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第3章 蓬莱家で住み込みのお仕事

201★桜には《光珠》を………

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 もしかして、成功したのかな?

 和輝は、その硬い小さなモノを手の平にペッと吐き出した。
 そこには、小さな深紅に七色の光りをまとう、妖しく輝くビーズ玉みたいなモノがひとつあった。

 手の平の上の小さな輝きを反対の手の指先でつまみあげる。

 ふ~ん、結構やればできるモンだ

 こういうモンがあるってーのは、お師匠さんから聞いていたけど、実際にみたことないし、自分で結晶化できるとは思わなかったな。
 でも、こんな風に、実際にカタチになるんなら、真面目に修行と鍛錬してみっかな?

 前に何度か、ちょっと試してみた時には、こんなモンが出来なかったのって、本当の意味で必要性を感じていなかったからなのかな?
 今回は、桜に必要だって思ったから、結晶化したんだろうか?

 和輝は知らない事実だが、白夜に鮮血を吸われ、その代わりに真血をひとしずく、体内に注入されたお陰で、そういう意味で能力が覚醒し、顕現化したのだ。

 ちなみに真族の失われた技法のひとつで、今生きている真族は、そういう高等技術があったコトは知っているが、できる者は皆無だったりする。
 勿論、一族の長たる、白夜にも出来ないコトだった。
 当然、桜をこよなく愛する紅夜にも出来ない。

 「ん?…成功したのかな?

  《光珠》としての
  純度やエネルギーは
  かなりあやしいけど

  気持ちのお守りくらいには
  なるんじゃねぇ~かな?

  ほら、桜
  ペンダントヘッドにでも
  入れておけよ

  なんかの足しになるかも
  しんねぇ~からな」

 そう言って、和輝は首を傾げる桜に、手の平を差し出す。
 和輝のやるコトを黙って見ていた桜は、不思議そうな顔から、その物体を見て驚愕の表情へと変わる。

 「どこから出したの?

  いいえ、どうやって
  コレを作ったの?

  もしかして、コレは
  和輝が何時も桜に
  口付けでくれる

  《光珠》を結晶化させた
  モノなのか?

  すごく綺麗だわ

  キラキラしながら
  この小さな結晶から

  和輝の《気》を感じるわ」

 嬉しそうにする桜に、和輝は肩を竦める。

 「さぁ~て、俺も
  そろそろ行かねぇ~と
  なんねぇ~からな

  どうする?桜
  やっぱり《気》を
  補給しておくか?」

 和輝に聞かれた桜は、その《光珠》を結晶化させたモノをギュッと握りしめて頷く。

 「うん、勿論欲しいわ

  また、変になるのは
  もうイヤだもの

  怖いのも、寒いのも
  寂しいのもぜぇ~んぶ
  イヤだもの………」

 桜の言葉に苦笑した和輝は、丹田に光りを集めて丹念に練り上げる。

 「はいはい……んじゃ…
  ほら…これでイイか?」

 作り上げた《光珠》を、口付けで桜に渡した和輝は、その結晶させていない《光珠》を桜が味わっている間に、先ほど作ったパウンドケーキのところへと移動する。

 冷めたブルーベリーやストロベリー、マーマーレードが入ったパウンドケーキを切り分けて、お皿に盛り、飾り付けて冷蔵庫へ入れる。
 それを済ませた和輝は残りのパウンドケーキの半分を学校に持って行くバスケットに入れ、残りに洋酒を振りかけてラップをかけて、空気に触れないようにする。

 よし、これで終わり………と
 おっ……こっちも終わったか
 このまま持って行けば、あったかい状態で食べれるな

 「桜ぁ~…オープンに
  入っている

  パウンドケーキも
  食べてイイからな

  一応、昼にいったん
  帰って来るから

  そん時に処理するから
  それ以外では触るなよ

  ただ、食べる為に
  パウンドケーキを出す時

  火傷とかには
  充分に注意しろよ

  お前は弱っているんだから
  小さいモンでも

  怪我は衰弱に繋がるからな

  ああ、生クリームも
  カットフルーツも
  用意してあるからな

  プリンだってあるしな
  好きに食べるとイイぜ」

 そあう言って、ブルーベリーのパウンドケーキが生クリームやカットフルーツで飾られた皿を、桜の前に置いて言う。

 「んじゃ、行って来るな

  ほら、もうひとつ
  《光珠》な………」

 そう言って、軽く口付けして、新しく作った《光珠》をサッと与えて、桜がそれを楽しんでいる間に、和輝はお菓子の入ったバスケットと、お昼ご飯が入ったバスケットのふたつを持って、出て行った。

 勿論、そのお茶菓子用のバスケットには、直前に焼きあがったチョコレートとチーズのパウンドケーキも入っていた。
 ふたつのバスケットを握り、借りた家で学生服に着替え、駐車場へと和輝は駆け込んだ。














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