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第11章 訓練開始
162★入浴は夫(または、婚約者)と一緒に入るもの? 前編
しおりを挟む夜明け前で空が紫に染まっている頃、エリカの意識が浮上してくる。
ほんの数日で慣れてしまったアルファードのぬくもりを感じて、エリカはその腕と胸にすりすりしてしまう。
そんなエリカの無意識の行動にアルファードは、蕩けるような微笑を浮かべより深く腕に抱き込むのだった。
魔物と日々戦うという毎日を送っているアルファードは、エリカの微かな変化にも目覚めてしまうのだ。
が、それは、アルファードにとって心地よいものでしかない。
腕の中に愛しいエリカがいるだけで、成長しない少年の姿のままで、貴族の姫達や貴婦人達にお子様扱いされていたという、過去がどうでも良いと思えるようになるのだ。
〔俺が成長しなかったのは
エリカに出会うためだったんだなぁ
ギデオンやレギオン、オスカーや
マクルーファに対する反応から
エリカは歳上過ぎる相手を恋愛対象として
見ない性格だったから
年頃の近い姿をしていた俺だけが
エリカの恋愛対象になったから
それに、俺以外の騎士達は、身体が
大きいから、その表情を見るには
わざわざ顔を上向ける必要がある
それを面倒臭いと思っているエリカは
背の高い人間達の中で生活していない
ということがかる
他の聖女候補の少女達も、騎士達を
『美形の集団と笑っていたけど
背が高すぎてアレだよね…首が疲れる
女の人をほとんど見ていないけど
きっと大柄な民族なんだよね
そう、私達と違って……』
という会話をしていたから、大柄な騎士達は
よほどのことが無い限り恋愛対象にならない
だから、同世代の小柄な少年がいる
魔法学園に通いたいんだろうなぁ
その辺りは弟達に有利になるように
小細工してやる必要があるな
せっかくこんなに皇子が多いんだ
貴族に聖女を与える必要なんて無い
ただ、オスカーやマクルーファだったら
許してもいいかな?〕
ぼんやりと眠そうにしているエリカを腕に、アルファードは取り留めの無いことを考えていた。
もちろん、その間に、エリカの髪や頬や額や唇に、アルファードは何度も軽く口付けていたりする。
そのことに、既に慣れている(エリカは、子供の頃から、現在に至るまで父や兄に抱き込まれてキスされていたから)エリカは、恥ずかしがることも無く受け入れているのだった。
それでも、エリカの意識は覚醒していく。
そして、昨夜の入浴を思い出して、エリカは真っ赤になってしまう。
〔うっわぁー私ってば、とうとうアルと
一緒にお風呂に入っちゃったんだ
このぽにょっ腹や、むちむち太ももや
ぱっつんお尻とかを、ぜぇーんぶ
アルに見せちゃったのぉぉぉ……
乙女として、どうよ私〕
顔を紅くしてジタバタするエリカに、アルファードは首を傾げながら、その額に熱を確認する為にこつんと額を当てる。
「エリカ、どうした?
顔が紅い熱でも出たのか?」
アルファードの行動に、エリカの心臓の鼓動は更に跳ね上がる。
〔うわぁーんアルってば
美少年の自覚無さ過ぎだよぉ
心配そうな表情で、額をくっつけるなんて
アルってば、なんでこんなに綺麗なの〕
「熱なんて無いよ
ただアルの顔が近くて恥ずかしいだけ」
恥ずかしさのあまりエリカは、アルファードの胸に顔を埋めて隠すという行動に出てしまう。
その愛らしい行動に、アルファードはにこにこしてしまう。
「エリカは可愛いなぁ……
俺達は連環の腕輪を交わしている
婚約者同士なんだから
そんなに恥ずかしがらなくても良いのに」
「でも、一緒に、お風呂に入るのは
ちょっと、結婚前の人間が
してイイものじゃ無いと思うんだけど?」
「どうして、エリカの面倒は
婚約者で将来の夫がみるのは
当然の義務であり権利でもあるのに?
何故、一緒に入ってはいけないんだ?」
アルファードが不思議そうに言う内容に、エリカはキョトンとしてしまう。
「えっ、エリカの面倒をみるのって
義務と権利なの?」
びっくりしているエリカに、アルファードは生真面目な表情で言う。
「エリカの裸を、何故、俺以外の人間に
見せなきゃないんだ?
聖女の皇太子妃の入浴は、夫である皇太子以外が
手伝うことは、ありえないコトなのに?」
さも当然のように言うアルファードに、エリカは小首を傾げる。
〔もしかして、ラノベの中の王族や貴族の
生活と、アル達の常識って違うとか?
一応、ラノベ方式を聞いてみるか〕
「えっと…その…同性の侍女とか
女官とかが手伝ったりしないの?」
エリカの問い掛けに、アルファードはそうなったいきさつを思いながら答える。
「聖女である皇太子妃や皇妃は、夫以外と
入浴したりしないんだ」
◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆
ちょっと長くなったので、この辺りで1度きります。
今日中に後編を書いて更新したいと思います。
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