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第7章 帝都にて、それぞれの時と思い
072★皇妃リリアーナの暗躍の裏で紡がれる真実・後編
しおりを挟むその沈黙を無視して、皇妃守護騎士長のピョートルは、魔術師エルダールを追い詰めるような言葉を重ねる。
「アルフレッド陛下にとっては
皇帝の色を纏って誕生した
アルファード様ただお1人が
唯一の皇太子なのですよ
そのことを、きちんと心にとめて
これから、おとなしくするならば
今までのことは、目を瞑って
このまま皇妃として生涯遇すると……」
魔術師エルダールは、皇妃守護騎士長のピョートルの言葉をぶった切るようにして言う。
「アルフレッド陛下は、姫様を……
皇妃リリアーナ様を見捨てると?」
皇妃リリアーナの行いを棚に上げきり、魔術師エルダールは、さも非道な仕打ちという口調で言う。
が、今までの行い(正統な皇帝の色を纏う皇太子アルファードへの暗殺未遂etc.)に憤慨していたので、皇妃守護騎士長のピョートルは、流石に切って捨てるように言う。
「何を今更、岩塩を人質として
むりやり皇妃の座に収まったのは
リリアーナ様でしょう
アルフレット陛下は
余りにも減りすぎた皇族を
増やすという義務の為だけに
妃を7人も娶られたのですよ
リリアーナ様は、その中の
1人でしかありません」
冷淡な口調でそう言うのは、皇妃の守護騎士長を務める男・ピョートルである。
本来、誰よりも皇妃リリアーナを守る立場にいる者のセリフに、魔術師エルダールは憤慨しながら言う。
「そんな姫様は、心から陛下を愛して……」
そんな魔術師エルダールに、冷笑を浮かべて皇妃守護騎士長ピョートルは言う。
流石に、我慢の限界に来たのだ。
他国者が、我が物顔で、国内の継承問題に横槍は入れるわ、暗殺未遂は日常茶飯事だわ、あげくが、聖女候補を当然のように交換するなどという始末。
その聖女候補の《召還》にかかる、膨大な《魔力》や多大な資金、そして、労力その他のことなど、何一つ考えていない無責任極まりない言動と行動をする皇妃リリアーナに対して、皇帝陛下が動いたのだ。
確かに、皇妃の守護騎士長を務めるているが、ピョートルは監視役でもあったのだ。
それとなく修正するようにしても、悪さを一行に止めない皇妃リリアーナに辟易しているところに、皇帝陛下から直接お言葉をもらったのだ。
皇妃の守護騎士長のピョートルは、魔術師エルダールに宣告するように言い放つ。
「アルフレッド陛下の妃の1人ならば
愛するのは当然のコトです
まして、ごり押しで入った
地位なのですから
それよりも、陛下の唯一の皇太子を
暗殺しようとする方が問題です
アンジェロ様は、幼少期は身体が弱かった
今は皇族として、ギリギリの
《魔力》しかないことが判明しましたから…
アルファード様が、聖女様と婚姻した時点で
皇太子より降りていただく予定です
心にとめておいて下さい」
皇妃の守護騎士長のピョートルは、今までのどこか気弱そうな仮面を外して、事務的にそう言う。
が、魔術師エルダールにも立場はあるので、食い下がるように言う。
「どうあっても、アンジェロ様は
廃太子とするということですか?」
そんな魔術師エルダールに、皇妃の守護騎士長のピョートルは、監視者としての表情で、通告する。
「これは、決定事項です」
にべない口調での通告に、魔術師エルダールは先刻の会話を思い出して、アンジェロを皇太子で押し通す方法を口にする。
「アルファード様が聖女と婚姻しない状態で
アンジェロ様が聖女と婚姻をなせば……」
そんな夢物語みたいなことを言い出した魔術師エルダールに、冷酷な瞳へと変化させた、皇妃の守護騎士長のピョートルは、何の寝言を口にしているというような口調で言い放つ。
「アルファード様は、既に聖女様と供に
眠っておいでです
それに聖女様は、究極の治癒魔法を
使用しました
攻撃魔法も土魔法の最上級を
使用しました
地水火風の4大精霊魔法を使用しました
ざっくり言えば、守護獣を得れば
その場で聖女認定をされるでしょう」
淡々ともう既に決まりきっている事実を口にする皇妃の守護騎士長のピョートルに、魔術師エルダールはわなわなしながら聞く。
「もしかして、聖女候補の中で
1番の《魔力》を………」
その問いに、皇妃の守護騎士長のピョートルは肯定する。
「持っています
アルファード様が、聖女様の髪を洗い
乾かして、結い上げました
それの意味を考えて下さい
皇妃リリアーナ様とサラディール王国が
これ以上、余計なコトをしないように
自重して欲しいものです
貴方も母国が大事ならなおのこと……
くれぐれも、誤まった選択をしないで
いただきたいものです…では、失礼」
皇妃の守護騎士長のピョートルは、魔術師エルダールにそう言い放った後、その小部屋を後にした。
サラディール王国といまだに密接に遣り取りしている、魔術師エルダールに通告したことを、アルフレッド陛下に報告する為に、執務室へと向かった。
小部屋のドアが無情に閉まる音を聞きながら、魔術師エルダールは、たった今宣告された言葉に、ただ呆然と呟いていた。
「不味い、どうしたら
姫様の立場を維持できる?」
突きつけられた現実に、今更アタフタしても、皇妃リリアーナのした数々を消せるわけでもない。
だからと言って、第1皇子のアルファードを養子に迎えて、カタチばかりの継母と子として皇太子にすることも、もはや出来ない状態であった。
魔術師エルダールは、母国サラディールが攻め滅ぼされるかもしれないという現実を、受け入れられないまま、ただただその場で呆然としていたのだった。
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