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0079★グレンは憂鬱になる
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セシリアは姿見を腕輪型のアイテムボックスの収納から取り出し、中へと入る。
勿論、懐きまくっているナナも、なんの躊躇いもなくその後に付いて行く。
一度入っているし、入れるように登録してあるので、はじかれるコトなく姿見の中にスルリっと入れるのだ。
当然、ユナもついて来る。
そして、グレンは姿見の中へと入るセシリア達の背中を見送り、繋いだままの馬達の確認を始める。
そう、直ぐに馬車を出せる状態か、不備はないかという点検をするのだ。
セシリア達と一緒にいると、自分が奴隷であるコトを忘れそうになるので、点検中に意識を引き締めにかかる。
まいったなぁ……リアが、あまりにも当然のように、普通に接してくるから…
俺の今の自分の立場を忘れそうになる
いや、リアはそんなコト…少しも意識していないんだろうなぁ……はぁ~……
まぁ…隷属契約しているし、首輪が付いているって安心感があるからだろうな
こんな俺を、安心と思ってくれるのは嬉しいが、男としてはちょっと……
いやいや…なに考えてるんだ俺は、立場をわきまえないとダメだろ、俺
あははは……奴隷に堕ちたってーのに………今が幸せ過ぎるんだが
物心ついた頃から、俺はずっと死の気配に晒され続けていた
本来なら信頼できるはずの乳母すら、俺を裏切った
リアに買われて、抱き締められるまで、こころが虚無感に支配されていた
生きた半殺しの魔獣を、生餌として与えられても食欲なんて湧かなかった
強烈な飢餓感は確かにあったけど…生き残りたいっていう思いが無かった
それが、今は自分自身の身体を取り戻し、ほぼ自由を与えられている
今の俺は、もっとも後継者の位置に近かった俺を陥れた奴等に感謝さえしている
権力闘争から後継者争いまで…一切気にしなくて良いってこの立場は、最高だな
いや…それもこれも…リアに買われたから思えるコトだよな
ところどころ記憶が跳んでいる上、気付いたら人じゃなくなっていたんだから
猫型の大型魔獣のルリと、身体が入れ替わっていた時の絶望感はもう味わいたくないな
はぁ~……俺達の身体を入れ替えた、呪術師の顔とか思い出せないのが難点だな
記憶を消されたのか…全然、その部分の記憶が無いんだから困る
どういったヤツを警戒すればイイかが判らない………クソッ
ルリと入れ替わる前に、身体をそういう意味で悪戯された記憶はない
違和感のようなモノも無いから、純粋に入れ替えてみたかっただけなのだろうか?
それとも、一般的な兵士の戦力アップで魔獣の身体と交換の実験をされたのだろうか?
一応、俺が奴隷堕ちする前までの記憶だが、当時、何処かと戦争する気配は無かった
単に、後継者の候補者の中で、俺が他の奴等より少し秀でていたからか?
まぁ…いいか…もう、今は俺に関係ないコトだからな
ただ、向かう先が大国ゼフィランス帝国っていうのが、かなり問題だな
まだ現皇帝は健在だろうが、後継者が指名されたという噂も聞かないし
となると、熾烈な後継者争いしているはずだしなぁ………
まぁ…リアの奴隷となった俺には関係ないコトだけど
この見た目のままで、入国はちょっと不味いかなぁ………はぁ~……
取り敢えず、大国ゼフィランス帝国の支配地に入る前に、言わないとダメだよなぁ
今は、リアの奴隷だけど…元の立場とか…やっぱり言いたくないなぁ
リアなら、俺のコトをそのまま受け入れてくれそうな気がするけど………
俺を所有しているってコトで、危険に晒すコトになるかもしれない
もう……いや、元から…後継者の地位なんて興味無かったけど
あの頃は、漠然と死にたくない、生きたいという思いで必至だった
今は、その過去の事実すら煩わしいモノだ
流石に、リアに手放されたくないって思っちまうんだよなぁ
こんな自由な生活を味わっちまったら、もう二度と過去になんて戻りたくない
……っと、それよりも、馬達と馬車の確認しないとな
馬車は新品を買ったようだから、妙な魔法付与はされていないみたいだから良いとして
結構、盗賊団を引き離す為に、馬達に身体強化を付与して速度を上げたからなぁ……
ふむ…どれも大丈夫そうだな………ささくれも亀裂も無い
従軍経験は、意外と役に立つ知識だったなぁ……何度も暗殺されかかったけどな
俺に盛ったのは、腹違いの義弟だったのか? それとも従姉妹だったのか?
なんにしても、身内に裏切られたってコトだろう
好敵手のライバルであり友人だったアイツには悪いが、今更戻る気なんて無いしな
なんと言っても、今が一番楽しいって感じているのは確かだ
リアとルリやユナと共に、気ままな旅を続けるなんて最高の贅沢だからな
リアは、なんかちょっと太っているコトを気にしているような発言しているけど
陽に当たっていない生活していたっぽいし、誰かから逃げているみたいだから
きっと、俺と似たり寄ったり…とは言わないけど、訳アリっぽいもんな
そう言えば、興味なかったけど、婚約者候補らしいの居たコトを思い出したわ
あったコトも無いし、絵姿も観たことの無い、名前も素性も知らない娘
なんで、今更そんなコトを思い出したのやら………はぁ~……
グレンが内心で鬱々しつつ、馬の身体に装備させている引綱などの確認を済ませた頃、周囲の確認をしていたらしいルリが戻る。
「馬車と馬はどうだったかい?」
「お帰り、ルリ……そっちの姿で周囲の確認をしてきたのか? 馬車の方は大丈夫だ」
グレンのいうそっちとは、本来の魔獣の姿のコトだったりする。
やはり人化していると、ほんの少しだが、対応力が落ちる為に魔獣の姿での行動の方がとっさの時に生き残れるので、セシリアが側に居ない時は本来の姿をしているのだ。
「ああ、こっちの方が動きやすいからね……取り敢えず、周辺に危なそうなモノはなかったよ」
ルリはグレンの言葉にそう答えつつ、さっさと人化する。
「そうか…そろそろリアとユナも姿見の中から戻ってくるんじゃないかな?」
と、言っている間に、姿見の鏡面からセシリアとユナが出て来る。
そして直ぐに姿見を腕輪型のアイテムボックスに収納してしまう。
勿論、懐きまくっているナナも、なんの躊躇いもなくその後に付いて行く。
一度入っているし、入れるように登録してあるので、はじかれるコトなく姿見の中にスルリっと入れるのだ。
当然、ユナもついて来る。
そして、グレンは姿見の中へと入るセシリア達の背中を見送り、繋いだままの馬達の確認を始める。
そう、直ぐに馬車を出せる状態か、不備はないかという点検をするのだ。
セシリア達と一緒にいると、自分が奴隷であるコトを忘れそうになるので、点検中に意識を引き締めにかかる。
まいったなぁ……リアが、あまりにも当然のように、普通に接してくるから…
俺の今の自分の立場を忘れそうになる
いや、リアはそんなコト…少しも意識していないんだろうなぁ……はぁ~……
まぁ…隷属契約しているし、首輪が付いているって安心感があるからだろうな
こんな俺を、安心と思ってくれるのは嬉しいが、男としてはちょっと……
いやいや…なに考えてるんだ俺は、立場をわきまえないとダメだろ、俺
あははは……奴隷に堕ちたってーのに………今が幸せ過ぎるんだが
物心ついた頃から、俺はずっと死の気配に晒され続けていた
本来なら信頼できるはずの乳母すら、俺を裏切った
リアに買われて、抱き締められるまで、こころが虚無感に支配されていた
生きた半殺しの魔獣を、生餌として与えられても食欲なんて湧かなかった
強烈な飢餓感は確かにあったけど…生き残りたいっていう思いが無かった
それが、今は自分自身の身体を取り戻し、ほぼ自由を与えられている
今の俺は、もっとも後継者の位置に近かった俺を陥れた奴等に感謝さえしている
権力闘争から後継者争いまで…一切気にしなくて良いってこの立場は、最高だな
いや…それもこれも…リアに買われたから思えるコトだよな
ところどころ記憶が跳んでいる上、気付いたら人じゃなくなっていたんだから
猫型の大型魔獣のルリと、身体が入れ替わっていた時の絶望感はもう味わいたくないな
はぁ~……俺達の身体を入れ替えた、呪術師の顔とか思い出せないのが難点だな
記憶を消されたのか…全然、その部分の記憶が無いんだから困る
どういったヤツを警戒すればイイかが判らない………クソッ
ルリと入れ替わる前に、身体をそういう意味で悪戯された記憶はない
違和感のようなモノも無いから、純粋に入れ替えてみたかっただけなのだろうか?
それとも、一般的な兵士の戦力アップで魔獣の身体と交換の実験をされたのだろうか?
一応、俺が奴隷堕ちする前までの記憶だが、当時、何処かと戦争する気配は無かった
単に、後継者の候補者の中で、俺が他の奴等より少し秀でていたからか?
まぁ…いいか…もう、今は俺に関係ないコトだからな
ただ、向かう先が大国ゼフィランス帝国っていうのが、かなり問題だな
まだ現皇帝は健在だろうが、後継者が指名されたという噂も聞かないし
となると、熾烈な後継者争いしているはずだしなぁ………
まぁ…リアの奴隷となった俺には関係ないコトだけど
この見た目のままで、入国はちょっと不味いかなぁ………はぁ~……
取り敢えず、大国ゼフィランス帝国の支配地に入る前に、言わないとダメだよなぁ
今は、リアの奴隷だけど…元の立場とか…やっぱり言いたくないなぁ
リアなら、俺のコトをそのまま受け入れてくれそうな気がするけど………
俺を所有しているってコトで、危険に晒すコトになるかもしれない
もう……いや、元から…後継者の地位なんて興味無かったけど
あの頃は、漠然と死にたくない、生きたいという思いで必至だった
今は、その過去の事実すら煩わしいモノだ
流石に、リアに手放されたくないって思っちまうんだよなぁ
こんな自由な生活を味わっちまったら、もう二度と過去になんて戻りたくない
……っと、それよりも、馬達と馬車の確認しないとな
馬車は新品を買ったようだから、妙な魔法付与はされていないみたいだから良いとして
結構、盗賊団を引き離す為に、馬達に身体強化を付与して速度を上げたからなぁ……
ふむ…どれも大丈夫そうだな………ささくれも亀裂も無い
従軍経験は、意外と役に立つ知識だったなぁ……何度も暗殺されかかったけどな
俺に盛ったのは、腹違いの義弟だったのか? それとも従姉妹だったのか?
なんにしても、身内に裏切られたってコトだろう
好敵手のライバルであり友人だったアイツには悪いが、今更戻る気なんて無いしな
なんと言っても、今が一番楽しいって感じているのは確かだ
リアとルリやユナと共に、気ままな旅を続けるなんて最高の贅沢だからな
リアは、なんかちょっと太っているコトを気にしているような発言しているけど
陽に当たっていない生活していたっぽいし、誰かから逃げているみたいだから
きっと、俺と似たり寄ったり…とは言わないけど、訳アリっぽいもんな
そう言えば、興味なかったけど、婚約者候補らしいの居たコトを思い出したわ
あったコトも無いし、絵姿も観たことの無い、名前も素性も知らない娘
なんで、今更そんなコトを思い出したのやら………はぁ~……
グレンが内心で鬱々しつつ、馬の身体に装備させている引綱などの確認を済ませた頃、周囲の確認をしていたらしいルリが戻る。
「馬車と馬はどうだったかい?」
「お帰り、ルリ……そっちの姿で周囲の確認をしてきたのか? 馬車の方は大丈夫だ」
グレンのいうそっちとは、本来の魔獣の姿のコトだったりする。
やはり人化していると、ほんの少しだが、対応力が落ちる為に魔獣の姿での行動の方がとっさの時に生き残れるので、セシリアが側に居ない時は本来の姿をしているのだ。
「ああ、こっちの方が動きやすいからね……取り敢えず、周辺に危なそうなモノはなかったよ」
ルリはグレンの言葉にそう答えつつ、さっさと人化する。
「そうか…そろそろリアとユナも姿見の中から戻ってくるんじゃないかな?」
と、言っている間に、姿見の鏡面からセシリアとユナが出て来る。
そして直ぐに姿見を腕輪型のアイテムボックスに収納してしまう。
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