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第11章 訓練開始

163★入浴は夫(または、婚約者)と、一緒に入るもの? 後編

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 アルファードの答えに、エリカは困惑を浮かべながら言う。

 「だって、エリカの髪なんか
 1人で洗うの大変になのに?」

 そんなエリカに、アルファードは愛しそうに抱き込みながら甘く囁くように、なんでそうなったかを口にする。

 「だから、夫となる俺が洗うんだよ

 これは、寵愛の聖女様の頃の話しなんだが
 元側妃の妹が侍女として勤めていて
 寵愛の聖女様の入浴中に
 不敬なコトをして以来

 皇帝は自分以外の者が、寵愛の聖女様の
 入浴を手伝うことを禁止したんだ」

 その説明の中に含まれる、はぶかれた内容が気になり、エリカはアルファードに尋ねる。

 〔聞いたら答えてくれるかな?
 いったい何をしたら夫(または、婚約者)と
 入浴するというコトになるの?〕

 「側妃の妹が、何かしたのね」

 ニュアンスから聞きたいというモノを感じ取ったアルファードは、隠す事柄でもないだろうと、あっさりと答える。

 「確か、魔法で熱湯を出して
 寵愛の聖女様にかけたんだ

 ただ、すべての精霊に愛されていたから
 熱湯は寵愛の聖女様の肌に触れた瞬間に
 手頃な温度のお湯になったので
 何事も無かったそうだけど……

 寵愛の聖女様をこよなく愛していた皇帝は
 自分の最愛の皇妃に、害をなそうとした
 侍女を直ぐに、後宮から追放した……」

 そこで言葉を途切れさせたアルファードに、エリカは結末まできちんと聞く。

 「それで、後宮から追放された侍女は
 その後どうなったの?」

 エリカの質問に、アルファードは優しいエリカには聞かせたくないなぁーという表情になりながらも、淡々と答える。

 「市民階級の娼館で生涯を終えた
 その姉である元側妃は、貴族階級の娼館で
 生涯を終えたんだ

 寵愛の聖女様を愛していた皇帝は
 元側妃を徹底的に調べさせた
 その結果、すべての元側妃達とその父親
 または祖父……これは当主という意味だが
 関わっていたんだ

 それまでの聖女は、皇帝と婚姻して
 皇妃となっても、皇帝の愛情を
 一般的な皇妃と同程度ぐらいしか
 与えられていなかったんだ

 側妃との権力争いも普通だったから
 貴族にとっては脅威にならなかったんだ

 だが、その時の皇帝は、後世に寵愛の聖女と
 呼ばれるほど、聖女をこよなくなく愛した

 姫をなした側妃をすべて失っても
 心が痛まないほどに……」

 そう語るアルファードに、エリカはそこであるコトに気付き、気になったので問い掛けてみた。

 「そう言えば、寵愛の聖女様の前に
 《召還》された聖女って

 のちに、魔女とか鬼女って言われる
 存在だったんだよね」

 その人はどうしたの?というニュアンスで聞くエリカに、アルファードは肩を竦めて答える。

 「その元聖女を、ドラゴニア帝国に
 仇(あだ)なす存在にしないように
 処理する為に、寵愛の聖女様は
 《召還》されたんだ」

 「それって《召還》っていう誘拐をしたのに
 いらないから処分するってしたくなかった
 ってコトだよね」

 「ああ、本来の世界にいたなら、周りの害に
 なる程のコトをしたかはわからないと
 寵愛の聖女様自身が言っていたそうだ

 それでも、異世界だから、自分には強い
 《魔力》があり《聖女》としてみなに
 崇められる存在なんだから……

 何をしても良いと思う程、魔女というか
 鬼女というかは、奢りや傲慢、強欲などに
 目覚めてしまったんだと
 寵愛の聖女様は言ったんだ

 ここに《召還》されなければ、彼女は
 歪まないですんだのにと
 そこで、寵愛の聖女提案に従って
 皇帝は頑張ったんだ
 その身に穢れを受けるとわかっていて」

 一応は、その内容を先に一度聞いているだけに、エリカは重い溜め息を吐くしか無かった。

 「確か、その結果を知って、側妃達は
 勝手に姫を後宮に置いて出て行ったんだよね
 なのに、どうして、寵愛の聖女様に
 わざわざ手を出したのかな?」

 不思議そうにそう言うエリカに、アルファードはちょっと遠い瞳で答える。

 「側妃の父や祖父は、皇帝が聖女に飽きて
 直ぐに娘や孫娘を、後宮に呼び戻すと
 思っていたんじゃないかな?」

 そのセリフを聞いて、エリカは勝手に皇帝の後宮から逃げて、娘を置き去りにした側妃やその父や祖父に対して、内心でなんて身勝手なと怒る。
 そしてエリカは、その怒りのままに言う。

 「ねぇーアル、貴族って馬鹿なの?
 なんで、ドラゴニア帝国の皇帝陛下が
 この国1番の権力者が、自分を捨てた
 というか、裏切った女を呼び戻すの?

 どっちかっていうと、側妃を処分する方が
 正しいと思うけど?
 それに、聖女様に飽きたなら、新しい側妃を
 娶れば良いだけでしょ?

 なんか、当時の皇帝陛下が可哀想だわ
 この国の為に穢れを受けてまで
 誠実に、元聖女を天に還す為に
 イヤイヤながら頑張ったのに……

 それをわかっていながら、喉元過ぎればで
 陛下を批判するなんて……
 側妃の実家が潰されるのは
 当たり前だと思うわ

 自国の皇帝陛下を平気で蔑ろにするわ
 裏切るわなんて貴族や臣下なんて
 いらないもの」




 ◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆

 思ったより長くなったので、ここで1度切ります。
 前編後編で、おまけ編というところでしょうか?
 ちょっと調整しないといけないので、日付が変わったあたりに、おまけ編が更新できると思います。






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