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063★異世界へと落ちる前を思い出しました 前編・最低な男

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 私だって、我が身が大事です。
 この男の家族になれば、父の実家に居た頃より酷いイジメや虐待を受けるって判っている。

 だから、私は、母さんと家族でいる資格を捨てるコトにした。
 母さんだって、その辺りは気にしていたしね。

 あの双子を見て、母さんは、私と別離(=わ)かれるコトを視野に入れたって言ったもの。
 私が、イジメや虐待に追い込まれて、自殺するよりは良いってね。

 でも、あの男を愛しているって、だから結婚したいって言った。
 そうだよね、私の為に、父親と別れて弟とも別れたんだもの。

 好きになった男と結婚するべきだって私も思うからね。
 だから、男の酷い言葉に、私は淡々と答える。

 『はい、私は母の単なる連れ子ですから
  このままの戸籍に置いておいて欲しいと思います

  役に立たない存在ですから、そちらにご迷惑をかけない様に
  ひっそりと一般人として就職して生きて行きます』

 『それでは、生温い

  私は彼女を愛しているから
  私の財産を残してあげたいと思っている

  が、君には、はっきり言って、何も与える気は無い』

 これなら良いかなって言葉は、まだ男にとって生温いものだったらしい。
 別に、この貴方の財産なんて当てにしていませんよって、言いたいけど、ここは下手に出ておくしかない。

 この男には、権力と財力がある。
 嫌がらせをされたら、1日で私は死ぬ………まず、間違いなく。

 それぐらい、平気でやりかねない人種なのだから………諦めるしかないのよね。
 自分と愛する者以外は、物としか見ない人種だものね。

 だから、ムカついても、この男に迎合する言葉を口にすることにした。
 だって、命ってモノは大事に使えば、一生使える………って心の中で何度も唱えながら………。

 『血が繋がっていない赤の他人ですから
  何も残さないというコトで良いと思います
  それに、貴方が母より先に死ぬとは限りませんしね』

 『では、君の戸籍を彼女から切り離しても良いね
  そうすれば、君は彼女の残した財産を継ぐ権利を失うからね』

 良し、男が少し口角を上げている。
 これで、この男の嫌がらせで死ぬ可能性は消えた………たぶん。

 母さんとの繋がりを戸籍上失うのは想定内だったから、別に何も感じない。
 母さんもそうされるだろうし、別の戸籍になっていた方が何かと安全だと思うって言ったしね。

 まぁ~母さんとしても、あの父を思い出す時、私を殺したいって瞳をする時がたまにあったから、これは良い機会だと思う。
 ここで、別れば良い親子関係を、電話やメール上だけでも繋がっていけるしね。

 『わかりました
  どの書類にサインすれば良いんですか?』

 あっさりと、この男の望み通りにした。
 そう、私は、その場に居た弁護士の差し出す書類全てにサインして、わざわざ作っておいた印鑑証明を十数枚と印鑑を見せた。

 すると、弁護士は、この書類には印鑑証明があると助かると、説明しながら印鑑証明書に色々と書き込みを入れてくれた。
 この書き込みを入れると、それ以外には使えなくなるのが、印鑑証明書なのだと法子さんに聞いた通りの様で、ほっとする。

 全ての書類を確認して弁護士は、あの男に差し出す。
 それをじっくりと見た男は、上機嫌で言う。

 『君は、多少頭が回る様だね

  私達のマンションからは、君の行っている高校は遠いから
  通い易い場所に家族で住めるマンションを与えよう

  それと大学卒業までの資金として
  2千万円を生前贈与として与えよう

  勿論、マンションは新築で6千万円前後のものと思っている』

 驚いたコトに、この男は、私に8千万円も手切れ金を出してくれるという。
 でも、私は、新築マンションの購入を拒否する。

 マンションは、管理費と修繕積立金が必要なものだ。
 これが、結構、キツイし、修繕積立金で足りなかったら、その分を個人負担するしかないものなので、将来に滅茶苦茶不安が残るものだと法子さんは、コブシを握って叫んでいた。

 何かあったんだろうと思ったけど、そこはスルーしておいたコトを思い出した。










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