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第14章 冒険者の始まりの街フォレンへ
207★一般常識を持つ者がひとりもいないんですけどぉ………
しおりを挟むシアは私の言葉に嬉しそうな表情になる。
勿論、シアが大事なジオンやフリードも、満足そうな表情で見ていた。
そんな中、シアはにこにこしながら言う。
「それじゃーライム
取り敢えず、神獣達をだしてよ
それで、全員に少しづつ
魔晶石を分解して付与したら?」
(はぁ~…シアはどうしても
解体された神子から誕生した
神獣達を見たいのね)
私はそんな風にとてもウキウキしているシアに、肩を竦めて首を振る。
まずは、するべきことを終わらせてからと言う意味で、シアに言う。
「先ずは、こっちの赤ちゃんでしょう
女神の神子の代替として創られた
新しい神子なんだからさ
とにかく、この子の名前を考えて
それが甦生のキーワードになるって
ジオンが言っていたんだから」
私の言葉に、シアは少し惜しそうな表情をした後、寝籠に眠る?赤ちゃんを見詰めて何事かを考えている。
(まぁ…コウちゃんとガッちゃんが
可愛い姿だったから………
残りの子はどんな姿かを
見たかったんでしょうね)
そんなコトを私が考えている中、シアの隣りから少し身を乗り出して赤ちゃんを覗いていたフリードが、素朴な疑問と言う感じて言う。
「ところで、まま
この子って男の子?女の子?」
フリードの言葉に、シアも私もハッとする。
(そう言えば、基本的なスペック
全然確認して無かったわ
つーか、視ようって思わなかった
それはきっと、そういうモノが
この赤ちゃんからでているかしら?
認識拒否?……というか、不干渉?
存在拒絶ではないわよねぇ………
単に興味を引かないようなオーラで
包まれているって感じかな?)
私とシアが純粋に驚いているのに、ジオンが平然としているのを、ちょっと疑問には思ったが、単に興味が無いのだろう………と、この時は思った。
が、それはこの後直ぐに、違うと言うコトを私は知るのだった。
そんな中でも、やはりある意味で天然なシアが、のほほんと言う。
「そういえば、どっちかしら?」
そう呟いたシアが、赤ちゃんを包んでいる上質なおくるみ?をペロンッと開いて確認し、なんとも言えない表情になる。
私も、シアの手元を覗き込み、あるはずのモノが無いコトにびっくりする。
(えっ? 性器自体が無い?
どぉーゆーこと?………これじゃ
性別無い以前じゃない)
と、内心でパニックを起こしている間に、シアが大胆に赤ちゃんの足を軽く持ってひらけば………。
(えっとぉ~…肛門も無いの?
排泄器官が無いってどういうこと?)
「えっとぉ……どっちでもない?
というか、排泄器官も無いんだけど………」
たった今確認した事実に、シアが困ったような声で言えば、ジオンがチラリと赤ちゃんを視て、納得という表情をした後に言う。
「神子だからな
モノを食べるという行為も
排泄するという行為も必要ない
ただ、それだと不自然だからな
食べるコトは出来るし
摂りいれた食物は
極限まで分解するから
老廃物というモノは出ないだろう
性別は、本人が欲すれば現れる
ってところじゃないかな?
あいつらが創ったんなら
そのぐらいの小細工はするだろう
だから、育てなくても
時期(神子が必要)になれば
勝手に動き出すって言ったんだ
目覚めて活動し始めれば
自分の役目に必要な
世界の情報を貪欲に
収集し始めるだろう
勿論、普通の赤子のように
育てるコトも出来るし
事実として、人間を守るには
その方が良いのは確かだ
人間としての常識だとか
感情だとか学ばなければ
この世界規模のコトでしか
物事を考えられなくなるだろう
そして【理(ことわり)】を司る
世界の【調停者】として
乱れを正す為に、力を振るうだろう」
(ちょっとぉぉぉぉ~………ジオン
そういう重要なコトを、今言うぅぅ~
というか、そんな危険極まりない
時限爆弾のような子は
きちんと世間様の常識を学ばせて
普通に育てないとダメでしょソレ)
あははは………今の私のこころの言葉を聞いたら、まず間違いなく【ホワイトファング】のお兄さん達に突っ込み入れられるわね。
かくいう、私も常識無いから、でも、ジオンにもシアにも無いわね。
当然、繭の中に居たフリードも無いでしょうし………誰も、一般常識を持っている者はいないわね。
困ったわぁ~………どうしたら良いのかしら?
私は王宮で軟禁状態だったし、半分以上意識も封じられていたから………。
コウちゃんは、私の魂と転生してたし、ガッちゃんは封印されていたし………。
シアの話し聞いても、軟禁どころか監禁に近い状態で虐待受けていただけでしょぉ………誰も、一般常識を知る者がいないわ、いや、本気でどうしよう?
私が、本気で困っている中、虐待の中で育ったわりに、純粋で天然なシアがののほほんとした口調で言う。
「そっか、性別は確定してないのね
それじゃぁ~この子に付けるなら
男女兼用の名前が良いね
なんて言う名前が良いかしら?
でも良かった、普通に育てられるのね」
(シア、あんたのそういうところ凄いわ
問題山積みなのに………はぁ~………
私も、シアみたいに楽天的に
考えられたら………じゃなくて………
この世界の命運を握っている子よ
どうして、そんな風に気にしないで
いられるのかしらね)
ちょっとネガティブ気分の私の目の前では、シアが愛しそうな表情で、赤ちゃんの名付けをしていた。
「それじゃ、今日からあなたは
サファイアよ……クスクス」
私は、シアの名付けにクスッと笑ってしまう。
だって、それはある意味で重い名前だから………。
名作を数々生みだした、あの作家の作品のひとつの主人公と一緒ね。
性別を偽らなければ、生きられない………国是を変えなければならない。
権力と欲の塊と化した輩達と雌雄を決さなければならない立ち位置の運命。
ある意味で、この赤ちゃんに相応しいかもね。
まぁ…シアが深い意味なんて考えて無いでしょうけどね。
だから、茶化してあげよう………同郷で同時期に、あの世界で生きた者として………。
「シア、それってぇぇ~………
あの巨匠のアレでしょう
帽子にでっかいリボンつけた」
私がそう言えば、シアが楽しそうに含み笑って言う。
「ちょうど良いでしょう?
男の子でも女の子でも良い名前で
役目を正しく勤められる
それでいて、人造で創られた
この子が、人と世界に優しい子に
なれるようによ
ねっサファイア、目を覚まして
お母様にその瞳を見せてくれない?」
ある意味で核心を突いた言葉に、私はちょっとだけ肩を竦める。
そんな中、シアが優しい口調で名前を呼ぶ。
『サファイア』と呼ばれた瞬間、ピッという微かな音が響き、次の瞬間、何かがパシッと爆ぜる音を私は聞いた。
たぶん、ソレは封印にヒビが入り、弾けた音だったのだろう。
その直後に、シアにサファイアと名付けられた赤ちゃんは、少しモゾモゾした後、その双眸をゆっくりと開いた。
開いた瞬間は、見事な深紅だったが、瞬いた次の瞬間には紫紺色へと変色していた。
ただ、やや紅色が残った状態で………。
(あら…やだ…本当にサファイア色ね
その上で銀色が散りばめられて……
うぅ~ん幻想的な瞳ねぇ………
ある程度になったら、フード付きの
衣装をきせないと…………
あっとシアを着替えさせて無かったわ
それに、ジオンとフリードにも
魔王シリーズを身につけさせなきゃ
んでもって、遠くから見守るのよ
何時までも一緒には無理だから
でも、コウちゃんとフリードは
たぶん意識すれば繋がるでしょうし
出来れば、もったいないとは思うけど
覚醒(めざ)めを待つ神獣達の内の誰か
この世界の安全の為に
シアについくれないかなぁ………
一般常識の無いシアとジオン
そして、フリードとサファイアを
野放しなんて危なすぎるわよ)
私の危機感を視陣も感知するコトなく、シアは双眸を開いたサファイアにメロメロという感じて言う。
「始めまして、あなたのママ、シアよ
私達と一緒に生きましょうね
可愛いサファイア」
サファイアは、シアの言葉に反応して、答えるように、赤ちゃん独特のぷにぷにした紅葉の両手を伸ばして、その頬にソッと触れる。
(ああして、自分の庇護者となった者を
認識しているのかしら?
ああ、それとシアから溢れている
魔力を吸収しているのね
魔力には毒素なんて無いから
いくら吸収しても安全ね)
「うふふふ………サファイアのお手手は
ぷにぷにしてますねぇ~………」
シアは、自分の頬を触るサファイアの手が、自分から溢れている魔力を吸収していると知ったら何ていうかしらねぇ………。
まぁ、シアだからね、きっともっともっと魔力をお食べぇ~っとか言いそうよね。
取り敢えず、代替の神子は覚醒しました、ちゃんちゃん、ね。
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