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第2章 聖女の資格について

010★恵里花が聞きそこねた、神官による守護獣と魔物のお話し1

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 ワルター神官は、ただひたすら黙って会話が途切れるのを待っていた。
 だが、自分が介入しないと、話しが途切れないと判断した。

 〔これは、私が声をかけないと……
 彼女達のお話しは途切れそうにありませんね
 ここは、聖女候補の彼女達が気にしていた

 守護獣になれるモノと
 魔物との違いを、話しますか
 遅かれ早かれですしね

 どちらにしろ、基礎の基礎ですから
 教えておく必要がありますしね〕

 それまで黙っていたワルター神官が、聖女候補達の会話を収拾する為に、おもむろに話しだす。

 「皆さんの会話の中には
 魔物の仲間が多数混ざっていますので
 《感合》は不可能かと思われます」

 「えっ…それって…どれのこと?」

 聖女候補の素朴な疑問的な問いに、ワルター神官は、1番わかりやすい例から上げていく。

 「空中を優雅に泳ぐ、長いヒレを持つ
 魚の姿をした魔物です

 属性は水と風なので…
 水珠を口から吐き出して襲ってきます

 運が無いと大型の水珠に包まれて
 溺れてしまいます

 それと…小さな水珠とも呼べないモノを
 大量に吐き出して
 我々の躯をザクザクに切り刻んでくれます

 中級の精霊魔法を使えないと
 命の危険があります」

 金魚とか、ヒレ長の鯉という、元の世界では慣れ親しんだモノが、魔物に分類され、危険と言われて、聖女候補の6人はびっくりする。

 「「「「「「えっぇぇぇぇー」」」」」」

 その聖女候補達の反応に気を良くした、ワルター神官は、内心で無意識にガッツポーズをしつつ、ポーカーフェイスで話し続ける。
 気分としては、掴みヨシというところだろう。

 「魔の森や試練の森に生息している昆虫類は
 全て魔物に分類されてすます
 魔昆虫と呼ばれていますね

 ハチやアリは、毒を持っているので
 大きさに関係なく危険です

 ついでに、小さな猫より大きい魔昆虫は
 人間や家畜を襲って食べますので

 試練の森で皆様が独りになるときは
 魔昆虫避けの香袋を
 身に付けていただく予定です」

 ワルター神官は、表面上は淡々と話しているが、内心では少し意地悪い気分でいた。
 そう、延々と聖女候補達のよれた話しが終わらなかったことを、無意識で怨んでいたらしい。

 そんなワルター神官の心情など知らない聖女候補達は、お互いの顔を見て確認するように頷いて、その内の1人が代表して言う。

 「まっ、空中を泳ぐ魚と昆虫は
 諦めろってコトね」

 その言葉に、聖女候補達が頷く。

 「「「「「うん…危険はごめんよ
 安全第一…魚と昆虫はパスっ………」」」」」

 そんな聖女候補達に頷き、ワルター神官は続けて説明する。

 「次に鱗を持つモノ達ですが
 ほとんど魔物です

 極まれに、幻獣に分類されるモノが
 いるだけです

 その見分け方は簡単です

 姿を見た瞬間に
 人間に背を向けるモノが幻獣で
 それ以外は魔物です

 背を向けなかった鱗付きを見たら
 さっさとお逃げなさい

 上級魔法を手に入れていないと
 かなりの確率で殺られますから

 皆様が、試練の森に行く時は
 ある程度、鱗あるモノが嫌う匂いを放つ

 匂い玉を与えますので
 それをガンガン投げて逃げて下さい」

 そのあまりな対処法に、聖女候補達はゲンナリした表情で言う。

 「それだと、対魔昆虫の匂い袋よりも
 効力が弱いんですね

 もっと効力のあるモノは
 作れないんですか?」

 もっともな質問に、聖女候補達がコクコクする。
 が、ワルター神官の答えは冷たかった。

 「投げつけた人間にも害がありますので…
 あぁ……風下のときには…
 あまり投げるコトをお勧めできません」

 それを聞いた瞬間、6人は無意識に手直の聖女候補と手を取り合って叫んでいた。

 「「「「「「…いっやぁぁぁ………」」」」」」






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