71 / 450
第7章 帝都にて、それぞれの時と思い
071★皇妃リリアーナの暗躍の裏で紡がれる真実・前編
しおりを挟む皇妃リリアーナの元から下がった魔術師エルダールに、皇妃守護騎士長のピョートルが話し掛ける。
「エルダール殿、少々話したいのだが?」
そう改まった表情で言われ、魔術師エルダールは疑問符を浮かべる。
が、やっと、我が儘姫の癇癪から何とか解放され、ホッとしているだけに、同じ気持ちなのだろうと思って快諾する。
「はい、構いません」
皇妃守護騎士長のピョートルは、周囲を確認してから、手直にあったドアのある小部屋へと入る。
その行動に、ちょっと不思議そうな表情で、魔術師エルダールは続いて入る。
室内に入った後、ドアを閉めた皇妃守護騎士長のピョートルは、おもむろに口を開く。
「皇妃リリアーナ様を幻惑の魔法にて
おとなしくさせることは
貴方に可能ですか?」
唐突で不敬な言葉に、警戒心を滲ませながらも、皇妃守護騎士長のピョートルからの言葉なので、一応は答える。
「幻惑の魔法に掛けることは出来ますが?
それが、何の役に立つのですか?」
不快感を感じていますという冷たい声音に怯むことなく、皇妃守護騎士長のピョートルは、淡々と言う。
「はっきりと言いましょう
これ以上、皇妃リリアーナ様に
暴走されるのは、迷惑なのです」
その言いざまに、カチンときたらしい魔術師のエルダールは、皇妃守護騎士長のピョートルに冷たい声で確認するように言う。
「貴方は、姫様の守護騎士でしょう?」
だが、皇妃守護騎士長のピョートルもここで引き下がるわけにはいかないのだ。
皇妃リリアーナと自分自身と、自分の部下達の為に…………。
「皇妃リリアーナ様を守る為にも
これ以上、アルファード様を
怒らせるのは得策ではありません
あの方が、皇妃リリアーナ様に
一切抵抗していないのは
何時でも簡単に殺せるからなのです
そして、皇妃リリアーナ様を殺したなら
迷うことなく、一気呵成(いっきかせい)に
サラディール王国を攻め滅ぼすでしょう」
あまりに、自分の母国サラディール王国を軽くみる、皇妃守護騎士長のピョートルの言葉に、唖然としてしまう。
〔そんなに、我が母国サラディールは
弱くなんてありませんよ
いくらドラゴニア帝国とはいえ
馬鹿にしすぎではないですか?〕
「はぁ…なんですか? …それは……」
魔術師エルダールの表情から、内心を読んだ皇妃守護騎士長のピョートルは、深い深い溜め息をひとつ吐いてから、その認識を叩き壊す為に言う。
「アルファード様やアルフレッド陛下が
皇妃リリアーナ様の我が儘に耐えているのは
輸入している岩塩の為です
それは貴方でも、お理解(わか)りですよね
それを、手にする一番簡単な方法は
サラディール王国を征服することです
その力を、我がドラゴニア帝国は持っています
いいえ、ここは魔法騎士団長の
アルファード様はと言った方がイイですね」
その口調に、思うところはあったが、グッと我慢して魔術師エルダールは務めて平静な口調で聞く。
「では、聞きましょう
何故、今まで動かなかったんですか?」
その問い掛けに、皇妃守護騎士長のピョートルはあっさりと言う。
「それは、とても簡単な理由ですよ
支配する国が増えるということは
政務も魔物討伐も倍ですまないと
判っているからです
その面倒を嫌って、今までは
何もしていませんでした
私の言っている意味は
お理解(わか)ですよね」
皇妃守護騎士長のピョートルに、確認するように言われて、魔術師エルダールは紡ぐ言葉が見付からずに黙り込む。
「…………」
そんな魔術師エルダールに、皇妃守護騎士長のピョートルは畳み込むように言う。
「もし、皇妃リリアーナ様が地位をかさに
アルファード様の聖女候補様に手をだせば
その怒りでもって、皇妃リリアーナ様も
その故国も滅ぼす可能性があります
それを心にとめて、自重するように
貴方がしむけて下さい」
皇妃守護騎士長のピョートルの言葉に、魔術師エルダールは不快そうに言う。
「それは、貴方個人の意思か?」
魔術師エルダールの詰問に近い言葉に、皇妃守護騎士長のピョートルは首を振って答える。
「いいえ、これは、陛下の意思です
これ以上の我が儘は、許さぬと
自重せよと………」
予想外の言葉に、魔術師エルダールは沈黙する。
「…………」
10
お気に入りに追加
2,241
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。
転生したらチートすぎて逆に怖い
至宝里清
ファンタジー
前世は苦労性のお姉ちゃん
愛されることを望んでいた…
神様のミスで刺されて転生!
運命の番と出会って…?
貰った能力は努力次第でスーパーチート!
番と幸せになるために無双します!
溺愛する家族もだいすき!
恋愛です!
無事1章完結しました!
異世界召喚に巻き込まれました
ブラックベリィ
恋愛
気分転換として、巻き込まれモノも書いてみようかと………。
でも、通常の巻き込まれは、基本ぼっちが多いようなので、王子様(笑)を付けてみました。
なんか、どんどん話しがよれて、恋愛の方に傾いたので、こっちに変更ます。
「次点の聖女」
手嶋ゆき
恋愛
何でもかんでも中途半端。万年二番手。どんなに努力しても一位には決してなれない存在。
私は「次点の聖女」と呼ばれていた。
約一万文字強で完結します。
小説家になろう様にも掲載しています。
そんなに聖女になりたいなら、譲ってあげますよ。私は疲れたので、やめさせてもらいます。
木山楽斗
恋愛
聖女であるシャルリナ・ラーファンは、その激務に嫌気が差していた。
朝早く起きて、日中必死に働いして、夜遅くに眠る。そんな大変な生活に、彼女は耐えられくなっていたのだ。
そんな彼女の元に、フェルムーナ・エルキアードという令嬢が訪ねて来た。彼女は、聖女になりたくて仕方ないらしい。
「そんなに聖女になりたいなら、譲ってあげると言っているんです」
「なっ……正気ですか?」
「正気ですよ」
最初は懐疑的だったフェルムーナを何とか説得して、シャルリナは無事に聖女をやめることができた。
こうして、自由の身になったシャルリナは、穏やかな生活を謳歌するのだった。
※この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」にも掲載しています。
※下記の関連作品を読むと、より楽しめると思います。
契約破棄された聖女は帰りますけど
基本二度寝
恋愛
「聖女エルディーナ!あなたとの婚約を破棄する」
「…かしこまりました」
王太子から婚約破棄を宣言され、聖女は自身の従者と目を合わせ、頷く。
では、と身を翻す聖女を訝しげに王太子は見つめた。
「…何故理由を聞かない」
※短編(勢い)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる