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0010★教室に戻ったら、とんでもないが………
しおりを挟む難なく編入試験を受けて桜霞学園の一年生となった威知護は、何気なさを装いながら学園内を日々見学して歩いた。
…………桜霞学園に入学して、もう一週間過ぎたか…………
…………流石に、まだまだこの生活には慣れないよなぁ~…………
…………仮初めとはいえ、紫桜院本家の当主だもんなぁ~…………
…………あの後、長老連中とも会って話ししたけどさぁ…………
…………典型的な、老害の集団だったしなぁ…はぁ~…………
…………大半が、あのジジババ達と変わらない利権の亡者だったし…………
…………まぁ…ためになる話しとかしてくれる婆さんはいるけど…………
…………爺さん連中は、ありゃ~完全にダメだわ…………
…………自分の孫娘とか連れて来て、俺と見合いさせようってするし…………
…………俺の【対】の座…ひいては、その利権を狙ってるのまるわかりだし…………
紫桜院本家での、始まった利権絡みの日常にげんなりしながら、威知護は休み時間を利用して、広い敷地内をこまめに散策する。
桜霞学園は、そういう意味での、ある種の上流階級の子弟子女が通う学園だけあって、部やクラブもは多彩だった。
その中で特に威知護が気になったのは乗馬クラブと弓道部であった。
幼少期、七つになるくらいまで、威知護は父親の知り合いと言う神社などて、子供の部の流鏑馬を何度も担当していた故に、懐かしく思うのだ。
…………うわぁ~…なんかもの凄く懐かしいなぁ~…………
…………和弓なんて…もう触らなくてどれぐらいだろう…………
威知護はこそっと弓道部の活動を覗いて、その立ち姿を懐かしむ。
が、今の威知護にはそんなモノを楽しむ余裕は無かった。
…………じゃない、そう簡単に見付かるわけないよなぁ~…………
…………いや、それはわかっていたコトだけどさぁ~…………
…………だけど、弓道部の活動している体育館は綺麗だったな…………
…………和弓が梓弓の役割しているんだな…………
威知護は、その姿を懐かしみつつも、桜霞学園内に自分の【対】になれる素質を持つ者が居ないかを捜し歩いていた。
桜霞学園の敷地内は、ところどころスポットのようなモノになっていて、霊的な意味で清浄な場所が点在していた。
当然、反対の属性である澱みを溜めた場と呼ばれるモノになりかけの場所も点在していた。
おおむね、プラスの清浄側ではあるものの、そういう場と呼ばれる場所には近付かないように心掛けている威知護だった。
…………はぁ~…あのシンとかハクロウとか呼ばれてた人は居ないなぁ…………
…………年齢的に近そうだったから、もしかしたら居るかな?って思っていたんだけど…………
威知護は、少し前に自分にわざわざ他県から会いに来てくれた、集団を思い出す。
手首にある守護として着けてもらったミサンガを見て、その時の短いやり取りの内容を思い起こし、肩を落として嘆息する。
途轍もなく悪質な、悪霊を呼ぶ刻印を………見た目は年若い女性を使って………威知護に貼り着けた、本当の首謀者が誰かはいまだ不明のままだった。
何が目的で威知護の手首に、忌まわしい悪霊を呼ぶ刻印とやらを着けたのかも、皆目見当が付かなかった。
だが、紫桜院本家に到着し、醜悪な利権の亡者と化したジジババに、当然のように張り付く、元母親の婚約者という男の姿を見た時に、威知護は直観的に、この男だと確信した。
勝手に威知護の【対】を名乗り、調教してやるなどと宣う慮外者。
それならば、刻印を着けられ、悪霊を貼り憑けたられ目的も検討が付くと言うモノだった。
その目的は、威知護の行動の監視だと納得出来た。
威知護の内包する〔霊能力〕を日々ガリガリと削り取り、弱ったところで捕まえて、何らかの手法でもって、威知護を従える腹積もりだというコトが、透けて見えた。
…………冗談じゃねぇ~ってーの…あんなしょぼいクズ男…………
…………さっさと【対】とやらを見付けねぇーとな…………
そんなコトを考えながら、威知護は自分が安全に休める場所も同時に探し歩いていた。
…………取り敢えず、今はシンとかいう男の技?だか術?だかを掛けてもらったお陰で…………
…………悪霊のようなモノ達から、俺の姿は見えないらしいけど…………
…………それだって、何時まで有効かはわからないしなぁ…はぁ~…………
…………とにかく、学園内での避難所になりそうな場所も探さないとな…………
まだ通い始めたばかりの桜霞学園の敷地内を散策しながら、いざという時の逃げ場になれそうな、霊的な意味で綺麗な場所をピックアップするのだった。
そんな中、予鈴が鳴ったコトで、威知護は散策をやめて、編入した1年のAクラスの教室へと足早に戻るのだった。
微妙にピリピリした雰囲気の教室に入ると、そこでは女子同士がなにやらいがみ合っていた。
…………うわぁ~…めんどくせぇ~ところに戻って来ちまった…………
…………つーか…もうそろそろ教師が来て授業が始まるだろうが…………
そう思って、いがみ合っているらしい方へと視線を向け、威知護はヒクッと頬を引き攣らせ、足を止める。
…………うげろぉ~…あんなモン…何処で拾って来たんだぁ?…………
…………あれ、憑いたの最近かぁ~…あんなモンに憑かれてたら衰弱死が目の前じゃん…………
…………いや、でも、昨日はあんなモン憑いて無かったよなぁ?…………
…………何処に行ったら、あんなモンを拾うんだよ…………
…………勘弁してくれよ…あぁ~イヤなモンを思い出しちまった…………
…………あん時は、爺さんがウチに遊びに来ていて、無理矢理祓ってくれたんだよなぁ…………
…………はぁ~…今の俺には、あんなモンどうしようもないけどさ…………
…………シンやハクロウなら対処方法あるだろうけど…………
攻撃的な口調で攻めている方の女子の背中には、ニッタリと嗤う悪霊が張り付いていた。
ケケケケッと嗤いながら、とり憑いた女子に悪意を吹き込み続けていた。
その周りではオロオロする女子と男子が居た。
が、半数以上はそんな光景を無視し、机に向かって予習復習に余念がない様子だった。
威知護は、教室に入ってすぐに、机に向かって勉強はしていないが、ケンカしているらしい女子達にも近寄らずに、苦虫を噛み潰した表情でたたずむ男子に声を掛ける。
「よぉ…えっと…たしか天埜だったっけ…
アレどうしたんだぁ?なんで、ケンカしているんだ?
なんか、一方的に絡んでいる感じがするけど………」
と、見たまんまを口にして問い掛ければ、振り返って威知護を視認し、天埜は溜め息を吐く。
「ああ…紫桜院君か…それがよくわからないだだよね
突然に、彼女…鈴鳴さんに絡みだして………
鈴鳴さんて、なんか霊媒師とか排出している家の人らしいんだよね
どうも、ソレが原因らしいんだけど……唐突に始まったんで………
何がどうしたって感じてさぁ………最近、多いんだよねぇ………
なんか、教室の空気が悪くなるの………」
そんな中、唐突に強い視線を感じて振り返った威知護は、悪霊にべったりと憑りつかれている女子が、自分に視線を向けているコトに気付く。
同時に、ゾワッとしたモノを感じた。
その視線を向けられたとほぼ同時に、手首のミサンガがカッと熱くなる。
ソレが意味するコトに気付いた威知護は、スッと視線を外し、声を掛けた天埜に言う。
「わりぃ天埜…なんか気持ち悪くなったんで…保健室に行くわ
担当の教師が来たら、言っておいてくれるか………」
「うん、いいよ……ていうか、紫桜院君、大丈夫?かなり顔色悪いよ」
「ああ、なんとか保健室行くぐらいは出来るさ………
悪いけど…教師への欠席の伝言頼むわ………」
そう言って、威知護は1年のAクラスの教室をよろよろと後にしたのだった。
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