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0077★これは、ご褒美でしょうか?

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 思い当たるモノがいっぱいあるセシリアは、全てをソッとこころの戸棚にしまい、静かに扉を閉じて見ないフリをするコトに決める。

 「取り敢えず、蓋が開いているみたいだから、中身の確認をしましょうか」

 気を取り直してセシリアが言えば、ルリが頷く。

 「そうだね、世界樹の種子があるなら植えてやらないとね……穢れて枯れ果てちまったから、もう二度とこの大陸では世界樹は生まれないと思っていたよ………他の大陸の世界樹から種子をもらえる可能性も無かったしねぇ……」

 と、感慨深く言うルリに、色々と聞きたいと思いつつも、余分なコトを聞いて、自分のヒロイン疑惑を増やしたくないセシリアは、ジィーと石櫃を見ているユナに声をかける。

 「ユナ、どうしたの?」

 セシリアの問いかけに、ユナが小首を傾げる。

 「んーとね……この模様のところ……もしかして外れるのかも………」

 「えっ? どこ? どこ?」

 ユナが小さな指先で、微かに花束の模様をした部分の蕾みの部分を指さす。

 「ここがコロンッて取れそうだと思ったの………ただ、どうやって取るのかなぁ?」

 ユナの指さしたソコを、セシリア同様に覗き込んでいてたグレンが触って確認するが、取れる気配は無かった。
 ルリも同じように触るが、変化は無かった。

 勿論、セシリアも取れないかと人差し指の爪を引っ掛けようとするが、取れるコトは無かった。
 言い出しっぺのユナは、セシリアが爪を引っ掛けて取れないかとやっていたコトを見て、真似て自分の爪に魔力を込めて少し伸ばして蕾みの部分の微かな窪みへと引っ掛けて引っ搔いてみた。

 と、それまで少しも変化の無かった蕾みの輪郭部分が浮き上がり、コロリンッと指輪が床に転げ落ちる。

「「「「取れたっ」」」」

 転がった指輪をヒョイッと摘まみ上げ、ルリは矯めつ眇めつしてからユナに手渡す。

 「コレはユナに反応したみたいだから、アンタが嵌めな」

 そう言われたユナは、セシリアを見上げる。

 「そうね、ユナが見付けて、ユナが取れたってコトは、その指輪はユナの物ね」

 うんうんと頷きながら、指輪にはあまり興味が無いグレンが、本当に蓋が開くかどうかと観察して納得する。

 「なるほど、その指輪が外れて、初めて蓋が外させるようになっていたようだな」

 「どうしたの?」

 グレンの言葉に、セシリアは指輪が外れたところを指先で辿っていたグレンに声をかける。

 「ああ、指輪が外れたコトで、石櫃本体と蓋がやっとわかるようになったからな」

 そう言って、石櫃と蓋の部分を分ける線がうっすらと見えるソコを指先で教える。

 「ほら、ここから左右に線が走っているだろう……ルリ、手伝ってくれるか? こっち側を俺が持つから、そっち側を持ってくれ…ユナとリアには無理だから」

 そう言って、グレンは石櫃の正面から左側へと移動する。

 「あいよ…了解だよ」

 そう言って、ルリは正面から右側へと移動する。

 「せーので力を入れるよ…蓋は背面に降ろそう」

 「了解…せーの………」

 と、ルリとグレンで、石櫃の蓋と思われる場所を掴み、真上に少し引き上げてからソッと背面に降ろすのだった。

 そっと置いても、重さがあるのか、ゴトリっという音が響く。

 中に入って居たのは、ぎっしりと敷き詰められた青々とした葉っぱの中に、スイカほどの種らしきモノが12個ほど鎮座していた。

 「リア、この敷き詰められている葉っぱ、全部世界樹の葉だよ…凄いねぇ……まるで、採取したてのような瑞々しさだよ」

 ルリの言葉に、思わずセシリアは思わずピアス型魔道具の鑑定を起動してしまう。

 ピロ~ンッ………ピッピッピッ………

 世界樹の種子12個(穢れる前に採取されたモノ)
 何時でも発芽できる状態
 穢れていない肥沃な大地と濃厚な魔素が必要
 幼木時は瘴気に弱い

 世界樹の葉っぱ(穢される前に採取されたモノ)
 上級エリクサーの原材料
 現在は、現大陸では採取不可能な代物
 そのまま齧っても、かなりの効果あり

 聖封の石櫃
 開封されたコトで風化が始まっている
 青龍の鱗から作られている為、風化すると粉になる
 粉になったモノをポーションに加えると飲むコトができる
 一時的に聖属性を得られる
 アンデット系に対する切り札になる

 それを見た瞬間、セシリアはパサッと一気に行くのを危惧して、世界樹の種子と世界樹の葉っぱと、聖封の石櫃と蓋を分けて、腕輪型のアイテムボックスに速攻で収納するのだった。

 そんな慌てたセシリアに、ルリとグレンとユナが、ポカンとした表情になって見ていた。

 「どうしたんだい、リア?」

 代表して聞いて来たルリに、セシリアは今鑑定の魔道具で観た内容を口にする。

 「へぇ~…アンデット系に有効なモノなんだ……『ダンジョン』には、大概居るから、あるとこころ強いな」

 と、グレンはどこかホッとした雰囲気で言う。

 「そうだねぇ…これから見に行く洞窟の奥にある遺跡らしきモンが『ダンジョン』化していたら、必要なモンだね」

 「うふふふ……リアお姉ちゃんって…すっごい強運持ちなんだねぇ~……きっと、日頃の行いが良いからだねぇ……」

 嬉しそうに、キャッキャッとするユナに、内心でちょっと溜め息を吐きつつも、セシリアは笑って言う。

 「皆、ちゃんと時空神様にお祈りしているからだよ……きっと、ご褒美なのかもね」

 「うん」

 嬉しそうなユナの頭を撫でながら、母ウクダの姿を探せば、再び別の場所の壁をカリカリと前足で掻いている姿があった。
 
 






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