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0005★養子に出されるコトは決定事項らしい

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 帰宅した威知護いちごは、何時も通り双子の妹と父親の竜治と夕飯を食べた。
 ゆったりとした時間が流れる中、竜治は食後のお茶を飲み干して、おもむろに口を開いた。

威知護いちご、お前は明日で16才になる」

 改めて誕生日のコトを言われ、威知護いちごは不審そうに眉をひそめて聞く。

「何が言いたいんだ親父、持って回った言い方しないで
 単刀直入に、ずばりで言ってくれ」

 威知護いちごの言葉に、きまり悪げにひとつ咳払いしてから、竜治は覚悟を決めた顔で言う。

「…コホンッ…んじゃ言うが、明日から珠貴の実家に行け
 つーか………亡くなった爺さんとの取り決めでな

 長男のお前を、養子に出すってコトで、決まっていたんだ
 だから、16才になったら言おうと思っていた」

 その父親の言葉に、こころのどこかで、何時かそうなるんじゃないかと思っていた威知護いちごは、ちょっと溜め息を付いて話しをうなす。

「はぁ~…そっか………爺さんがこっそり会いに来た時
 いずれはウチをって言っていたからなぁ………

 取り敢えず、親父の知っている母さんの家の実情
 ってヤツをもう少し詳しく教えてくれよ

 取り敢えず、何でもイイ…向こうのコトを知りたい」

 威知護いちごの言葉に頷き、反抗されなかったコトにホッとしつつ、自分の知る……というか、表向きの実情を語る。

「まぁ~概要的に簡単に言うとだな
 珠貴は良いところのお嬢様だった

 今だから言うが、珠貴は婚約者持ちだった
 ただし、爺さんはその男を認めていなかった

 つーことを覚えておいてくれ………それで
 珠貴の両親ってヤツは、ものすごぉ~い
 箸にも棒にもかからない者達だった

 端的に言えば、権力と金の亡者らしい

 だから、娘と入り婿は自分の頭を飛び越えて
 娘の珠貴が紫桜院本家しおういんほんけの次期に指名されるなら

 その連れ合いとなる夫を、自分達で決めてしまえば
 紫桜院本家しおういんほんけの財産や権力の
 すべてを自由にできると思ったらしい

 それで、爺さんに何のお伺いも立てずに
 勝手に、珠貴の婚約者とかいう男を用意したんだ

 娘が当主になるなら、その連れ合いを自分達で決めれば
 本家の財産と権力は使いたい放題できると考えたようだ

 んで、ほとほと困った爺さんがとったのは
 既成事実を作られる前に珠貴を逃がすコトだった

 ただし、後継者を失うわけにいかないから
 珠貴の最初の子を跡継ぎとするってコトでな

 んで、仕事の都合で出張していた俺は
 逃げ出したばかりで行先の無い珠貴と
 偶然出会ったってわけだ」

 その時のコトを思い出して、遠い瞳をする竜治に、威知護いちごは自分が誕生する前から決まっていたコトと納得する。

 …………なんだろうな、俺の中の何処かが知っていた気がする…………
 …………これは逆らえないことわりの流れってヤツなのかな?…………

 威知護いちごを養子に出すという言葉で固まっていた紅葉と楓が、ギギギッという風に、父親である竜治を振り返る。

「パパ…それてっどういうコト?」

「お兄ちゃんが居なくなるってコト?」

 2人の反応に、苦笑いを浮かべた威知護いちごは、竜治に向かって聞く。

「わかった、養子に行くコトは決定事項なんだな
 んで、わざわざ今日ソレを言うってコトは

 明日の誕生日の日に、母さんの実家の人が
 ウチに俺を迎えが来るってコトなんだな」

 淡々と事実を受け止める威知護いちごに、竜治は頷く。

「ああ、向こうから連絡があった」

「それって何時頃なんだ?」

 威知護いちごの言葉に、竜治は肩を竦めて言う。

「正午ちょうどに迎えに来るそうだ
 最初、早朝にって言っていたんだが

 紅葉と楓のコトもあったんでな
 迎えの時間を遅らせてもらった
 
 向こうに威知護いちごが到着したら
 仮初めの当主としての儀式をする予定だそうな

 完全な紫桜院本家しおういんほんけの当主になるには
 何か幾つかの制約と条件があるようだ

 ちなみに、珠貴の婚約者だった男と両親が
 当主不在を良いことに、居座っているらしい」

 当主が亡くなったコトで、当主の娘と婿という立場のセイで、使用人達が排除できないのを良いことに、だいぶ好き勝手しているらしいコトを教えられ、威知護いちごはコメカミをくりくりする。

 …………つーことは、紫桜院本家しおういんほんけの屋敷に到着したら…………
 …………はき違えたジジババと、元婚約者とやらを叩き出さないとな…………

 …………コトによったら、実力行使もやむなしだな…………
 …………あとは、そのジジババと元婚約者に媚びへつらってるのも排除だ…………

 威知護いちごは、竜治の宣言と自分の了承に固まっている妹達へと振り返って声を掛ける。

「取り敢えず、明日の昼まで猶予あるんだから
 そんな顔すんな、紅葉、楓

 俺の為に、誕生日ケーキとか用意してるんだろ
 明日は学校休んで、午前中にパーティーしようか」

 威知護いちごはの言葉に不服はあれど、あと半日しかなと思いコクコクと頷くのだった。

 その夜、久しぶりに左右に妹達に張り付かれて眠った威知護いちごだった。










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