異世界に引っ越しする予定じゃなかったのに

015★馬鹿ップルをやっちゃいました

　安全な場所を確保するというのは、本気で死活問題でした。
　もっとも、こんなコトを考える余裕が出来たのは、ベッドに入って眠る前のコトでした:けどね。

　お茶に誘われた時は、とにかくあわてていました。
　だって、私はその辺にひと山幾らでいるモブなんですよ。
　モブの中のモブ、キングオブモブってかんじの存在なんです。

　それが、滅茶苦茶イケメンの双子に、ちやほやされるんですよ。
　テーブルに、一口大の色々なサンドイッチ、スコーン、クッキー、ケーキ、タルト、パイ、綺麗にカットされた色とりどりの美味しそうな果物などが色々とに並べられたんです。

　そして、ハンサムな侍従さんが、紅茶を淹れてくれました。
　あれ？普通は侍女さんが淹れるんじゃ………。
　まぁ～良っかと質問しないでスルーしました。

　「マリエ
　　レイモンドが淹れる
　　紅茶は美味しいよ」

　エドがそう言って、紅茶を手渡してくれましたよ。
　私はお礼を言って、受け取ります。
　だって、喉が渇いていたんですもの。

　「ありがとう
　　いただきます」

　一口飲んで思いました………なにこれ、すっごく美味しいって………。
　砂糖もミルクも無しで、すっごく美味しかった。

　私は、ゆっくり味わいながらも、するっと紅茶を飲みきってしまいました。
　紅茶を飲んでほっこりしているとウォルが、サンドイッチを差し出してくれます。
　どこの乙女ゲームですか？

　それも、攻略者を落としたヒロインが、ちやほやされるシーンに近いんですけどぉ～………。
　あの…どうして…私の口元まで、サンドイッチを持って来るんですか？
　それって、あーんしろってコトですか？

　何て脳内であたふたしていると、にっこり笑ってウォルが言います。

　「マリエ、口を開いて…
　　あ～んして」

　マジですか…会ってそんなに経っていませんよね、私達………。
　その上で、なんか裕福そうな伯爵家の御曹司達ですよね、ウォルもエドも………それなのに、なにするんですか？

　でも、部屋に居る人間達が、じっーと見ているのにソンナコト出来るわけ無いでしょうがぁぁぁ～………私は、そんな恥ずかしいコトしませんよ。

　「えっとぉ～………」

　でも、はっきりＮОと言えない日本人です…困りましたよ。
　そんな私に、ウォルが再度言います。
　
　「卵サンドは
　　イヤなのかな？」

　「だったら
　　ハムチーズは
　　どうかな？」

　なんで、エドまで参戦するんですか？
　わけがわかりません…困ってしまいますぅ～………。
　くっ…私は空気の読める日本人です。

　そんなに期待して目で見られたら、口を開くしかないでしょう………。
　羞恥心をねじ伏せて、私は口を開きました。

　「卵サンドも
　　ハムチーズサンドも
　　好きなので………」

　自分で食べたいって言う前に、口に突っ込まれました。
　ウォルが、そっとですけどね、入れてくれましたよ。

　………そんなに、大口開けていたんじゃないのにぃ～（号泣）。
　茫然としていると、エドがにっこり笑って言います。

　「ハムサンドも
　　食べて下さいね」

　副音声で、ウォルの卵サンドを食べたんだから、俺のも食べるよね？
　って、聞こえましたよ（怖い）。
　だって、目が怖かったんですよぉぉぉ～………。

　私は、卵サンドをもぐもぐしてごくっと飲み込みました。
　そして、渋々ですが口を開けました。
　すると、今度は、ハムサンドが………。

　という行為を、無限ループ？しましたよ（泣きたい）。
　それでも、お腹が空いている私にとって、サンドイッチは美味しかった。
　ついでに、パイもケーキもタルト等も、口に入れてもらいました。

　合間に、新しい紅茶も飲ませてもらいました。
　それに対抗する為に、私は、２人の口にサンドイッチやケーキを突っ込みました。

　「私だけ
　　食べさせてもらうのは
　　ちよっと………

　　なので、ウォル…
　　はい、あ～んして
　　くださいね」

　次に、エドにもサンドイッチを………以下同文って感じです。

　だって、どれもこれも美味しかったんですよ。
　どうせなら、自分で取って食べたいじゃないですか。

　なんとかしたいと思って、２人の口に入れてみたんです。
　でも、１人で食べるって出来ませんでしたよ。

　２対１では、対抗しきれませんでした（号泣）。
　結果、テーブルにのっていた食べ物は、全て私達の胃の中に収まりました。

　えぇ～え、それこそ何処の馬鹿ップルってコトをやっちゃいました。
　私ってば、メダカ馬鹿（すくいようの無い馬鹿）ですね。