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第10章 緑の魔の森にて
138★油断は禁物ですが、油断してしまいました
しおりを挟むオスカーのセリフを聞いたアルファードは、顔にデカデカと『なんだ、その面倒臭い処理方法は』というモノを浮かべていた。
が、とりあえずの対処方法はわかったので、次に気になったことを聞く。
「んで、こいつら事態の攻撃方法は?」
そんなアルファードと同じ感想を持ったエリカは、そのツタから目を離さないようにしながらも、ついオスカーを盗み見る。
と、オスカーは淡々と過去の報告書に書かれていたモノを口にする。
「とにかく、絡み付いてくるそうです
また、そのツタには毒が纏わり付いています
それは、有毒で遅効性というやっかいなモノで
痛みも無く…動きが鈍くなっていく毒
だということです。
その他に、性的に興奮して動けなくなるものや
視界がどんどん狭まってくるものなど
命の危険があまり無い毒なので
気が付くことが遅くなって、取り返しが
付かなくなってしまうようです」
「なんだ、その歯切れの悪い説明は」
「そう書いてあるのでしょうがありませんね
それと、騎士達が攫われるとも
書いてありました」
「攫われた騎士達は、どうなっていたのだ?」
「生気がまったく無い状態で発見されたと
報告書にありました
また、いくら回復魔法をかけても反応しない
状態になっていたようです
それで、成すすべも無く死亡したという記述が
過去の報告書にありました」
「かなり不味い魔物のようだな」
「はい」
「エリカ、聞いていたな」
「うん」
「俺達から離れるなよ」
「怖いから、絶対にアルの側にいるよ」
アルファード達が会話している間も騎士達は、炎を纏わせた剣でひたすらツタを切っていた。
が、切るそばから新しいツタが生えてくるので、賽の河原状態だったのは言うまでもない。
エリカは、オスカーの毒の説明を聞いていたので、3分ごとに状態異常と
怪我の回復を、その場にいる者達全員に掛ける魔法を作ることにした。
〔オスカーさんの説明の中には……
あの、エロゲーのお約束の触手や
媚薬設定に近いモノがあったよね
ここは…定期的に回復を掛けて……
ツタに攫われないようにしなくっちゃ…
エリアヒールを、20回唱えて
それを3分間隔で発動するように
唱えればイイわよね
それと《転移》禁止を唱えればイイかな?
とりあえず試してみよう〕
「ここに居る騎士達全員に
回復魔法をエリアヒール×25回
それを、時空魔法により
3分遅れで1回ごとに発動せよ
時空魔法により、騎士達に
《転移》禁止を宣言する」
エリカの詠唱と共に、かすり傷を負い毒を体内に注入?されて動きが鈍っていたと自覚していた者達から歓声があがる。
騎士達は、エリカのエリアヒールで、状態異常(麻痺、視野狭窄、媚薬など)が回復したから。
エリカは、自分の掛けた魔法が有効だったことにほっとしていた。
〔怪我や毒についてはOKね…後は、ツタの
《転移》魔法の邪魔が出来るか?よね
アル達は《転移》魔法を失っているのに
魔物の方はソレを持っているなんて
なんか不条理よねぇ……
出来れば、便利な魔法だから《転移》を
覚えたいんだけどなぁ~っと、危ないわ
余計なことは考えないで戦った方が安全ね
ファイアーウオールで覆ってみようかな?〕
内心で色々と考えていたエリカだったが、口に出したりしなかった。
そんなエリカとアルファードの直ぐ側に、新しいツタが大量に《転移》で出現する。
それも、今まで現われた細い緑色のツタではなく、毒々しい紫色の太いツタだった。
その紫の太いツタが、有毒の分泌液をポタポタと零してウネウネと蠢き、獲物を狙う大蛇のようにかま首?をもたげるように持ち上がり、標的をエリカ達へと定める。
その次の瞬間、その紫色のツタが、エリカ達に向かってグイグイと伸びてくる様はかなりクルモノがあった。
勿論、嫌な感じがしたので、エリカは魔法を詠唱する。
「青白い炎の壁よ
紫のツタを覆い燃やし尽くせ
ファイヤーウォール」
エリカの詠唱と同時に、紫のツタは炎の壁に覆われてしまう。
青白い炎の壁(超高温の炎)は、内部の紫のツタをその火力で燃やしていく。
紫のツタが燃え尽きるたびに、どんどん範囲を縮めて行く。
〔思っていたよりも簡単に処理出来そうね
紫のツタに対して、次にやることが決まって
いるかどうか知らないけど……
とにかく、氷の壁を作って
ツタを凍らせて、粉々に砕いてやるわ〕
「絶対零度の氷の壁よ
紫のツタを覆い隠し
すべて凍らせて砕け
アイスウォール」
エリカの詠唱で、また《転移》で現われた紫のツタはどんどん白い壁に覆われて行く。
その様子を見てほっとしていたエリカは、自分とアルファードの直ぐ側に《転移》してきた魔物に視線を向ける。
すると、紫のツタから、赤紫の煙?がもわもわと上がっていく。
それに紛れて、小さなツタが、エリカに接近する。
エリカの周りをグルッと取り囲むと、ツタは《転移》した。
もちろん、エリカを巻き込んで。
エリカが一瞬で消えた後には、呆然としたアルファードがいた。
どうやら、ツタ達が狙っていたのはエリカ1人だったらしい。
その証拠に、《魔力量》の多いアルファードもオスカーもその場にいただけで、瓦礫の崩壊の音がするようだった。
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