妖魔輝譚

ブラックベリィ

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★0004 相容れない正規軍と解放軍

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 妖魔や怪魔、ミュータント化した妖獣や魔獣の脅威に、常に虎視眈々と忍び寄る幻影の魔性に怯えながらも、文明の利器を独占する正規軍から奪還しようとする解放軍は、各々のリーダーの元へと集い、勇敢に挑んだ。

 ちなみに正規軍とは、グランドコンピューターを保有する、グランドタワーやグランドシティーを有する者達のコトである。
 文明の利器を独占する彼らは、自分達をそう呼んでいるのだ。

 文明の利器を独占し、人工都市に君臨する正規軍の上層部は、自分達の利益の為なら、人体実験すら平気で行う。

 そう、自称正規軍と名乗る集団は、崩壊した空間の狭間から忍び込んだ弱い幻影の魔性に憑かれた者を捕獲し、支配している一般市民の中から選別した者と、まるで家畜のように交配させ、力を有した、自分達に都合の良い兵隊を作ろうとしていた。

 それは、妖獣であったり、魔獣であったり、時には放射能汚染によってミュータント化した野獣だったりする。
 そう、正規軍は比較的調教しやすい獣人、それも妖獣人や魔獣人を作り出そうとしていたのだ。

 幻影の魔性のに憑かれた者との交配によって、半魔人などができないだろうかと、一般市民を交配実験に次々と投入するのだった。

 正規軍が捕獲する個体は、大半がオスの個体なので、生かしている一般市民の中の妊娠できる年齢に達した女性が、実験の生贄に選ばれていた。

 ひとを人とも思わない所業に、解放軍へと逃れる一般市民も現れたが、大半は正規軍が作ったゲートによって、逃げられずに終わるのである。
 そして、逃げようとした一般市民は真っ先に実験に使われるのだ。

 核戦争以降、生き残った人類はふたつに別れて、存続し繁栄する為に、今現在も弱肉強食の世界を繰り広げていた。

 何時しか、一般市民からも、ふたつの集団は正規軍と解放軍と呼ばれるようになっていた。

 そして、正規軍と呼ばれる権力者集団と、解放軍と呼ばれる民衆集団、ふたつの生存競争は長く続き…………現在も続いている。

 はじめの方こそ、武器が豊富にある正規軍に一方的に蹂躙されていた解放軍も、次第に技術者が増え、正規軍と対等の力を手に入れつつあった。

 人類は、環境によって次第に変化し、極限の状態にある解放軍側の人間は、だんだんと戦闘能力のある者が増え、戦闘員が増加し続けた。

 解放軍も正規軍も、互いに高め合うように順調に成長して行き、最初の頃の拙い戦闘よりも遥かに厳しい状況に追い込まれていた。

 そして、極限まで追い込まれたふたつの軍の兵隊達は、ついに他種族と取引をしだした。




 正規軍は、上からの命令によって…………。

 解放軍は、個人の意思で…………。



 そう、相手の軍に所属する人間を大量虐殺するコトを条件に、妖魔と呼ばれる存在や、上級魔性と取引する者まで現れたのだ。

 取引に応じる上級魔性は、残虐非道ではあるが、存外律儀なところもあり、受肉〈じゅにく〉用の適合率の高い肉体との交換で、大抵は対価の条件に従って虐殺に走るのだった。

 ちなみに、上級魔性より遥かに力のある妖魔は、ほとんどその取引に応じるコトなく、人間同士の争いを見ているだけだた。
 たまに、なんの気まぐれか、ちょっかいをかけるコトはある。

 特に、両者のパワーバランスが拮抗している時や、大幅にバランスの天秤が傾いた時に限り、介入するコトがある。

 ちなみに、極々稀〈ごくごくまれ〉なコトだが、受肉〈じゅにく〉の為の肉体提供者を気に入り、憑りついた魔性が、宿主の意思を壊すコトなく、共存する例も現れ出した。

 その共存関係を持つ者は、自らの意思で魔性と取引し、己の肉体を提供する解放軍に多かった。

 そんな中、正規軍の幹部の娘が解放軍に攫われるという事件が起きた。

 スタイルは微妙だが、類〈たぐ〉い稀〈まれ〉なる容姿端麗なうえ、頭脳明晰で冷静沈着な娘。

 そして、その解放軍側の幹部の娘を奪ったのは、解放軍の中でも野蛮で粗野と言われる野獣のような男達の集団のリーダーだった。

 解放軍に群れた男達の嗜虐心を満たす為に、積年の恨みを晴らす言うう名目で、公開処刑というなの凌辱を行おうとした。
 が、それを止めたのも、また、別の解放軍のリーダーが止めた。

 その解放軍は暁〈あかつき〉と名乗り、リーダはユウヤと呼ばれていた。

 当然、弄〈もてあそ〉び嬲〈なぶ〉るつもりで奪って来た娘を取り上げようとするユウヤを、野獣のような男・ラゴウは激高した。

 勿論、ラゴウ率いる餓獣〈がじゅう〉の男達も正規軍の幹部の娘を取り上げようとするユウヤを憎んだ。

 が、結局は弱肉強食、ユウヤと暁は、力でもってラゴウとその配下である餓獣〈がじゅう〉を制したのだった。

 そして、ここに解放軍のひとつ・暁のリーダー・ユウヤと、正規軍が誇る頭脳集団の娘・サクヤが巡り合ったのである。

 そして、ユウヤに庇護されたサクヤには、実はとんでもない秘密があったのだ。
 正規軍が一般市民を贄として、境界の狭間から現れたモノと交配実験を繰り返した結果の子だった。

 高い頭脳も、その容姿端麗さも、すべて異種族姦によって顕現〈けんげん〉したモノだった。
 ただし、サクヤ自身は、異種族姦F2である。

 サクヤの母にあたる者が、異種族姦F1だったのだ。
 その容姿の美しさから、ペット感覚で、正規軍の幹部に飼われていたのだ。

 サクヤの遺伝子上の父は、サクヤの母・カグヤをモノとして扱っていた。
 そう、部下への報奨に一夜の権利を与えたりしていたのだ。

 サクヤという手駒を産ませた後、自分の部下の中の優秀な者との間に子供を作らせようとしていたのだ。

 ちなみに、サクヤの母・カグヤはラゴウ率いる餓獣〈がじゅう〉の襲撃時に死んでいる。
 が、その点だけは、サクヤはラゴウに感謝していた。

 性奴のごとく扱われても自害すら出来ないようにされていた母・カグヤに死という安らぎを与えてくれたから………。

 勿論、サクヤ自身、遺伝子上の父に逆らうコトができないように、強力な暗示を産まれた時から掛けられていた。

 正規軍には、そういう異種族姦によって誕生した者が複数存在していた。








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