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第3章 蓬莱家で住み込みのお仕事

208★和輝は不快な記憶を思い出す

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 桜だって、白夜兄ぃ様や紅夜がそばに居なくて
 寂しくてしょうがないのだから………
 兄である和輝が帰宅しないために

 あの可愛い双子が、兄の和輝を思って
 寂しさをつのらせているのは、桜もわかるわ

 それでも、真族への変化に入った為に
 精神的にも、肉体的にも、不安定な状態の上

 膨大な量の《生気》が必要な、今の桜には
 和輝という存在が必要不可欠なのよ

 それに、桜は和輝の友達を見てみたい
 紅夜や白夜兄ぃ様、爺やとかは心配するけど

 私は、和輝が連れて来るだろうお友達や
 真奈ちゃん優奈ちゃんと一緒に
 〈サラ〉と〈レイ〉と遊びたいもの

 「ううん…今日の夜から、真奈ちゃんと優奈ちゃんが
  遊びに来るなら、桜は嬉しいわ

  一緒に、フリスビーをしたり
  アジリティーの真似をして競争するとか
  ゲームしたりとか…くすくす…色々と楽しめるわ

  桜は、和輝のくれた《光珠》の結晶があるから
  心配しなくても大丈夫よ

  だから、2人を連れてきて欲しいわ
  だって、大好きな兄と離れて生活するのは
  可哀想だもの………

  でも、桜は和輝に居て欲しいから、この辺りで
  妥協するから、真奈ちゃんと優奈ちゃんの
  2人には許して欲しいのよ」

 ああ、桜って本当18なんだなぁ~………
 他人を思いやるコトが出来るんだから

 でも、生来の我が侭はなおす気はないってことだな
 まっ…しょうがねぇ~かぁ……

 う~ん…なんかなぁ~……こう…妙に…
 引っかかるモンが…あるんだよなぁ~………
 何がどうって……言葉には言い表せないんだけどなぁ…

 はっ………ああ…そうだ……今朝の視線だ
 あれは…そう…あの陰湿で粘着質的な視線は…
 8年前の…はた迷惑なアレ……思い出すんだよなぁ……

 値踏みでもするような、全身を這い摺り回るような
 あのいやぁ~んな、視線………

 アレが、8年前のはた迷惑なあいつらと
 同じ集団の視線だとすると………マジでヤバイな


 体調の悪い状態の桜の瞳の色は………
 そう……まるで動植物が発現する

 色鮮やかな、警戒色や警告色のように
 深紅に変化するからなぁ………

 それになぁ…瞳の色だけで言うんなら
 即、あいつらのいう【バンパイア】……って
 コトになりかねないもんな~……はぁ~迷惑

 
 いや、マジで…あの狂信者の群れは
 思い込んだら一直線だから…すげぇー迷惑だぜ

 めっきり杓子定規の上、全然融通は利かないし
 常に自分達は正しいと………

 神に選ばれた者だから、自分達がするコトは
 神意《しんい》なのだと思い込んでいる
 妄想の激しい狂信的な集団だからなぁ~……… 

 それに、啓太と水鳥が妙に言葉を濁している
 この屋敷の噂もあるし………

 これは、一大事だからな…学校に帰ったら
 さっそくあいつ等に聞いてみよう

 昨日は、この屋敷にかんする噂を聞く前に
 あいつ等に逃げられちまったからな

 なに、今回はまだ午後の授業もあるから
 逃げられる心配は無いからな

 あいつ等………特に、他人を容易に信用しない
 水鳥と違って、警戒心の薄い啓太なら………

 ちょっとカマかけすりゃ~………ボロッと
 俺の質問に答えるに決まっている

 だいたいの想像は付くけど
 出来れば、そうでないとイイなぁ~はぁ~

 俺なりに、状況を確認した上で
 今、この屋敷が置かれている状態を
 桜に教えた方がイイかどうか、判断しよう

 そうこころに決めた和輝は、真奈や優奈が遊びに来るコトへの嬉しさに、顔を綻ばせている桜に、内心を隠して、表情を緩めて言う。

 「サンキュー…桜…気遣いさせて悪いな
  流石に、またまた妹達も小学生だから心配で…

  っと………そろそろ時間か?
  んじゃぁ俺は、学校に戻るわ

  そんな顔すんなよ
  なるべく早く帰ってくるように努力するからよ」

 軽く手を上げて、部屋から出て行く和輝に、桜はコクッと頷いて言う。

 「うん、待っているから、妹達2人と
  和輝の友達を連れて帰って来るのよ
  桜は楽しみにしているわ」

 「あいよ」

 ちょっと寂しそうにする桜に、和輝はクスッと笑って頷いて部屋を出た。
 部屋を出た和輝は、ペットハウスに横付けした車を車庫へと戻し、大きい車に乗り換えて、学校へと向かった。







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