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0160★もしかして、大樹の精霊さんでしょうか?

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 意識が一瞬だけフワッとなった後、リアは日陰を提供してくれている大樹を見上げる。

 んぅ~……今、何か聞こえた……いや聴こえたかな? 気がするんだけど………
 誰の声? だったのかなぁ? 悲愴感とかは無いけど………

 リアは小首を傾げる。
 そんなリアの様子に気付いたルリが問いかける。

 「どうしたんだい、リア?」

 ルリの問いかけに、小首を傾げていたリアは、今感じたモノを口にする。

 「う~ん……なんか聴こえたんだよねぇ~……ただ悲痛とか悲愴とかいうモノじゃなかったみたいなんだけど……ちゃんとした言葉として聴こえたわけじゃないんで……誰の声だったのかなぁ~って思ってね……ルリには聴こえなかった?」

 リアの言葉に、ルリは猫耳をピクピクさせながら、聴き取ろうとする。

 「ふむ……アタシには聴こえない声のようだねぇ……一体、なんの声なんだろうねぇ……グレン、ユナ、何か聴こえるかい?」

 ルリの言葉に、グレンもユナも首を振る。

 「いや…何も聴こえないな」

 「うん…聴こえないねぇ……その声の持ち主って…何を言っているのかなぁ?」

 ユナの言葉に、リアはうりうりと小首を傾げるが、声は聴こえなくなっていた。

 「う~ん……残念……もう聴こえなくなっちゃったわ……」

 そう呟いたリアは、フッとテーブルの上を見て、ほぼ食べ物が無くなっているコトを確認する。

 「取り敢えず、朝食は食べ終わったみたいね……ビールが入っていた空き缶(3L)は、ライムに食べさせちゃって良いかな?」

 グレンとルリを見れば、中身が無くなったコトで興味が失せていたので、2人ともに頷く。

 「「ああ、良いよ(ぜ)」」

 2人から廃棄する許可をとったリアは、肩に乗って揺れていたライムに声をかける。

 「ライム、この2つの大きな空き缶(3L)、食べちゃってくれる」

 リアにそう声を掛けられ、ライムは小さな三角の手?をピッと上げて揺れる。

 「ぴっ」

 小さく鳴いて、ライムは身体をびろぉ~んと伸ばして、空き缶(3L)2つを包み込み、シューシューと音を立て、小さな気泡を出しながら溶かし、吸収していく。
 そんなライムを見詰め、リアはこころなごませていた。

 『…ネェ……ネェ……ナツ…カシ……匂イ…スル…………タシ…モ………ッテ……』

 再び、こんどはさっきよりもしっかりと聴こえた声にリアはキョロキョロする。

 「えっと……もしかしなくても、私に呼び掛けているのかな? 懐かしい匂いってなにかなぁ? どんな匂いのコト? 良かったら、側に来て話さない?」

 リアの言葉に反応して、大樹からヒラヒラと青々とした葉を茂らせた小枝が落下してくる。
 その様子に、リアは無意識に受け止めようと手を伸ばす。

 と、その伸ばされた手の上に、ふわりと青々とした葉っぱを付けた小枝が降り立つ。
 リアはその姿を見て、小首を傾げる。

 え~とぉ~……これって…木の精霊さんってコト? あっ……となって言ったっけ?
 ああそうだ…ドライアドだったっけ? いや、ドリアード? もしくは、ドリュアス?
 とにかく、木の精霊さんってコトで良いのかな?

 「えぇ~と…その姿から察するに…貴方は、木の精霊さんなのかな?」

 手の上に舞い降りた小枝は、青々とした葉を茂らせた片手を上げて答える、

 「ウン…ソウ……私……寝テイル間ニ…アノ…わいばーん…ニ……運バレタ…ミタイナノ……コンナ乾イタ場所ジャ…弱ッテ…成長デキズニ…枯レチャウ」

 リアは、木の精霊が、この大樹の精霊ではなく、別の場所から運ばれてきてしまったというコトに気付き、納得する。

 なるほど、この木の精霊さんは、もともとこの大樹の精霊さんじゃないんだ
 生れた場所(親となる大樹)から離れたら、枯れちゃうってコトね
 つーと…私達に、生まれ故郷に運んで欲しいってコトなのかしら?

 「そうなのね……それで、木の精霊さんは、元居た場所に戻りたくて、私に声をかけたってコトなのかな?」

 リアの問いかけに、木の精霊はちょっと考えるようなポーズを獲ってから言う。

 「ウン…最初ハ…ソノツモリダッタケド……貴女カラ…モノ凄ク…懐カシイ匂イガスルノ……ダカラ…貴女ト契約シタイワ……」

 契約を望まれたリアは、黙って成り行きを見守っているルリやグレンへと視線を向ける。

 「どう思う? ルリ、グレン」

 そう問い掛けてから、リアはユナへも視線を向けて聞く。

 ここは神獣のユナにも聞いた方が分よねぇ~……
 身体と魂を交換されていたルリとグレンが戻ったのも、ユナの言葉だったしね
 それに、三人寄れば文殊の知恵っていうモノね

 「ユナ…これは、契約した方がいいのかなぁ?」

 ルリとグレンが即答を避けて無回答なところに、リアに話しをふられたユナはニコッと笑って頷く。

 「うん、契約したら、きっと良いコトあるよ……ユナは契約するの賛成」

 と、ユナがOKを出したので、リアはあっさりと頷き、ルリとグレンへと視線を向ける。 勿論、神獣のユナの勘に、ルリとグレンも頷く。

 「ふふふふ………みんな賛成してくれたから、契約しましょう……私の名前はリアよ」

 リアからの契約承諾に、木の精霊は嬉しそうにピョンピョンと跳ねて喜ぶ。

 「ワタシは……ドリアード…ノ……カレン……ヨロシク…マスター」

 嬉々として自分の名前を口にしたカレンと、リアは感覚的に繋がるのを感じた。
 途端に、小枝に葉が生い茂っている姿のカレンが、愛らしい羽根を持つ妖精のような姿へと変化していた。

 「うわぁ~…すごぉ~い……契約したら…進化したぁ~……長老が話していた……聖女と契約した子の話しと一緒だぁ~……わぁ~い……嬉しいぃぃ~……マスター…大好きっ」

 嬉々としているカレンに、ルリとグレンは生温い視線を向けつつも、何も言わずに肩を竦める。

 「良かったねぇ~……カレンちゃん……あとね……リアお姉ちゃんはマスターって言葉好きじゃないから……リアって呼んであげた方が良いよぉ~……ユナはリアお姉ちゃんって呼んでいるけどね」

 ユナの言葉に大きく頷いて、カレンはリアに向かって言う。

 「これからよろしく…リアお姉ちゃん」

 その言葉で、カレンからはリアお姉ちゃん呼びが決定したのだった。
 リアはカレンに笑いかけながらも、内心では大きく首を傾げるのだった。

 いいのかなぁ? なんかなし崩しに、ドリアードのカレンが仲間になっちゃったけど?
 カレンが懐かしい匂いって言ったのって、世界種の種とか葉っぱのコトじゃないかしらね
 落ち着いたら、カレンに世界樹の種を見てもらって、ちゃんと発芽するのかを確認してもらいたいわ









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