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0011★悪霊に見付かってしまいました

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 教室を出た威知護いちごは、取り敢えずというコトで保健室へと向かう。
 途中、担当教室に向かう教師と行き交うが、顔色の良くない威知護いちごを心配するコトはあっても、見咎めるようなコトは無かった。

 ふらふらとおぼつかない足取りで、保健室にたどり着いた威知護いちごだったが、そのドアを開けるコトは無かった。
 なぜなら、手首に着けているミサンガが教室の時同様、熱くなったから…………。

 …………嘘だろぉ~…このいやぁ~んな気配って教室に居たアレじゃん…………
 …………うわぁ~…守護としてもらったミサンガも反応してる…………

 …………あの時、がっちりと悪霊と視線が合ったような気がしたけど…………
 …………クソッ…気のせいじゃなかったのかよ…見えないはずなのに…………

 …………あっ…そっか…とり憑いた女子の視線を通して、俺を見たのか…………
 …………霊体状態では認識できなくても、とり憑けば見れるってコトかよ
…………

 …………ソコは盲点だったな………じゃない、マジで不味い…………
 …………確実に、保健室ン中に、あの悪霊は居る…………

 …………これだと、あの女子に張り付いたまま先回りしたってコトだな…………
 …………まだ、学園内の避難場所の確認が終わってないって~のによぉ…………

 保健室の中で待ち構えている、まるで蜘蛛のような悪霊を前に、威知護いちごは敵前逃亡をはかる。

 …………こういう時は三十六計っだよな…………
 …………どっか隠れられる、清浄なスポットに逃げ込もう…………

 自分では手に負えない悪霊と判断し、威知護いちごはそぉ~と気配を殺して、取り敢えず外へと逃げるのだった。

 …………確か、弓道部が使っていた体育館…わりと綺麗だったよなぁ…………
 …………毎日部活動しているわけじゃないだろうけど、はらわれてたよなぁ~…………

 そんなコトを考えながら、よどんだスポットを避けつつ、幾つかある体育館のひとつへと向かった。

 威知護いちごは、悪霊と視線があった後から、妙な倦怠感けんたいかん眩暈めまいを感じていたコトで、自分の判断能力が落ち居てるコトに気付かなかった。

 体育館に入った威知護いちごは、人目ひとめける意味で、舞台の左右にある二階の小部屋へと入った。
 ちなみに、椅子などを収納する部分は、よどみがあるので、隠れ場所としては論外だった。

 二階の小部屋のひとつに入った威知護いちごは、妙な疲労感を感じて、予備として置かれている真新しい体操用マットを広げ、そこに倒れ込む。

 …………うげぇ~…まいった…一瞬視線が合っただけなのに…………
 …………〈生気〉を吸い取られた気がする…あぁ~クラクラする…………

 体操用マットに身体を伸ばして、双眸を閉じた威知護いちごは何とはなしに欝々うつうつとここ最近に起こった出来事を考えていた。

 環境が激変したコトによる疲労がピークにきていコトも、ある意味では自覚していた。

 …………はぁ~…なんか…ものすごぉ~く疲れたなぁ~…………
 …………誕生日からこっち、ずっと気を張り詰めっぱなしだったし…………

 迎えの車に乗って、紫桜院本家しおういんほんけの正門に到着するなり、利権の亡者と化したジジババの出迎えから始まり。

 母親の元婚約者とか言う男に、勝手に【対】宣言されるは、調教してやるなどと言われるわ…新しい学校の編入試験…と、威知護いちごは無意識指折りして重い溜め息を吐く。

 その間も、チラチラと視界の隅に現れる、元母親のジジババ公認の自称婚約者の姿に、威知護いちごは神経を尖らせていた。

 一応は、威知護いちごを当主と仰ぐ、萌葱を筆頭にした使用人達が警戒して、見つけ次第排除しているのだが、何時の間にか本家周辺に現れるのだ。

 …………間違いなく、長老達の誰かが手引きしているんだろうなぁ…………
 …………桜霞おうか学園以外の行く先々に出没ジジババとクズ男…………

 …………あのクズ男…なんて言ったっけ……たしか…………
 …………視気観しきみ優希ゆうきとか言ったっけ…………

 …………でも次男の秀明ひであきさんの方が優秀だって言ってたな…………
 …………水晶のお婆様、めっちゃ怒ってたなぁ~…ああ眠い…………

 眠気を自覚すると同時に、溜まりに溜まった疲労感から、意識が暗闇へと引き摺られ、次第に深い睡眠へと滑り落ちて行くのだった。

 中二階の外側の窓が空気の入れ替えの為に開けられていた為、心地よい風が疲れ切った威知護いちごを慰撫するように流れる。

 だが、邪悪なる手先は、逃げられた獲物を求めて、桜霞おうか学園内を徘徊していた。

 勿論、何度もけがれた邪霊や悪霊に遭遇したお陰で、シンの施した悪霊などからは見えないというまじないの効力が薄れつつあるもの、威知護いちごの知らない事実だった。

 そして、そのまじないによってふうじられたはずの刻印しるしから、微かに流れるモノを感知して、一度は見失った獲物の存在を知覚し、探し回っていたのだった。

 さながら、海に落ちた一滴の鮮血に反応するサメのように…………。










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