幻獣の契約者

ブラックベリィ

文字の大きさ
上 下
29 / 29

0029★コンビニへ行こう

しおりを挟む


 煌牙は数日後に迫った高校の入学式へと思いを馳せる。

〔しかし…良かったよ。トラブルの後始末に…あと一週間ねぇ……。
 いやマジで……俺の入学式に帰国が間に合わなくてラッキーだわ。
 傍目を気にしないラブラブカップルの両親と一緒はなぁ。
 それこそ、ずっとリア充なあの二人に、纏わり付かれての入学式なんて、考えただけでもゾっとするぜ〕

「はぁ~……トラブル様様だ……神様…ありがとう」

 信心深くもないくせに、思わずそう呟いた煌牙は、空腹を満たす為に財布を持ってコンビニへと向かうのだった。

「マジで久しぶりのコンビニに行くか、飲み物も食べ物も、マジで一切なんも無いからな。
 俺でもできるインスタントな食料品と飲料を買って来ないとな。
 あぁ~マジで………腹減ったぜ………弁当残ってるかなぁ?」

 銃声や怒号など聴こえない、平和な環境に帰って来たコトを喜びつつ、煌牙は両親に連れられて渡米する前に存在していた、近所のコンビニに思いを馳せる。

 【楔】となる【契約者】を得たコトで存在が安定し、日本という大地に根刺せた幻獣は、幼体というコトもあって、しばらくの微睡みに浸るのだった。

 怒涛の数日を過ごした幻獣の幼体は、自分が二つの世界の運命を左右するほどの、類い稀な強運と強大な【魔力】を持っているという自覚がもの凄く薄かった。

 やっと安住の地を得たことで、御剣煌牙という名前と存在を得た幻獣の幼体は、自分の名前を【契約者】に呼ばれる、その時を待ちながら、心地良い空間で揺蕩いながら微睡むのだった。

 その間、幻獣の幼体に存在全てを取り込まれ、まるっと吸収された筈の、本来の御剣煌牙が普通に生活することになる。

 そう、元の人格を基礎とした疑似人格は、微かに消滅するコトなく残っていた本人が、知らないままに乗っ取っていたのだった。

 ようするに、御剣煌牙の意識は完全消滅していなかったのだ。

 そのお陰で、幻獣の幼体は元の世界へと還されるコトを免れていたというコトは、誰も知らない事実であった。

 それでもひとつの身体を共有している為、遠からず意識が溶け合って、ひとつに統合されるのは決まっているコトだった。

 そんな自分自身の上に起こった、数々の偶然の奇跡の末に再誕した御剣煌牙は、呑気に近場にあるコンビニに入る。

「良かったぁ………ここのコンビニ無くなってなくてマジ良かった。
 さぁ~て、久しぶりのコンビニ弁当でも食べるかなぁ~………。
 幕ノ内弁当に……寿司も食べたいなぁ……それから……」

 煌牙はそんなコトを呟きつつ、コンビニに入り、空腹を満たす為の弁当のコーナーへと足を運ぶ。

「へぇ~…ちょっとあっちに行っている間に…随分とまぁ~。
 弁当の種類も色々と増えたな……んぅ~パスタも買うかな?」

 そこに並ぶ、種類豊富な調理済み食料の群れに、煌牙は目移りする。

 料理上手な母親が作ってくれるモノは美味しかったが、外食はあまり美味しいと思えなかっただけに、煌牙はウキウキする。

〔うわぁ~………弁当の種類増えたなったなぁ。
 んじゃ、今日の夕飯と夜食と明日の朝食っことで、取り敢えず三つ買っとくかな………レンジでチンすりゃいいし。
 それにしても、めっちゃスイーツなんかもが増えてるじゃん。
 プリンパフェにチョコのプリンパフェは買いだな〕

 ついつい、あれもこれも欲しいと思い、店内にあるカゴを手にして、ひょいひょいと入れる。

 どうせだからと、カップラーメンなども入れて、数日分の食料を確保した煌牙だった。
 
 そんな御剣煌牙の中で、幻獣の[コウガ]は目覚めるその時まで揺蕩い微睡むのだった。

 そして、それはほんの数日後に訪れるコトは、まだ誰も知らなかった。






しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうやら俺は悪役令息らしい🤔

osero
BL
俺は第2王子のことが好きで、嫉妬から編入生をいじめている悪役令息らしい。 でもぶっちゃけ俺、第2王子のこと知らないんだよなー

執着攻めと平凡受けの短編集

松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。 疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。 基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!

棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。

処理中です...