129 / 173
0128★グレンが二日酔いになってました
しおりを挟む「リアお姉ちゃん…朝だよぉ~……」
可愛いユナの声に、リアは今まで観て居たモノを思い出して、ちょっと微妙な表情になってしまう。
はぁ~…今更よねぇ~…いや…でも大衆娯楽的には、アレが王妃様のざまぁなのかもね
きっと、暇を持て余していた時空神様の娯楽になってくれたコトでしょうね
つーか…時系列的に、あれからほんのちょびっとしか進んでないんですけどぉ……
これは、もしかして捧げ物が多かったコトに対する、ご褒美ってコトかしらねぇ?
とは言え、何時でも盛大には出来ないから、また何処か落ち着けるところでかな
今回は、あのもの凄い集団を蹴散らして、逃げきったコトに対するお祝いで、豪勢にしただけだもの
リアは、寝落ちする前の、大量のサンドウルフの群れを充分引き離したコトで、苦難をまぬがれてハイになっていたコトを思い出して苦笑いする。
そして、リアは自分を起こしてくれたユナにニッコリと笑って答える。
「おはよう、ユナ…その…もうルリやグレンは起きているのかしら?」
リアの問いに、ユナはニコニコしながら答える。
「ルリお姉ちゃんはまだ寝ているよ…ほら…あそこで……」
と、指さされた先では、本体を最小サイズにして、レオやグリ、子ウクダ三頭と一緒に丸まって眠って居た。
「あらあら……ルリが珍しいわねぇ……やっと、安心して眠れるようになったのかしらね」
ふふふふ………お腹に赤ちゃんが何頭もいるんだから、ああなって当然ね
今日は、大街道を進むだけの予定だから、ゆっくり寝ていてもらった方が良いわね
そう言えば、グレンてば、キンキンに冷えたエールを何杯も飲んでいたけど平気だったのかしら?
自分が寝落ちする前、まだ冷やしたエールを片手にソーセージやピザを食べていたグレンを思い出して、ユナに聞く。
「ルリがああなっているとなると……グレンは大丈夫だったのかしら?」
素朴な疑問という感じで小首を傾げるリアに、ユナはクスクスと笑いながら言いつける。
「グレンお兄ちゃんってば、蒼い顔して…青息吐息? っていうのかな? それでも、軍馬とシャドウハウンド達の様子を確認していたよぉ~……」
面白いモノを見たという感じで言うユナに、リアは微苦笑を浮かべる。
あははは………いや…そうなるよねぇ…もの凄く呑んでいたからねぇ………
あれ? 二日酔い用の薬とか無かったっけ? 買い込んでなかったのかな?
まぁ無いなら、私が解毒すれば良いかな……二日酔いも解毒で良いんだよね
そう言えば…この世界での解毒の魔法ってどれなら良いのかしら?
『デトックス』『アンチドート』『ポイゾナ』『キアリー』他にもあったわよねぇ
治癒で『ヒール』を使っているんだから『デトックス』で良いのかしらね?
リアはラノベ知識を思い出しつつ、ユナと一緒に馬車から降りる。
と、蒼い顔で軍馬達の足回りを確認しているグレンが居た。
シャドウハウンド達はぽっこりお腹で、思い思いに馬車に寄り添うようにして眠って居た。
ただし、その体躯が巨大(一頭の大きさが最小でサラブレット並、リーダーはばん馬並)なだけに、足の踏み場がない状態だったりする。
勿論、軍馬達もちょっと迷惑そうだった。
そんな蒼い顔で脂汗を浮かべながらフラフラしているグレンを見て、リアはコキュッと喉を鳴らす。
あらヤダ…蒼い顔しているグレンってば…なんか艶っぽくありません……じゃない
確か二日酔いの原因て、お酒のアルコールが分解されたアセトアルデヒドだったよねぇ
ソレも毒と同じだから、解毒の魔法を掛けて上げなきゃ
「グレン…おはよう…なんかつらそうね……はい…『デトックス』」
軽い感じで、グレンが二日酔いを気にやまないように、体内を浄化し毒物を排出、又は、消去する解毒魔法を掛ける。
と、グレンの全身が淡く光り、蒼褪めていた顔色が通常に戻り、目を白黒させていた。
「えっ…リア…っ………えっ? えっ? うそっ…頭痛も吐き気も目眩も、全部消えている」
びっくりしているグレンに、リアの方がびっくりする。
えっ? もしかして、解毒の魔法って存在していないの?
いや、大神官長様は、解毒の魔法使って居たわよね…ただ呪文は全然違うけど
この世界にも、私以前に転生者とかいたような痕跡はあるんだけど…もしかして、無いの?
ジャガイモに良く似た、ジャガジャガなんてモノもあるし………
いや、でも…ソーセージは存在していなかったわねぇ
まぁ…それもグレンに言わせると宗教的なモノ? で、禁忌扱いのようだったみたいだけど
突然二日酔いの苦しみから解放されてびっくりしているグレンに、リアは近寄りながら言葉を掛ける。
「大丈夫? 無理はしなくて良いのに………一応解毒魔法掛けたから、もう苦しさは無いと思うんだけど…どうかな?」
リアの問いかけに、グレンはキラキラした瞳で振り返って言う。
「凄いぞ、リア…二日酔いのツライものが全部、一瞬で消えたぞ…解毒魔法で治るモノだったんだな」
その言葉に、リアは前世のラノベ知識がこちらの世界に無い場合もあるコトを改めて実感する。
ラノベあるあるチートをした人、過去に居なかったのかしら?
いや…でも…前世の世界に有ったモノと類似したモノ、結構あるわよねぇ
王宮や学院でも、結構、前世で見知ったモノを使っていたもの………
とは言え…追放前の記憶…結構どころじゃなく、おぼろげであやしいのよねぇ
追放されて、まだ二週間も経って無い…せいぜいが十日を越えた程度だけど
たぶんに、浄化の為の魔道具のセイなんでしょうねぇ
追放された時は、もう呼吸も苦しいくらいだったからなぁ~…何を食べても、味がしなかったし
あの頃は、思考力が低下なんてモンじゃなかったもの…惰性で仕事(押し付けられた)をしていただけだし
婚約破棄に身分剥奪に、国外追放って言われて、魔道具を外された時…呆然としたわ
もうなにが現実で、どれが夢かわからないほど、おかしくなっていたからねぇ
正気になったのって、ひとり馬車の荷台でガタゴトと揺すられていた頃だし
魔道具を正式な手続き無しにむしり取ってくれたから、気絶しちゃったのよねぇ
だから、あの後に何が起こったか、この前観れて良かったなぁ~…って思ったっけ
ほぉ~んと、ろくでもない魔道具ばかりだったわよねぇ
自由意志や思考を奪っていたサークレットに、浄化を強制する首飾りなんて、最低
なによりゾッとしたのは、エイダン王太子を恋焦がれるようになる耳飾りね
あんな脳内お花畑のボンクラに、身を粉にして一生懸命に認めてもらおうと必死になって居たなんて……おおイヤだ
両手首にも、両二の腕にも、瘴気や澱みを集める魔道具を着けられていたし
腰にだっていくつもの飾り帯に似せた、浄化を強要する魔道具を嵌められていたし
そう言えば、両足首に嵌められていたモノも外されていたわねぇ
指輪なんて、ジャラジャラと見た目からして趣味を疑うほど身に付けさせられていたのよねぇ………
あれら全部、そういう為の魔道具だっていうのにねぇ~……くすくす
もしかしたら、私から奪ったあと、あのエイダン王太子の腕に縋りついていた彼女が嬉々として身に付けているかもしれないわねぇ
悍ましい魔道具だって知らなければ、かなり高価なアクセサリーだものね
浄化の器となる儀式を行わなければ、まぁ…実害は無いと思うけど…私の知ったこっちゃないしね
それに、なにかで正気に戻って、仮に私が逃げても、追跡できるようにって、イアーカフまで着けられていたのよねぇ~……
ほんと、今更ながらに、エイダン王太子がお花畑で良かったわぁ~……
お陰で、私は自由の身になって、好きになった男性(ひと)と可愛いモフモフ達に囲まれて幸せよ……じゃなくて
「ねぇ…グレン…素朴な質問だけど、二日酔いって、魔法で治したりしないの?」
リアの問いかけに、グレンは肩を竦めて苦笑いしながら言う。
「無い…正確には、無かったな……治療師に頼んでも、少し軽減するだけだったし、薬師が出してくれる薬は時間がかかった……こんな簡単に、綺麗さっぱりなんて初めてだよ…お陰で、気分爽快だよ」
18
お気に入りに追加
689
あなたにおすすめの小説
称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
転生した愛し子は幸せを知る
ひつ
ファンタジー
宮月 華(みやつき はな) は死んだ。華は死に間際に「誰でもいいから私を愛して欲しかったな…」と願った。
次の瞬間、華は白い空間に!!すると、目の前に男の人(?)が現れ、「新たな世界で愛される幸せを知って欲しい!」と新たな名を貰い、過保護な神(パパ)にスキルやアイテムを貰って旅立つことに!
転生した女の子が周りから愛され、幸せになるお話です。
結構ご都合主義です。作者は語彙力ないです。
第13回ファンタジー大賞 176位
第14回ファンタジー大賞 76位
第15回ファンタジー大賞 70位
ありがとうございます(●´ω`●)
転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~
志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。
けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。
そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。
‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。
「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる