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0170★なんとか黒系に見えます
しおりを挟むグレンが中で洗髪して戻って来たが、ちょっと微妙な表情だった。
ちゃんと洗い流したあとに、ちゃんと自分で乾かして出て来た。
「おかえりぃ~……うん…なんとか黒色に染まってくれたみたいね
これなら、ちょっとは誤魔化しがきくかもだねぇ~……
とりあえず、パッと見には、本来の色を看破されずに済みそうね
これで、グレンの奴隷堕ち前を知っている者が居ても誤魔化せるかな?」
そう言いながら、リアはリゲン(スーパーブラック)で黒色に染めた髪を掬い取って、しげしげと観察する。
ふむ……確かに…真っ黒にはならなかったみたいね
いや…まぁ…想定内だけどね
あの鮮やかな真紅から、見事なまでに艶やかな黒紅色になっていますよ
一見、艶やかな黒髪だが、良く見ると黒味を帯びた深紅だと気付く。
が、触ってみると、リゲン(スーパーブラック)のセイか、ルリのもふもふ以上に、もの凄く手触りの良いのだ。
「なんか、極上のスパイダーシルクでも触っているような感触ねぇ……ずっと触っていたい感触だわ」
リアがそう言えば、グレンはにっこりと笑って言う。
「何時でもどうぞ。俺は、リアのモノだからね。好きに触って欲しい………本音を言えば、良く撫でられているルリやユナが羨ましかった……ナナだって、リアによく撫でてもらっているし……でも、誇れるような手触りじゃなかったから……撫でてくれなんて言えなかったんだ」
と、本音をスルスルと吐露するグレンに、リアは小首を傾げる。
あらあら……もしかして、グレンてば酔っぱらっちゃったりしている?
いや…お酒なんてとうに抜けているでしょうから………
もしかして、リゲン(スーパーブラック)のセイかしら?
なんせ異世界ネットショッピングで買ったモノだからねぇ………
予想外な影響をもたらすコトもあるのかもしれないわねぇ~
でも、こんな素直なグレン……可愛いじゃないのぉぉ~……
内心で身もだえつつも、リアはさらりと答える。
「そう……それじゃぁ~……たまには撫でさせてね……なんか手放しがたい感触は……クセになりそうねぇ~……じゃなくて、姿見から出てルリと色々と相談しないと」
リアの言葉に、ちょっと撫でられる感触を楽しんでいたグレンもハッとする。
「そうですね……とりあえず、らしい恰好に変えますね」
と、他所いきの口調で喋るグレンに、リアは小首を傾げる。
リアの反応に、グレンは苦笑いして言う。
「ここしばらく、乱雑な口調で喋っていたので、少し直したんですよ。騎士などに問い掛けられた時に、ちゃんとそれらしく話せないと、疑われますからね」
グレンの言葉に、リアはなるほどと納得する。
そして、どこから出したのか、クシを出して、ササッとグレンの長髪を毛先から梳かす。
「グレン、そこのソファーに座ってくれる。髪を三つ編みにしちゃうから、そうすると隠しやすいよ」
リアの言葉に、グレンは素直に従って、ソファーに座る。
グレンが座ると同時に背後に回り、髪の毛を梳いてから、ちゃっちゃと三つ編みにする。
そして、腕輪型アイテムボックスの中から、髪留めを取り出す。
それは、リアが身に付けているモノとはまた違った効力を持つ魔道具だった。
主に、看破などの能力から身を護る為のモノだった。
そういう魔眼と呼ばれる類いを持つ相手に、自分の素性や能力を読み取られないようにする為の魔道具だった。
「うん…これでよしっ……さっ…ルリの待つ馬車の中に戻りましょう」
「はい」
そういう短いやり取りをして、リアとグレンは姿見の中から出るのだった。
その際に、ナナやクイン達も一緒に出たがったが、見知らぬ魔物扱いされて、討伐されたらイヤなので、宥めて姿見の中に留めたリアだった。
お陰で、リアと一緒に出るグレンだけズルイと、ナナに威嚇されるという一幕があった。
それはさておき、姿見の中から出れば、ユナがリアに飛びついて言う。
「リアお姉ちゃん……冒険者じゃない、怖い人達に馬車が取り囲まれているのぉ」
ハッ……確かに、馬車が揺れていないわ…どうやら止まっているようね
馬達の足をゆっくりにしたから、もう少し余裕あると思ったんだけどなぁ
向こうも、私達を視認したコトで、さらにとばして来たってコトかしらねぇ
どうやら、予想より早く、もう向かって来ていた騎士団の御一行様と接触したようだった。
「うん、わかったわ……ほら、ユナもちゃんとフードをかぶってね……私は、ルリと話して来るわ……グレンはどうする? このまま馬車の中に居る?」
御者台に居るルリと交代するのも目立つと思い、そう問い掛ければ、グレン首を振る。
「いや、男の俺が馬車の中でゆったりしているのは不味いだろう。中を無理矢理見られた時に言い訳がつかないだろう。それぐらいなら、今、ルリと堂々と喋って交代したほうが良いと思う」
比較的落ち着いてそう言うグレンに頼もしさを感じながら、リアは頷く。
「なら、私も一緒に御者台に顔を出すわ。この馬車の持ち主は私だもの」
「ああ…だが危なそうだったら、直ぐに引いて欲しい。交渉は、俺がするから……」
そう言いながら、さして広くない馬車の中を移動し、御者台の背後の扉を開く。
「ルリ…どうしたのぉ?」
と、リアはさも呑気に、御者をしているルリに声をかける。
リアが出て来たコトに気付いたルリは、再びどこぞの侍女の擬態で答える。
「申し訳ございません、リア様。こちらの騎士様達が、私達の馬車を足止めされまして……その…馬車の中を見分させろとおっしゃるので……どうしたらよろしいかと……無理をして魔力枯渇で、お倒れになったばかりでしたので遠慮して欲しいと…交渉していたところなのですよ……」
ルリの言葉に、リアは小首を傾げてから頷く。
「そう……それで、何故、私達の馬車を止めて、馬車の中をあらためようとなさったのですか?」
リアは、馬に乗ったまま近寄って来た、身分がありそうな騎士に視線を向けて問い掛ける。
ここは、庶民を装って…って、無理だわね…素で良いかぁ~……
どうせ前世を思い出しちゃった私は、高位貴族風な態度なんて出来ないモノ
何と言ったって、身分も剥奪されて、追放された身ですからねぇ……
出て来たリアが女性とみて、確認に来たらしい騎士は眉をひそめて問い掛ける。
「あぁ……その…まさかと思うが、女性だけで旅をしているのかな? この大街道を通って来たのは何故だい?」
あちゃ~……もしかして、かなりの高位貴族の嫡男か次男辺りのくわせ者みたいね
下っ端のフリして、わざわざこちらに接触して来るなんて、腹黒そうねぇ……
とは言え、私達にはなんの情報もないのよねぇ~……はぁ~……
話し方から、どうも普通の下級貴族ではないと判断したリアは、それでもシレッと答える。
「えっ? 勿論、男性も居るわよ。流石に、女子供だけでの旅は危険だもの……じゃなくって、この大街道ってモルガン国に向かう街道なんでしょ? その先にリドリア国があって、大国ゼフィランス帝国に続いている大街道よねぇ~……えっ…もしかして、間違っていたのかしら? そしたら、何処で間違ったのかしら?」
と、リアは小首を傾げる。
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