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第10章 緑の魔の森にて
145★やっぱり、幻の植物だったようです
しおりを挟む二撃目を受けて紫ツタの根っこは、地上に本体を現した。
紫ツタを持っているのに、本体は鮮やかな真紅で、切られた場所から真っ白な樹液?をジュージューという音と焼け焦げた匂いと共に零していた。
何体ものボンキュボンの美女?が絡み合っているような本体からは、爽やかなバラの香りが漂っていた。
それを見て、アルファードとエリカはマンドラゴラの近縁種?と思った。
さきにその疑問を口にしたのは、エリカだった。
「アル、この紫のツタの本体って
大地から引っこ抜かれる時に悲鳴を上げて
引っこ抜いたものを殺すっていう
マンドラゴラの仲間かな?」
「確かに、マンドラゴラの近縁種のようだが
そんなことはどうでもイイ
エリカを攫って苦しめたんだ万死に値する
焼き尽くしてくれるわ」
アルファードの私怨の入りまくった言葉に、エリカは頬を染める。
〔やだ…嬉しい~…アルが、私の為に
怒ってくれている……じゃないでしょ
貴重なモノかも知れないんだから……〕
「でも、あのマンドラゴラの近縁種なら
何かの薬効効果があるかもしれないから……」
そう言うエリカの言葉には一理どころじゃなくあるのだが、自分が触れていないエリカの肌に触れて、騎士服をボロボロにしたことに対する嫉妬と怒りは収まらなかった。
「エリカ、騎士服を失ったってことは
コイツ等に、その姿を見られたって
ことだよな? 俺は、嫉妬深いんだ
心の狭い男だから、焼き尽くしてやる」
〔アル、その紫のツタを持つ植物は
もしかしたら貴重な植物かもしれないから…
いや、怒ってくれて嫉妬してくれるのは
嬉しいけど……止めなきゃ……〕
恥ずかしい目と怖い目にもあったが、ソレが貴重なモノかもしれないという冷静な判断が出来たエリカは、暴れるアルファードを止めようと一生懸命に声をかける。
「いやだから………」
「止めて下さい団長」
エリカの制止の声に、オスカーの声が重なるが……。
「止めるな」
アルファードは、剣を振り上げながら、叫ぶように言い返した。
そんなアルファードに、オスカーが溜め息混じりに、非難を含めるようにして言う。
「ご自分が、堂々と姫君の恥ずかしい姿を
見れないからって、紫色のツタの本体に
八つ当たりはしないで下さいね
それは、すべての毒を解毒するモノなんです
この場合は、麻薬や媚薬なども含まれます
ようするに、状態異常を解消するっていう
意味での解毒薬を作れる、幻の素材なんです」
説明するオスカーの言葉に、エリカは純粋に好奇心を出して聞く。
「へぇ~そんなに凄い素材なんですか?」
冷静沈着なエリカの様子に、改めて感心しつつ、オスカーは怒れるアルファードを制止してもらう為に、貴重なモノであることを伝える。
「そうなんですよ
寵愛の聖女様の前の代の頃までは
採取できていたんですが…………
度重なる災害で、一部の文献が綺麗に
失われてしまい
サンタマドラーヌ…それが、この紫のツタを
《転移》させてくるモノの名前ですが……
何処で採取できるかと、その形態の部分や
対処方法が失われていたんです」
出現時には判らなかった《転移》してくる紫のツタの正体が、本体である根っこの形状を見て、ようやく、記憶の底にあったモノを思い出したらしいオスカーは、必死でそう説明する。
エリカは、なぜ今になって、オスカーがその正体を口にしたかを推察して言う。
「というと、このサンタマドラーヌの
根っこの形と、その効能だけが
文献に残っていたってことですか?」
エリカの理解力に、オスカーは嬉しそうに頷く。
「その通りです」
オスカーから説明を受け、エリカはにっこりと笑って頷く。
その言葉に含まれるモノを理解して…………。
「そうですか
じゃ、貴重な薬の材料なんだから
焼き払うのはダメだよ
わかっているよね? ねっアル」
オスカーの制止の言葉を聞く気はなかったが、愛しいエリカにダメと言われてしまえば、アルファードも剣と怒りを治めるしかなかった。
「……ちっ……わかったよ
エリカが望むなら焼き払うのは止める」
頷いたアルファードにホッとしながら、オスカーも不自然にならないように、あえて騎士服じゃないことを聞く。
「ところで、姫君、服を失うほどの
戦いをしたんですか?
そのわりには、洞窟に戦いの痕跡が
無いんですが?」
周囲を見回してそう言うオスカーに、エリカは肩を竦めて答える。
「紫ツタには、絡み付いた相手の《魔力》を
吸引したり、阻害したりする能力が有ったの
だから《魔法》を使えなくて
服をズタズタにされちゃったの」
そのセリフに、アルファードもどうやって対処したのか、魔法騎士団の団長として知りたいと思い聞く。
「エリカ、その状態から、どうやって
逃れたんだ?」
聞かれたエリカは、自分がやったことを説明する。
「えっとね、ブレスレットの宝石に
《魔法》を付与しておいたから
それを、発動させたの
私の躯から発生する《魔力》は
紫のツタと触手が、吸引とかして
阻害をして発動しなかったから
でも、ブレスレットに付与した《魔法》を
解放した時はそれが出来なかったから
それで、身体を拘束する紫のツタと触手を
焼いて凍らせて、なんとかなったわ」
その対処方法を聞いて、しみじみとオスカーは呟いた。
「姫君が用心深い性格で
本当に良かったですね」
勿論、アルファードも大きく溜め息を吐きながら頷くのだった。
「ああ、そうだな
本当に、エリカが無事で良かった」
そう言って、どさくさ紛れに、アルファードはエリカに抱きつくのだった。
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