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0085★リアは無自覚でマイペース

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 グレンが血抜きして皮を剥ぎ、内臓を抜いてから手渡されたモノを受け取って、セシリアはマジマジと、丸のままの飛びウサギを見て首を傾げる。

 まぁ…グロイっちゃーグロイけど…案外平気なものねぇ~……
 さて、飛びウサギさんのモモのお肉は、軽くぶつ切りにして焼いたらシチューね

 前足は、ちゃんと焼いて、レオとグリのオヤツ兼遊び道具で良いしらね
 本体は、豪勢にそのままグリル焼きにしましょうかねぇ

 蜂蜜に香辛料を全身まぶしにして、内臓抜いたお腹には、根菜類をつめましょう
 嗚呼…お米があったらつめたのになぁ……はぁ~…無いんだよねぇ

 ラノベの異世界モノでも、お米が無いってのが定番だもんねぇ
 必死こいて探したら、見付かるかしら?

 定番的には、家畜の飼料に使われているとかだけど
 はたして、そういうカタチででも、存在しているのかしら?

 あとで、グレンかルリにでも聞いてみよう
 流石に、お米が食べたいわ

 生の新鮮な卵をゲットしたセイで卵かけご飯が恋しくなったわ
 お給料がちょっとピンチの時には、だいぶお世話になったものねぇ

 そんなコトを考えながら、前足はあえて肩口から切り落とし、ほんのりの塩を入れた蜂蜜水を塗布して、丁寧に満遍なく焼いて行く。

 ふふふふ………可愛いレオとグリのオヤツ兼玩具ですからね
 しっかりと焼いておかないとね

 そう思いながら、調理していれば、ユナがやりたいというので、実習も兼ねて、教えながら前足を丁寧に満遍なく火を通して行く。

 「できたぁ~……」

 と、嬉しそうに言うユナの頭をナデナデして、セシリアは褒める。

 「うん、上手に出来たわねぇ……コレなら、ユナに任せるコト出来るかな」

 セシリアの言葉に、ユナが嬉しそうに言う。

 「えへへぇ~…次は何したら良いのぉ?」

 そう問い掛けるユナに、セシリアはにこにこする。
 そして、モモを骨ごと切り落としたのをユナに手渡しながら言う。

 「それじゃ、このモモ肉さんをぶつ切りにして焼いてくれるかな? 焼いたらシチューに入れて煮込むのよ」

 「わぁ~い…ユナ、リアお姉ちゃんが作ったシチュー大好きなんだぁ…作れるようになったら嬉しいなぁ……」

 そう言いながらモモ肉を受け取り、風の魔法で一口サイズより少し大きいぐらいの大きさにモモ肉を切って、ちゃんと空中で楓花〔ふうか〕の実から油を採って、火の魔法と混合して、器用に焼いていた。

 うんうん…ユナは、ちゃんと覚えたみたいね
 うふふふ……これなら、近いうちにユナにご飯の方をまかせられるわね
 そしたら、私はお菓子作りに専念できるかもねぇ……

 そんなコトを考えつつ、セシリアも空中で飛びウサギの本体をグルグルしながら、香辛料入り蜂蜜水をまぶしていた。
 丁寧に全身隈なくグリグリと焼いたセシリアは、焼き終わりと同時に、腕輪型のアイテムボックスに収納してしまう。

 そうだわ、さっき作ろうと思って作らなかったローストビーフもどき
 アレもこの際だから作っちゃいましょう

 いくつまで同時に作れるかしらねぇ

 そんなコトを考えながら、セシリアは腕輪型のアイテムボックスに収納した肉から、一番牛肉っぽい肉質の塊り肉を出して、風の魔法で手頃な大きさへと切り分ける。

 さて、いくつぐらい平行で作れるかしらねぇ………
 二つ同時に、それぞれを作れるコトは出来たから
 ここは、三つ同時ってヤツを試してみようかな

 ルリが居たら、きっと溜め息をはくだろうコトを考えながら、セシリアは楽しそうに三つの小さくした塊り肉に、フォークでザクザクするイメージで、ごく小さな風の刺突を満遍なく入れて、楓花〔ふうか〕の油と香辛料を全体に隈なくまぶして、素材が乾かないように素材との間を髪の毛一本入らない結界を作り包み込む。

 えーと、この状態で十五分くらいおくのよね
 その間、暇だから、次のお肉の塊りも同じように処理しちゃいましょう

 と、側に最初の三つを浮かばせて、そこに固定したまま、やはり同じよに三つの片間の肉を処理して結界に包み込む。
 が、まだ十五分には時間が有ったので、同じように二回目の処理を済ませた塊り肉を、最初の三つの塊り肉の下に、まるでそこに棚があるかのように置いて行く。

 三回目の塊り肉の処理が終わった頃、ようやく最初の三つが十五分を迎え、取り敢えず表面を焼いてから、ボイルするコトにした。

 確か60度~80度ぐらいでボイルすれば良かったはず
 高いと肉がパサつくのよねぇ…しっとりで食べたいから65度くらいキープかな?

 そんなコトを考えながら、セシリアは次々と塊り肉の処置をして行く。
 グレンも居るし、ユナも側にいるというコトで、セシリアは外でルリが居ないというコトを考慮せずに、次々となんちゃってローストビーフを作り続けるのだった。

 そして、最初の用意した肉を全て処理し終えて、腕輪型のアイテムボックスに収納した頃になって、猫型のルリが巨大なジャンボモアを風の魔法で浮かせて、ルンルンで戻って来たのだった。

 ルリの姿を見て、セシリアは嬉しそうに言う。

 「おかえりぃ~ルリ…すっごい大きいねぇ…それがジャンボモアなのね」

 セシリアの言葉に、胸張りしてゴロゴロと喉を鳴らしたルリは、シュッと一瞬で人化して言う。

 「なんだい、ものすごくお腹が空くような良い匂いが漂っているじゃないかい」

 そういう意味での危険を示唆した言葉だが、グレンは肩を竦めて笑う。

 「ああ、お陰で、結構イイ獲物が取れたぜ……丸まるとしたスナワニも何頭か討伐したぞ…まんま、ユナのマジックポーチに放り込んだわ」

 そう言うグレンの側では、一生懸命に岩トカゲをマジックポーチに放り込むユナが居た。

 「ユナ」

 ルリの言葉に、ユナは首を振る。

 「せぇ~っかく、リアお姉ちゃんにお料理を習っていたのにぃ…邪魔された……でも、岩トカゲも美味しいってグレンお兄ちゃんから聞いたから、出て来たヤツを全部狩ってやった……プンプン……」

 と、こちらも何とも危機意識がない答えに、セシリアの側を離れたのは間違いだったかと考える。

 「大丈夫だよ、ルリ……そういう意味で、危険な生き物は現われなかったから……かなり離れた……向こう側で、なんか砂の中を動いている大きなの居たけど…こっちには来なかったしね」

 セシリアは、自分が感知した存在を口にするが、そこには危機意識というモノは無かった。

 「はぁ~……まぁ…無事なら良いってコトにしようかね……で、リア、どんなモノかわかるかい?」

 「うん? 向こう側で感知したの? んぅ~…かなり深いところに、なんかものすごぉ~く長細いモノが蠢いていた感じかなぁ? 例えるなら、蛇みたいなモノだと思うけど

 数は、3つかなぁ……ひとつがかなり大きくて…2つは同じぐらいかな?
 出てきたら、使ってみたい魔法あったんだけどなぁ……上がってこなかったんだよね」

 のほほんと答えるセシリアに、おもわずルリはしゃがみ込んで深く溜め息を吐くのだった。

 
     


 
 
 
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