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第2章 もしかしてRPGの世界?

003★送られた先は、奇妙な既視感(デジャヴ)を感じる場所でした

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 言い訳も何もあったモノではなく、一方的な婚約破棄の宣言と共に、身分剥奪と地下迷宮への封印という断罪を言い渡された瞬間、私は光る魔法陣に包まれた。
 未来の宮廷魔術師長と呼ばれる、美少年のコリウスが展開した転移の魔法陣だとすぐに認識したが、突き飛ばされた私は思うように動けなかった。

 言いたいことはいっぱいあったんですけどねぇ………。
 だいたい、私はイジメなんてしておりませんもの………。
 いや、それよりも、ルドルフ様は、この私が恋愛的な意味で慕っていると本気で思っていたんですね。
 
 私には、未来の皇太子妃としの教育で、私的な時間なんて存在していませんでした。
 魔力なんてほんの微かにしかないのに、魔法の勉強なんてモノもありましたし。
 本来なら、一緒に学ぶ筈の政治経済から帝王学まで………。
 本当に、あの見た目だけの馬鹿皇太子の尻拭いをさせるの前提の教育でしたわね。

 だいたい、この婚約自体が、皇帝陛下と私の父が決めたことで、私達の意志には関係ないモノですし………。
 大事なことなので、何度でも言いますが、私にルドルフ皇太子への恋情はありません。
 皇家への建前もあるので、ルドルフ様を慕っている風には装っておりましたけどね。

 今考えると、あの3点セットの呪力?でも、ルドルフ様の駄目駄目ぶりにげんなりしていた私に、恋愛感情を錯覚させる効力は無かったようですわね。
 こうして考えると、かなり強力な呪術が仕込まれていたようでけど、嫌悪感の前にはそんな錯覚など無意味ということですわね。

 意識が明確に成ったので、ルドルフ様には言いたいこといっぱいあったんですけどねぇ………。
 本当に、はぁ~……とても残念ですわね………。
 もちろん、あのマリエ嬢の取り巻きとかにだって………。

 その他モロモロ、今まで鬱憤を晴らす機会を与えられることも無く、私はどこぞの地下迷宮へと送られる、転移の魔法が発動されるのを肌身で感じていたが………。
 一向に、その終着点へと到着しない。
 全身に纏わり付く魔法力と、くすんだ私の灰色の髪よりもなお澱んだような空間に、眩暈と吐き気を覚える。

 本当に、いやに長いですわね。
 幾ら地下迷宮への転移でも、この時間間隔は長すぎではありませんか?
 未来の宮廷魔術師長様は、私を何処の地下迷宮へと送って下さったのかしら………。
 でも、ある意味、これで死ぬとしても、あの絶望的な脳内お花畑のルドルフ皇太子とのおぞましい婚姻なんてモノは消滅したのですから良しとしましょう。

 あんなモノに抱かれて、後継者を生まなければならないなんておぞましい未来は消えたんですから………。
 今までは、嫌悪感すらあるルドルフ皇太子と、カイドール辺境伯爵家の長女として誕生した運命(さだめ)と思い、それが義務であると諦められていたのが、嘘のようなこの拒絶感。

 ふふふふ………あの3点セットに込められた呪力が強力なモノだったと実感するわね。
 外してくれてありがとうだわ、本当に………。
 とはいえ………ぅん?
 ああ、どうやら到着したようですわね。

 視界を埋め尽くしていた澱んだ灰色の空間が何時の間にか消えて、薄暗い場所へと出ていた。
 突き飛ばされた状態だったので、床についていた両膝と両手にしっかりとした硬い感触を感じて、私はホッとしていた。
 流石に、確たるモノの無い転移中の亜空間から開放されたコトで、冷たい床にぺったりと座り込んでしまう。

 いったい、どの地下迷宮に送られたのかしら?
 あの言い方ですと、冒険者が入り込むようなモノではなさそうですわね。
 そうなると、地下迷宮という単語で思い浮かぶのは………。
 我がカイドール辺境伯爵家が防衛する、北側の前人未踏の地下迷宮ですわね。

 そう言えば、あの未来の魔術師長と噂される美少年のコリウス君は、魔術師の塔に出入りしていたわね。
 魔術師の塔には、この南部ランバンセイ大陸の中央を支配する、ハイオシス帝国の成り立ちから、皇家の始祖が地下迷宮に封印したという邪悪なモノや、特殊な魔術書などが大量に存在すると聞いたことがあったわね。

 「不味いわ…もし、本当に…その中のどれかの地下迷宮に送られたなら………」

 そう無意識に呟きながら、私はヨロヨロと立ち上がる。
 私は自分がいる場所を確認する為に、ゆっくりと見回した。

 何だろう? 妙な既視感(デジャヴ)を感じる。
 あっ…また…変な感覚と言葉が浮かぶ………。
 いや、今はそれどころじゃないわね。






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