上 下
155 / 450
第11章 訓練開始

149★剣に魔法を纏わせる練習をしましょう1

しおりを挟む


 そんなちょっと、いや、かなりのコンプレックス持ちのエリカに、ベタ惚れしたアルファードは、魔法騎士団でも美形隊長として争っている、ミカエルとラファエルに視線すら向けないことに、ジーンとしていた。

 そう、アルファードは何時まで経っても、普通に成長しない美少年のままの自分にコンプレックスを持っていたのだ。
 それは、きちんと成長して大人になっている者達すべてに、嫉妬するという暗いものだった。

 だが、エリカと出会い、自分が成長していなかった為に、その心に同世代という気安さでするりと入り込めたことで、そのコンプレックスはほとんど昇華されていた。

 エリカは気が付いていないが、既にここ数年、完全に成長が止まっていたアルファードの身長が、エリカの作る食事を食べて、2cmも伸びたのだ。
 このままエリカの作る愛情と《魔力》を含んだ食事をとれば、きちんと成長できるという希望が、その事実を知ったアルファードに芽生えたのだ。

 だから、アルファードは、貴族の姫達を平気で食べる剛毅な美形ミカエルとラファエルに対するコンプレックスをポイッと捨てることが出来た。
 そのため、何時もだったらちょっと嫌そうな表情を浮かべて2人を見るのだが、今日のアルファードは静かに微笑みすら浮かべて2人を見詰めることが出来たのだった。

 〔さてと、この2人の隊は、中央騎士団の
 街道定期巡回に参加していたよな

 提出された報告書によると
 ほとんど魔物討伐はしていないから
 気力体力ともに充実しているはず

 なら、多少の無茶をしても良いだろう
 見た感じも疲労感は無い
 良し、俺が魔物役でガンガン襲ってやろう〕

 機嫌の良くなったアルファードは、極上の笑顔でミカエルとラファエルの隊の騎士達を地獄に落とす宣言をする。

 「報告書によるとお前達は、この1週間
 ほとんど魔物討伐をしていなかったようだな

 ゆえに、疲労は無いと判断し、戦いの勘が
 鈍らないように
 俺とギデオンとレギオンなどが、魔物として
 お前達を襲うから、存分に抵抗しろ」

 ご機嫌なアルファードに、エリカが突っ込み?を入れる。

 「アル、私に剣に魔法をまとう方法を
 教えるついでに、魔法剣同士の戦いを
 見せてくれるって言ってたけど……
 それは、何時なの?」

 厨二病を持つオタクなエリカは、剣に魔法をまとわせる方法を早く習得したくて堪らなかったのだ。
 だから、平気でアルファードの予定をぶち壊す。

 が、しかし、予定を壊されたこことよりも、愛しいエリカに、自分を優先して欲しいと我が儘を言われて、アルファードは満開のバラが綻ぶような艶やかな笑顔を浮かべる。

 「ごめん、エリカとの約束を、後回しに
 してしまうところだったな

 ミカエル、ラファエル、剣に魔法をまとい
 戦う訓練をしろ。俺はエリカに教えるから」

 「「はい」」

 そのセリフを聞いた瞬間、アルファードに襲われるという恐怖が、無くなったので、ほっとした顔で2人は返事をする。
 勿論、訓練を受ける立場になっていた騎士達も同じようにほっとしていた。
 それを見たアルファードは、ギデオン達副官および側近に命令する。

 「ギデオン、レギオン、お前達は
 騎士達の訓練を見ていろ。始めろ」

 アルファードの命令に従って、騎士達は、一斉に騎士の礼をとり返事をする。

 「「「「「「「「「「はい」」」」」」」」」」

 こうして、騎士達は予定通りの訓練を始めたのだった。
 訓練を始めた騎士達は、アルファードの直接訓練を受けずにすんだことをエリカに感謝していた。
 もちろん、アルファードが魔物役=魔王?となることを恐れていた騎士達からは、絶大な支持を受けるのだった。

 魔法騎士団の騎士達は、美味しいものを作ってくれるし、回復魔法の使い手で、聖女候補の姫君としてエリカを慕っていた。
 が、今回の魔王?魔物?怪物?アルファードに唯一対抗できる、否、好き勝手できる存在として女神のごとく崇められるエリカだった。

 そんなエリカは、アルファードと一緒に、騎士達が、得意な魔法を剣にまとわせる様子を見ていた。

 剣を抜き、その剣にツイッーと指を這わせる者。
 剣を抜き、その刃に口付ける者。
 剣を抜きながら、優雅に円を描く者。
 剣を抜き、唇に指を付ける者。
 剣を抜き、呪文?を唱える者。

 色々な方法で剣に魔法を付与していく騎士達の姿に、エリカは厨二病を全開にして見ていた。
 それは、自分がどんな決めポーズをするかを考えているためだったりする。

 〔ふぇー魔法をまとわせるって
 人それぞれなんだ

 アルやオスカーさんやマクルーファさん達は
 どんな方法で、剣に魔法をまとわせるのかな?
 後で見てみたいな

 きっと綺麗なポーズなんだろうなぁ~
 うふふ……わくわくしちゃう
 魔法をまとった剣も綺麗だわぁ〕

 エリカの視線の先では、炎をまとう剣、雷をまとう剣、流れる水をまとう剣、
凍気をまとう剣など色々な形状の魔法をまとった剣同士がぶつかり合っていた。
 アルファードは、愛しいエリカの視線を確認していた。

 〔クスクス……エリカは、本当に剣に魔法を
 まとわせる方法に興味があるんだな

 騎士達の魔法の発動の仕方と
 それによって起きる剣の変化しか見ていない

 エリカは、魔法を簡単に使っているが
 剣にまとわせるという方法は
 何度かやってすぐにできる者と
 一月はかかる者と色々だからな

 今日、習得出来なかったら、習得できるまで
 付き合うって言ってやろう
 むしろ、その方が楽しいかも?〕

 エリカとベタベタしたいアルファードは、内心でちょっと黒いことを考えながらも、表面上はとぉっても優しげに話し掛ける。

 「エリカ、剣にまとわせる魔法は
 考えているのか?」







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界召喚に巻き込まれました

ブラックベリィ
恋愛
気分転換として、巻き込まれモノも書いてみようかと………。 でも、通常の巻き込まれは、基本ぼっちが多いようなので、王子様(笑)を付けてみました。 なんか、どんどん話しがよれて、恋愛の方に傾いたので、こっちに変更ます。

旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします

暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。 いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。 子を身ごもってからでは遅いのです。 あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」 伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。 女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。 妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。 だから恥じた。 「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。 本当に恥ずかしい… 私は潔く身を引くことにしますわ………」 そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。 「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。 私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。 手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。 そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」 こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!

チャららA12・山もり
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。 お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。

神託を聞けた姉が聖女に選ばれました。私、女神様自体を見ることが出来るんですけど… (21話完結 作成済み)

京月
恋愛
両親がいない私達姉妹。 生きていくために身を粉にして働く妹マリン。 家事を全て妹の私に押し付けて、村の男の子たちと遊ぶ姉シーナ。 ある日、ゼラス教の大司祭様が我が家を訪ねてきて神託が聞けるかと質問してきた。 姉「あ、私聞けた!これから雨が降るって!!」  司祭「雨が降ってきた……!間違いない!彼女こそが聖女だ!!」 妹「…(このふわふわ浮いている女性誰だろう?)」 ※本日を持ちまして完結とさせていただきます。  更新が出来ない日があったり、時間が不定期など様々なご迷惑をおかけいたしましたが、この作品を読んでくださった皆様には感謝しかございません。  ありがとうございました。

「次点の聖女」

手嶋ゆき
恋愛
 何でもかんでも中途半端。万年二番手。どんなに努力しても一位には決してなれない存在。  私は「次点の聖女」と呼ばれていた。  約一万文字強で完結します。  小説家になろう様にも掲載しています。

事態は更にややこしくなりました

のぎく
恋愛
 結婚なんて、したくない。  だからその手の話から逃げて逃げて逃げ続けてきたのに、十八歳になった途端父から縁談を勧められた。それも拒否権なしの。  相手は顔良し性格よし家柄よしに加えて文武両道、将来性もばっちりな引く手数多の超優良物件。普通ならすぐさま飛びつく縁談なんだろう。でもね?結婚したくないから縁談がいやという以前にその人、私がこれまで避けまくってきた人なんだけど。  主人公がなんとかして縁談を破談にしようとした結果のはなし。  小説家になろう、カクヨムでも投稿してます。

王子様と過ごした90日間。

秋野 林檎 
恋愛
男しか爵位を受け継げないために、侯爵令嬢のロザリーは、男と女の双子ということにして、一人二役をやってどうにか侯爵家を守っていた。18歳になり、騎士団に入隊しなければならなくなった時、憧れていた第二王子付きに任命されたが、だが第二王子は90日後・・隣国の王女と結婚する。 女として、密かに王子に恋をし…。男として、体を張って王子を守るロザリー。 そんなロザリーに王子は惹かれて行くが… 本篇、番外編(結婚までの7日間 Lucian & Rosalie)完結です。

召喚されたのに、スルーされた私

ブラックベリィ
恋愛
6人の皇子様の花嫁候補として、召喚されたようなんですけど………。 地味で影が薄い私はスルーされてしまいました。 ちなみに、召喚されたのは3人。 2人は美少女な女子高生。1人は、はい、地味な私です。 ちなみに、2人は1つ上で、私はこの春に女子高生になる予定………。 春休みは、残念異世界への入り口でした。

処理中です...