上 下
131 / 173

0130★シャドウハウンドのリーダーとサブに名前を付けました

しおりを挟む

 馬車の中に戻ったルリは、フード付きマントを脱ぎながら言う。

 「リアが色々と見て歩きたいって言うんなら、アタシが護衛の従魔になって、ぴったりと付いて歩くコトにするよ…魔獣の姿の方が攻撃力が高いからね…ユナは、馬車の中に居て、この馬車を守って居てくれるかい……ここには、レオやグリがいるからね…子ウクダ達だって危ないよ……まして、奴隷商までいたからね……ああいう輩は、平気で人のモノを盗むコトを恥じとも思わないからね……まぁ…ナナは強いから、出して置いても平気だろうけどね」

 その間に、リアは姿見を出して、リーダーとサブのシャドウハウンドを呼び出す。
 ちなみに、リアを主と一方的にでも決めたコトで、全頭、伸縮自在になっていたりする。

 気が抜けていると、元の大きさになってしまうが、リアに指示されれば、前世の超大型犬のボルゾイやグレートデンほどの大きさになるコトが出来たりする。
 ついでに言えば、初めて姿見に入れる時に、リアがそのぐらいの大きさの方が良いと言ったコトを覚えていて、馬車の中へと飛び乗る時には、コンパクトな大きさになるクセが既に付いていた。

 そして今も、一度姿見の中へと入ったので、超大型犬サイズでリアの前にお座りしていたりする。
 そんな二頭に、リアは話しかける。

 「え~と…いやじゃなければ…名前を付けても良いかな? あと、もふもふしているから、確かめるの大変だから聞くけど、リーダーは雄なの? 雌なの? 雄なら右手を上げて、雌なら左手を上げてくれる?」

 リアの問いかけに、シャドウハウンドのリーダーは左手を上げる。

 「そう、女の子なのね…ならクインって呼ぶけど良いかしら? 女王って意味もあるのよ」

 そう言えば、クインがポワッと仄かに光り輝いて、身体をブルブルっと嬉し気に震わせてて、リアを見て言う。

 『私の名前は…クイン…よろしく、マスター…』

 名前を付けたコトで、リアの正式な従魔となり、俗に言うパスが繋がったコトで、種族的な上位互換に進化したらしく、滑らかな声が脳に響く。
 目の前で進化したコトで、念話の能力を取得したらしく、しっとりとした大人の女性らしい声音で、リアに話しかけて来る。

 えっと…もしかしなくても、私が名前を付けたコトで進化したってこと?
 いや…そう言えば、ラノベあるあるにそういうの有ったような気がする
 何にしても、意思疎通が出来るのはもの凄く助かるわ

 「よろしく、クイン」

 そう言って頭を撫でてから、リアはハッとする。

 えっ? 額に小さな角? そんなモノ無かったわよねぇ?
 もしかして、進化した証拠ってヤツかしらねぇ?
 確か、角って力の象徴だったりするのよねぇ~…

 うふふふ………もしかしたら、クインは魔法が使えるようになるかもだわ
 私とパスが繋がったコトで、新たな能力を得ているかもしれないわね
 じゃなくて、さっさともう一頭のサブにも名前を付けないとね

 そう思い、リアはシャドウハウンドのサブに向き直り、問い掛ける。

 「それじゃ、サブのアナタはどっちなのかしら?」

 リアの問いかけに、サブも左手を持ち上げた。

 『マスター…この娘は…腹違いの私の妹です…母親の群れから追い出されたので、私の群れに入れたのです…能力が高いのが気に食わなかったようで………』

 あらあら……シャドウハウンドにも、そういうのがあるのね
 いや、リーダーは守られる立場じゃないから、そういうのが顕著なのかもしれないわね
 自然界だから、強いモノが群れのリーダーになるのね

 そういう世界だもの、自分より優れたモノは目ざわりになるのね…それが自分の娘でも
 ああ…でも、人でもいるわね…自分の娘が自分より優れているのが気に入らないって人
 ふふふふ…それを考えるとクインは優しいのねぇ~…それに優れたリーダーだわ

 「そう…なら…貴女は、綺麗な透き通る青い瞳だから、アクアって呼ぶけど良いかしら?」

 リアに名前をもらうと同時に、アクアの瞳に薄っすらと銀色が帯びる。

 『私はアクア…マスター…嬉しいっっ~……アクアは、マスターとずっと一緒に居たいっ』

 落ち着いたクインの声よりも高めで、若いというコトがわかる張りのある声での言葉に、リアはふんわりと笑って言う。

 「うん、ありがとうアクア、これからよろしくね」

 『はい、マスター』

 胸張りのアクアの頭を、リアは優しく撫でて、力の象徴が現われているかを確認する。

 ふふふふ………やっぱり、可愛い角がちゃんと存在主張しているわね
 この角は、能力の成長と共に、大きくなるのかしら?
 それとも、このままなのかはわからないけれど、この子も進化したのね

 リアはアクアの頭に角が生えたコトを確認し終え手から、猫型の魔獣に姿を変えたルリに向かって言う。

 「ねぇルリ…クインとアクアが居るんだから、人型でも良いんじゃない?」

 リアの言葉に、ルリは首を振る。

 「それだと、この馬車にはユナ…小さな女の子しか居ないって思われるからね…だから、一度人型でわざと外に出たんだよ……人数の少ない馬車は狙われるからね」

 魔獣型でも容易く人語を操るルリの言葉に、リアはなるほどと頷く。

 「ああ、そういう意味だったのね……なら、しょうがないか……一応、害意あるモノは入れない結界を張ってあるけど、何があるかわからないものね」

 そんな会話をしている間に、ナナは勝手に姿見の中から出て来て、自分も一緒に回るとアピールする。
 ついでに、馬車中でうたたねしていた自分の子供達とグリとレオの首を銜えて、ヒョイヒョイとたった今出て来た姿見へと放り込む。

 ナナは出入りが自由だが、子供達やシャドウハウンド達は、リアの任意が無いと出入りできないのだ。
 それを知っているナナは、ついでとばかりに、ユナまでササッと姿見へと放り込む。

 まさか自分も放り込まれると思って無かったユナは、姿見の中からナナに恨めし気な視線を送る。
 が、とうのナナは、意気揚々と鼻高々で楽し気に踊っていた。

 その姿から、どうやら、大事なモノは全部ひとまとめで、リアが持って歩けば良いと言っているらしいコトに気付き、思わず苦笑いをする。

 「そうね、結界も張ってあるし……馬車はおいて置くとしましょうか……」

 軍馬は性格がアレなので、勝手に連れていけないコトがわかっているので、リアも肩を竦めて声を掛ける。

 「それじゃ、グレンが待っているから外に出ようか? ルリ、大丈夫?」

 「ああ、大丈夫だよ…買い物の支払いはグレンにさせるんだよ…リアは絶対に商人達と直接口を聞いちゃいけないよ…わかったね」

 ルリの小言のような注意に、リアは肩を竦めて答える。

 「はぁ~い…それじゃ、クイン、アクア、行こうか」

 『『はい、マスター』』

 

 








しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた

cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。 お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。 婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。 過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。 ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。 婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。 明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。 「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。 そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。 茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。 幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。 「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?! ★↑例の如く恐ろしく省略してます。 ★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。 ★コメントの返信は遅いです。 ★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。 ※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません

あなたが幸せならそれでいいのです

風見ゆうみ
恋愛
流行り病にかかった夫の病気を治すには『神聖な森』と呼ばれている場所にしか生えていない薬草が必要でした。 薬草を採ってきたことで夫の病気は治り、今まで通りの生活に戻るはずだったのに、夫に密かに思いを寄せていた私の親友が、自分が採ってきたと嘘をつき、夫もそれを信じてしまったのです。 わたしが採ってきたと訴えても、親友が採ってきたと周りは口を揃えるため、夫はわたしではなく、親友の意見を信じてしまう。 離婚を言い渡され、追い出された私は、実家に帰ることもできず、住み込みで働ける場所を探すことにしました。 職業斡旋所に行ったわたしは、辺境伯家のメイドを募集している張り紙を見つけ、面接後、そこで働けることに。 社交場に姿を現さないため『熊のような大男』(実物は違いました!)と噂されていた辺境伯の家での暮らしになれてきた頃、元夫の病気が再発して―― ※独特の世界観であり設定はゆるめです。

●婚約破棄ですって…!!でしたら、私に下さい!!●

恋愛
セイラ・エトワール辺境伯令嬢はつい先日16歳を迎えた。   本日デビュタントのものだけが着ることを許された純白のドレスに身を包みながらも、セイラはどこか浮かない顔をしている。 そんなセイラがなぜ浮かない表情を浮かべていたのか……いないのです。 そう.…見た目は麗しい淑女であり、引く手数多であろうと思われる彼女だが実際は恋愛経験ゼロ!! それならばと両親が躍起になって婚約者を探すが、それでも見つからないのだ…!! このままでは一生独身を貫くことになるのでは!?と危惧した父親が今回のデビュタントにて良い縁を結んでこられなければ、セイラを領地の修道院に入れると…!! のんびりスローライフを送りたいセイラはそれでも良いかもの楽観視するが、娘の現状を嘆いた母が泣きながらセイラを説得するため、渋々王宮へとやってきたのだ。 これからどうするか…と料理をつまんでいると、会場の奥から甲高い大きな声が響き渡ってきた。 遠くて話の内容がよく聞き取れなかったけど…王女様と見覚えのない金髪の優男が寄り添っている。 その2人の前には顔は見えないが黒髪の青年が絶望した空気を背負いうずくまっているのが見えた。 えっ!!いま婚約破棄とおっしゃいました!? でしたら、私のところに連れて帰っても問題ないのでは!? その青年、私に下さい!! 全て声に出ていたのか王女様と金髪と黒髪の青年は驚いた様子でセイラを見ていた。 そんな何を言い出すか分からない破茶滅茶な行動の辺境伯令嬢が巻き起こすドタバタラブストーリー!!

茶番には付き合っていられません

わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。 婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。 これではまるで私の方が邪魔者だ。 苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。 どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。 彼が何をしたいのかさっぱり分からない。 もうこんな茶番に付き合っていられない。 そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。

あなたがわたしを本気で愛せない理由は知っていましたが、まさかここまでとは思っていませんでした。

ふまさ
恋愛
「……き、きみのこと、嫌いになったわけじゃないんだ」  オーブリーが申し訳なさそうに切り出すと、待ってましたと言わんばかりに、マルヴィナが言葉を繋ぎはじめた。 「オーブリー様は、決してミラベル様を嫌っているわけではありません。それだけは、誤解なきよう」  ミラベルが、当然のように頭に大量の疑問符を浮かべる。けれど、ミラベルが待ったをかける暇を与えず、オーブリーが勢いのまま、続ける。 「そう、そうなんだ。だから、きみとの婚約を解消する気はないし、結婚する意思は変わらない。ただ、その……」 「……婚約を解消? なにを言っているの?」 「いや、だから。婚約を解消する気はなくて……っ」  オーブリーは一呼吸置いてから、意を決したように、マルヴィナの肩を抱き寄せた。 「子爵令嬢のマルヴィナ嬢を、あ、愛人としてぼくの傍に置くことを許してほしい」  ミラベルが愕然としたように、目を見開く。なんの冗談。口にしたいのに、声が出なかった。

所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!

ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。 幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。 婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。 王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。 しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。 貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。 遠回しに二人を注意するも‥ 「所詮あなたは他人だもの!」 「部外者がしゃしゃりでるな!」 十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。 「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」 関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが… 一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。 なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…

前世で処刑された聖女、今は黒薬師と呼ばれています

矢野りと
恋愛
旧題:前世で処刑された聖女はひっそりと生きていくと決めました〜今世では黒き薬師と呼ばれています〜 ――『偽聖女を処刑しろっ!』 民衆がそう叫ぶなか、私の目の前で大切な人達の命が奪われていく。必死で神に祈ったけれど奇跡は起きなかった。……聖女ではない私は無力だった。 何がいけなかったのだろうか。ただ困っている人達を救いたい一心だっただけなのに……。 人々の歓声に包まれながら私は処刑された。 そして、私は前世の記憶を持ったまま、親の顔も知らない孤児として生まれ変わった。周囲から見れば恵まれているとは言い難いその境遇に私はほっとした。大切なものを持つことがなによりも怖かったから。 ――持たなければ、失うこともない。 だから森の奥深くでひっそりと暮らしていたのに、ある日二人の騎士が訪ねてきて……。 『黒き薬師と呼ばれている薬師はあなたでしょうか?』 基本はほのぼのですが、シリアスと切なさありのお話です。 ※この作品の設定は架空のものです。 ※一話目だけ残酷な描写がありますので苦手な方はご自衛くださいませ。 ※感想欄のネタバレ配慮はありません(._.)

いらないと言ったのはあなたの方なのに

水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。 セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。 エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。 ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。 しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。 ◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬 ◇いいね、エールありがとうございます!

処理中です...