
  〈レイ〉と〈サラ〉と一緒に、待っているわ』

 癇癪を起こすことなく、おとなな対応をする桜にホッと胸を撫で下ろしながら、和輝は言葉を重ねる。

 「うん、そうしてくれ
  ちょっと遅くなるから、おやつを多めに食べて待っててくれ

  勿論〈レイ〉と〈サラ〉にも食べさせてやれよ
  帰ったら直ぐに、夕飯を作るからよ」

 和輝の言葉に、桜は嬉しそうな声音で応じる。

 『わかった…夕食は、和輝達と大人数で食べれるのね
  楽しみにしているわ』

 「んじゃ………そういうコトで」

 『うん…おとなしく待っているわ……』
 
 それを最後に、桜との通信が切れたのを確認してから、和輝はスマホを胸ポケットにしまう。
 スマホをしまい、顔を上げた和輝に、竜也が疑問顔で尋ねる。

 「いいのかい?僕達全員を連れて行くなんて………」

 竜也が何を言いたいのか、即座に理解した和輝は、ちょっとだけ苦笑して言う。

 「ああ………桜って、すっげぇー寂しがりやなんだよ

  本当なら、婚約者と大人数の兄弟や姉妹の誰かしらが
  あの屋敷にいるはずなのに、みんな仕事で出払ってるんだ

  今、誰も屋敷に居ないんだよ………懐ける相手がさ………
  まっ…だから、俺が住み込みしているんだけどな……
  
  あの屋敷の当主、白夜さんて言うんだけどな
  来週末あたりには、帰ってくるらしいから………

  それまでの間、俺が代わりに側に居るって約束しているんだ
  んで、その住み込み期間は、特別ボーナス付きなんだわ」

 その条件を聞いた乙姫が、しみじみと言う。

 「そっかぁ~…いいなぁ~……和輝君を独り占めなんて………」

 乙姫の言葉に同調するように、竜姫も似たようなコトを言う。

 「はぁ~うらやましいなぁ~……和輝の手料理ぜぇ~んぶ…
  独り占めなんて………なんて、贅沢………」

 乙姫と竜姫をを交互に見て、和輝はなんとも言えない表情で首を傾げる。

 「そうか?」

 わけわかんねぇ~………という表情で、首を傾げる和輝に、竜也まで頷く。

 「ほんとうにね、和輝の手料理なんて、なによりも贅沢だね

  その上で、和輝の関心も、手も、独り占めできるんだから
  これ以上うらやましいコトはないよ」

 「うんうん」

 竜也の言葉に思いっきり同意する輝虎を見て、 首をかしげる。

 「その辺が、全然わけわかんねぇ~よ」 

 しみじみと呟き、ふかぁ~い溜め息を和輝が吐いたのと、教室のドアがガラッと引かれて開くのは、ほぼ同時だった。








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