145 / 173
0144★その頃のアゼリア王国 どうやら面倒な前世持ちが居たようです
しおりを挟む卒業パーティーの会場では、大人子供関係なく、多く者達が体調不良に陥り、騒然となっていた。
リアは、自分が消えてほんの一時間かそこらで、瘴気や穢れがあっという間に濃くなって行く現象にびっくりしていた。
えっとぉ~…王妃様や王様や大神官長の視線で、その思いとかは知っていたけどねぇ
もしかしなくても、私っていう存在は凄かったってコト?
何時でも不出来だ不細工だとこき下ろされて、何かと言うとイジメられていたけど………
自分が理不尽に虐げられていたコトを理解しても、低くなり切った自己評価はそのままだったりするリアは、戸惑いを覚えていた。
いや、それより、エイダン王太子って、ちゃんと訓練とかしていなかったのねぇ……やっぱり
あの程度の瘴気や穢れが纏わり付いただけで、あのていたらくはないんじゃない、流石に
王様の唯ひとりの後継者なんだから、この講堂の中くらいぱっぱと浄化しちゃえば良いのにさぁ………
王妃様が甘やかして…浄化の為の鍛錬をサボらせていたから、いざと言う時の今が耐えられないんだよね
全部、何もかも、私のセイにして、私だけに浄化を押し付けたから、そうなるんだよね
じゃなくって、この後どうなるの?
誰も、この時点で私の代わりに浄化をする人が居ないんだよね
契約の空白って、流石に不味くない?
その身をもって浄化する契約で、今の地域に住むコトを許されたんだよね…確か
ああ、会場の異変に気付いたエイダン王太子の護衛騎士達が大慌てしている
いや、でも、当然かも知れないわねぇ……鍛錬をサボりまくっていたんだし…
護衛騎士は、エイダン王太子の鍛錬サボりを、見て見ぬふりしていたんだからさ
そこに、突如、義務の履行を背負わされたんだから、さぞや苦しいでしょうねぇ
私は、ずっとずぅぅぅぅ~っと苦しかったんだから、それは当然の報いってものよね
勿論、エイダン王太子に仕えている護衛騎士には、そういうのをちゃんと王様に報告する義務があるのにしなかったのよねぇ
いくら王妃様に言われたからって、王様に黙っていたんだから、エイダン王太子と同罪だものねぇ
こんな場面を、王様が見たら、きっと怒るでしょうねぇ~……
この程度の瘴気や穢れを浄化することすら出来ないのかって……きっと嘆くわよねぇ
なんてリアが内心で思っているところに、ちょっとどころではない微妙な呟きが聞こえた。
『えっ…どういうことぉ~? こんなシーン…無かったはずよねぇ~…えっ…なんでぇ~…これから、エイダン王太子とキャッキャウフフになるはずなのにぃ~……中央でダンスをみんなに披露した後、甘ぁ~いセリフと共に、私の王太子妃になって欲しいって言われるはずなのに………なんでぇ? えぇ~…なんでぇ? そのエイダン王太子が、顔色を悪くして倒れちゃっているのよ……っていうか、会場のあちこちで倒れている人がいるじゃないのぉ………えっ……もしかして、毒でも盛られたのぉ? そんなシーンあったぁ?』
と、いう、前世を思い出したリアには聞き捨てならないセリフを小さな声でブツブツと呟いているのを見て、リアは頭痛を覚えた。
うわぁ~……やっぱりいたのね…それも脳内フローラちゃんタイプだわ
って、そういえば、彼女ってば、名前もフローラだったわね………じゃなくて
この世界にも、前世の持ちの転生者か、異世界転移者が、過去に居たかもって思ったのは正解かも知れないわね
もしかして、私が想像したより、記憶持ちの転生者とかって多いのかも………
いや、それを考慮してもねぇ~…今回居たのは、典型的なお花畑ちゃんだったのねぇ
そう、周りの迷惑を顧みず……私がヒロイン…すべては私の為にあるのよってタイプ
それも、こんなに身近に居たのねぇ………
今更だけど、追放されて棄てられる頃まで、前世を思い出してなくて良かったわ
もし思い出して、色々なコトを回避しようとしていたら、もっと酷い目にあっていたかもしれないものね
そういう意味じゃ、前世の記憶を取り戻したのは、あのタイミングが最良だったかもしれないわね
そうじゃなければ、もっともっと幼少期、母親や祖母が、襲撃で殺される前に思い出したかったわね
それだったら、回避行動で、この後の色々なつらいコトを避けられたかもしれないものね
もっとも、ぜぇ~んぶたらればであって、既に終わってしまったコトだけどね
なんにしても、今の私は、別の場所で、充分に幸せを謳歌していますもの
ちょっと恋愛相手としてはハードル高いけど、グレンは私のモノだしね
それより、こっちは大変よねぇ~…これから、浄化の為の生贄探しだもの
勿論、フローラさんは、エイダン王太子を誑かした者として断罪されるでしょうねぇ
何といっても、王妃様がもの凄く正解な邪推をしてましたものね
乙女ゲームのヒロインのつもりで行動したフローラさんが、童話にありがちな、その後は幸せになりました的な終わりなんてどだい無理なんですよね
だって、この世界は、乙女ゲームによく似た異世界であって、現実の世界なのだから
そう、そこにいるひとりひとりが、ちゃんと自分の意思と魂を持つ現実の世界
そんな現実の世界で、好き勝手したら、その報いというモノは返って来るのは当然の帰結なのだから、しょうがないよね
それが、フローラさんが選んだ道なんだもの
とはいえ、この混乱、どうなっちゃうのかしら?
そんなところに、講堂の扉が大きく開かれて、ガウェイ王が入って来る姿が見えたコトで、リアは何とも言えない気持ちになる。
自分を生贄とするコトを認めたガウェイ王だけど、時に優しい声を掛け、自分の娘として扱ってもくれた相手に、リアは首を振る。
「この騒ぎの原因はなんだ? セシリア公爵令嬢は何処におる? 我が国の貴き巫女姫は? その身で一心に祈って、この国の浄化をしてくれていたセシリア公爵令嬢は何処だ?」
そう言い放ちながら、ガウェイ王は侍従のセバスに身体を支えられながらも、自分の足で卒業パーティーが催されている講堂の中へと歩(あゆ)みを進める。
勿論、ガウェイ王を護るように、両脇にはズラリと護衛騎士が立ち並び、どんな時にも対応できるようにして、守っていた。
そして、侍従のセバスに支えられながらも毅然と歩くガウェイ王の後を、大神官長と側近のベルン神官が随従していた。
それに少し遅れて、護衛騎士に抱きかかえられた顔色の悪い王妃と、それにヨロヨロと付き従う侍女のデイジーの姿があった。
あらあら……王妃様の威を借りて、私を何かと虐げていた侍女のデイジーもふらふらね
まぁ…王妃様付きになれるのだから、薄くても王家の血を引いているのかもしれないわねぇ……随分とつらそうだこと
ふぅ~……自分で思っていたより、だいぶ鬱憤(うっぷん)が溜まっていたみたいねぇ
リアは、卒業パーティーの会場に入って来た王様達の姿を見て、そんな感想を持つだけだった。
所詮は、もう他人事なので、リアはただただ傍観者として、事態を鑑賞するだけだった。
18
お気に入りに追加
687
あなたにおすすめの小説
婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた
cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。
お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。
婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。
過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。
ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。
婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。
明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。
「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。
そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。
茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。
幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。
「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?!
★↑例の如く恐ろしく省略してます。
★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。
★コメントの返信は遅いです。
★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません
あなたが幸せならそれでいいのです
風見ゆうみ
恋愛
流行り病にかかった夫の病気を治すには『神聖な森』と呼ばれている場所にしか生えていない薬草が必要でした。
薬草を採ってきたことで夫の病気は治り、今まで通りの生活に戻るはずだったのに、夫に密かに思いを寄せていた私の親友が、自分が採ってきたと嘘をつき、夫もそれを信じてしまったのです。
わたしが採ってきたと訴えても、親友が採ってきたと周りは口を揃えるため、夫はわたしではなく、親友の意見を信じてしまう。
離婚を言い渡され、追い出された私は、実家に帰ることもできず、住み込みで働ける場所を探すことにしました。
職業斡旋所に行ったわたしは、辺境伯家のメイドを募集している張り紙を見つけ、面接後、そこで働けることに。
社交場に姿を現さないため『熊のような大男』(実物は違いました!)と噂されていた辺境伯の家での暮らしになれてきた頃、元夫の病気が再発して――
※独特の世界観であり設定はゆるめです。
●婚約破棄ですって…!!でしたら、私に下さい!!●
雫
恋愛
セイラ・エトワール辺境伯令嬢はつい先日16歳を迎えた。
本日デビュタントのものだけが着ることを許された純白のドレスに身を包みながらも、セイラはどこか浮かない顔をしている。
そんなセイラがなぜ浮かない表情を浮かべていたのか……いないのです。
そう.…見た目は麗しい淑女であり、引く手数多であろうと思われる彼女だが実際は恋愛経験ゼロ!!
それならばと両親が躍起になって婚約者を探すが、それでも見つからないのだ…!!
このままでは一生独身を貫くことになるのでは!?と危惧した父親が今回のデビュタントにて良い縁を結んでこられなければ、セイラを領地の修道院に入れると…!!
のんびりスローライフを送りたいセイラはそれでも良いかもの楽観視するが、娘の現状を嘆いた母が泣きながらセイラを説得するため、渋々王宮へとやってきたのだ。
これからどうするか…と料理をつまんでいると、会場の奥から甲高い大きな声が響き渡ってきた。
遠くて話の内容がよく聞き取れなかったけど…王女様と見覚えのない金髪の優男が寄り添っている。
その2人の前には顔は見えないが黒髪の青年が絶望した空気を背負いうずくまっているのが見えた。
えっ!!いま婚約破棄とおっしゃいました!?
でしたら、私のところに連れて帰っても問題ないのでは!?
その青年、私に下さい!!
全て声に出ていたのか王女様と金髪と黒髪の青年は驚いた様子でセイラを見ていた。
そんな何を言い出すか分からない破茶滅茶な行動の辺境伯令嬢が巻き起こすドタバタラブストーリー!!
茶番には付き合っていられません
わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。
婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。
これではまるで私の方が邪魔者だ。
苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。
どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。
彼が何をしたいのかさっぱり分からない。
もうこんな茶番に付き合っていられない。
そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。
あなたがわたしを本気で愛せない理由は知っていましたが、まさかここまでとは思っていませんでした。
ふまさ
恋愛
「……き、きみのこと、嫌いになったわけじゃないんだ」
オーブリーが申し訳なさそうに切り出すと、待ってましたと言わんばかりに、マルヴィナが言葉を繋ぎはじめた。
「オーブリー様は、決してミラベル様を嫌っているわけではありません。それだけは、誤解なきよう」
ミラベルが、当然のように頭に大量の疑問符を浮かべる。けれど、ミラベルが待ったをかける暇を与えず、オーブリーが勢いのまま、続ける。
「そう、そうなんだ。だから、きみとの婚約を解消する気はないし、結婚する意思は変わらない。ただ、その……」
「……婚約を解消? なにを言っているの?」
「いや、だから。婚約を解消する気はなくて……っ」
オーブリーは一呼吸置いてから、意を決したように、マルヴィナの肩を抱き寄せた。
「子爵令嬢のマルヴィナ嬢を、あ、愛人としてぼくの傍に置くことを許してほしい」
ミラベルが愕然としたように、目を見開く。なんの冗談。口にしたいのに、声が出なかった。
所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!
ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。
幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。
婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。
王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。
しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。
貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。
遠回しに二人を注意するも‥
「所詮あなたは他人だもの!」
「部外者がしゃしゃりでるな!」
十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。
「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」
関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが…
一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。
なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…
前世で処刑された聖女、今は黒薬師と呼ばれています
矢野りと
恋愛
旧題:前世で処刑された聖女はひっそりと生きていくと決めました〜今世では黒き薬師と呼ばれています〜
――『偽聖女を処刑しろっ!』
民衆がそう叫ぶなか、私の目の前で大切な人達の命が奪われていく。必死で神に祈ったけれど奇跡は起きなかった。……聖女ではない私は無力だった。
何がいけなかったのだろうか。ただ困っている人達を救いたい一心だっただけなのに……。
人々の歓声に包まれながら私は処刑された。
そして、私は前世の記憶を持ったまま、親の顔も知らない孤児として生まれ変わった。周囲から見れば恵まれているとは言い難いその境遇に私はほっとした。大切なものを持つことがなによりも怖かったから。
――持たなければ、失うこともない。
だから森の奥深くでひっそりと暮らしていたのに、ある日二人の騎士が訪ねてきて……。
『黒き薬師と呼ばれている薬師はあなたでしょうか?』
基本はほのぼのですが、シリアスと切なさありのお話です。
※この作品の設定は架空のものです。
※一話目だけ残酷な描写がありますので苦手な方はご自衛くださいませ。
※感想欄のネタバレ配慮はありません(._.)
いらないと言ったのはあなたの方なのに
水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。
セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。
エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。
ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。
しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。
◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬
◇いいね、エールありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる