上 下
66 / 173

0065★廃村はスタンピードで滅んだようです

しおりを挟む


 「……ちゃん…リアお姉ちゃん………起きて……」

 セシリアはユナの呼び声で、目を覚ましてぼぉ~っとした頭で現状を認識する。

 あっ…あの見えた廃村?に到着したのかな?
 取り敢えず、大神官様の続きを観れたし、現在の場所も把握できたし
 それに、時空神様が供物(=昼食)を喜んでいる姿も拝めたわねぇ

 そんなコトを思いながら、セシリアは瞼をゆっくりと開きユナの姿を認めて微笑む。

 うん…ユナは安定で可愛いわねぇ~………
 さて、起こされたってコトは、予定の場所に到着したってコトかしらねぇ
 取り敢えず、起こしてもらったから、起きて現在地の確認をしないとだわ

 まだぼやけた頭のまま、セシリアはゆっくりと身体への負担が無いように上半身を起き上がらせる。
 その際に、かけていた被り物の片側がやや重かったコトを認識していたセシリアはソッとその原因となっていたモノ達へと視線を向けて微笑む。

 あらあら…おちびちゃんズは全員、一塊になって寝ていたのね……可愛いわぁ
 レオもグリも子ウクダちゃん達と一緒に、ぐっすりと眠ったままなのねぇ~…
 気分もすっきりしているから、余剰になっている魔力を分けてあげましょう

 そんなコトを何とは無しに考えて、両方の手の平を軽くかざして、魔力を眠る子供達に降り注がせるイメージで照射する。
 セシリアは気付いていなかったが、周囲に仄かな光りを放っていた。

 はたから観ると、ちょっとした宗教画的な光景だったりする。
 が、そんなコト知るよしもないセシリアは、ひと眠りして余った感覚のあった魔力を子供達に注いだあと、ユナに手を伸ばしてその頭を撫でる。
 勿論、ユナにも魔力を注ぐコトを忘れない。

 「起こしてくれてありがとう、ユナ。もう、予定していた、村があった場所に到着したのかな?」

 セシリアに頭を撫でられ、魔力を注がれたユナは、無意識ににこぉ~っと笑って、尻尾をパタパタさせながら頷く。

 「うん、廃村に到着したってグレンお兄ちゃんが言ってた。この後、どうするの? 今日は、ここで野営するの?」

 小首を愛らしく傾げるユナに、セシリアはクスクスと笑って同じように首を傾げる。

 「そうね…お外を確認して、大丈夫だったら、今日はここで野営かな……」

 セシリアは、まだ眠っている子供達を起こさないようにソッとラグの上から抜け出す。
 寝る時に脱いだ靴下もどきを履いて、革靴のヒモをしっかりと締め上げて縛り、立ち上がる。

 はぁ~……こっちの靴はどれも微妙なのよねぇ~………
 前世で履いていたような、運動に適した靴が欲しいわねぇ
 スポーツシューズとか、スニーカーとか欲しいわぁ~…はぁ~……

 無い物ねだりと思いつつも、この世界で自由に行動するのに支障のない履物を選択すれば、いちいちヒモで編み上げるモノしかないのだ。
 前世でのスリッポンと呼ばれるような、金具もヒモもない靴は、現在のセシリアの知る範囲には無かったりする。

 この辺は、半分は砂漠のような状態だからブーツとか長靴みたいなの欲しいなぁ
 履物の丈が短いと砂や小石が入って痛い目にあうのは確実だもの
 だからって、ずっと宝箱から手に入れた『精霊のブーツ』を使うわけにいかないし

 そう、現在のセシリアは、普通の一般的な女性冒険者が履いている編み上げ式の革でできたブーツを履いているのだ。

 はぁ~……本音を言えば、替えがあるなら『精霊のブーツ』ですごしたい
 けど、宝箱から出るくらいだから、普通には売ってないよねぇ……はぁ~……
 それとも、魔道具の一種として売っているのだろうか?

 そう思い、セシリアはさっさとトンズラこいた、ロマリス王国でのお店に並べられていた商品の数々を思い出して首を振る。

 確率が低いわねぇ~……冒険者用の品物が置いてあったところに無かったし
 とはいえ、補正が無くても良いから、もう少し履き心地が良いの欲しいわ
 まぁ…今の私の足だと……こういうのが限界なのかもだけどね

 そしてセシリアは、こころ新たにダイエットをしようと思うのだった。

 前世でも、体重の変動で靴のサイズが結構コロコロと変わったものねるぇ……
 あぁ~あ…また、ダンジョンにでも入って宝箱から探そうかしら?
 宝箱から出る履物なら、サイズが勝手に適正値になってくれるモノあるし

 そんな埒も無いコトを思いつつ、セシリアは馬車から降りるのだった。
 勿論、ユナは楽しそうにセシリアの後について、馬車からおりたのは言うまでもない。

 「あれ? グレンは? ルリ? って、どっちも居ないって? 周辺の安全確認かな?」

 キョロキョロと周辺を見回すが、グレンの姿もルリの姿も見当たらないコトに、セシリアは?を浮かべて首を傾げる。

 「あれ? 本当だね、グレンお兄ちゃんもルリお姉ちゃんも居ないね。何処に行ったのかなぁ?」

 ユナもキョロキョロと辺りを見回して首を傾げ、大きなもふもふの耳をピクピクと震わす。
 と、微かな音を聴き付けて、ユナがセシリアの手を握る。

 「リアお姉ちゃん……あっちの方で何か音が聴こえたよ」

 ユナが指で指示した方を向いて、セシリアは小首を傾げてちょっと考える。
 ついで、もう一度周辺を見回して肩を竦める。

 う~ん…ルリかなぁ? 結構大規模な隠蔽結界が張ってある
 私達(セシリアとレオやグリに子ウクダ達)の安全確保したからかな?
 お母さんウクダは、優雅にまばらな雑草を食べているみたいね

 「それじゃ…そっちに行ってみようか……グレンかルリが居るかもだし……」

 「うん」

 セシリアは、ユナと手を繋ぎながら、散歩も兼ねて歩き始める。
 勿論、耳に付けたピアス型魔道具のを起動させて、周囲を確認しながらである。

 耳元で、定番の音が響く。

 ピロ~ンッ………ピッピッピッ………

 廃村 元ガリア村(廃村になって久しい・年代不明)
 小規模スタンピードにより放棄された村

 セシリアの耳元で鳴り響いた音を聴き取ったらしいユナは、大きなもふもふ耳をぴくぴくと震わせながら聴く。

 「リアお姉ちゃん?」

 首を傾げながら見上げられたセシリアは、廃村からユナに視線を降ろして言う。

 「うん…ここって…スタンピードで廃村になった村みたいねぇ……年代は不明ってなったから、かなり古い時代に起こったコトみたい……ふふふふ……ユナが聴き取ったのは、コレの起動音……鑑定の魔道具なのよ」

 セシリアの説明に、ユナはちょっとホッとした表情で頷く。

 「そうなんだ……だから滅んじゃったんだ」

 「うん…そうみたいね…だから、どんな村だったかはわからないのよねぇ……」

 ユナが音が聴こえたという場所に向かうと、微妙な顔をしたグレンが首を傾げつつちょうど出入口らしき場所から出て来るところだった。

 「グレンお兄ちゃんっ」

 と、嬉しそうな声をあげたユナと一緒に来たセシリアに気付き、片手を上げながら長い真紅の髪を揺らし、金色の双眸を嬉しそうに細める。

 「おう…ユナ…リアと見に来たのか? リア、体調はどうだ?」

 ふわぁ~……相変わらずのイッケメンだわぁ~……じゃない
 今は、確認よ

 「うん、リアお姉ちゃんと見に来たの……」

 「ええ…ユナが…こっちから音が聴こえたって言うから……グレンもルリも姿が見えないいから、周辺確認かなと思って………そうそう、ここはスタンピードで滅んだみたい……ただ、年代不明って出たから、住民が事前に逃げて滅んだのか…襲われて滅んだかは判らなかったけど」

 そうセシリアが言えば、グレンはなるほどという表情をする。

 「そうか…ここは、スタンピードで滅んだ村なのか……」

 「それで、グレンはなんで微妙な表情していたの?」











しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた

cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。 お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。 婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。 過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。 ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。 婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。 明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。 「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。 そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。 茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。 幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。 「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?! ★↑例の如く恐ろしく省略してます。 ★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。 ★コメントの返信は遅いです。 ★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。 ※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません

あなたが幸せならそれでいいのです

風見ゆうみ
恋愛
流行り病にかかった夫の病気を治すには『神聖な森』と呼ばれている場所にしか生えていない薬草が必要でした。 薬草を採ってきたことで夫の病気は治り、今まで通りの生活に戻るはずだったのに、夫に密かに思いを寄せていた私の親友が、自分が採ってきたと嘘をつき、夫もそれを信じてしまったのです。 わたしが採ってきたと訴えても、親友が採ってきたと周りは口を揃えるため、夫はわたしではなく、親友の意見を信じてしまう。 離婚を言い渡され、追い出された私は、実家に帰ることもできず、住み込みで働ける場所を探すことにしました。 職業斡旋所に行ったわたしは、辺境伯家のメイドを募集している張り紙を見つけ、面接後、そこで働けることに。 社交場に姿を現さないため『熊のような大男』(実物は違いました!)と噂されていた辺境伯の家での暮らしになれてきた頃、元夫の病気が再発して―― ※独特の世界観であり設定はゆるめです。

●婚約破棄ですって…!!でしたら、私に下さい!!●

恋愛
セイラ・エトワール辺境伯令嬢はつい先日16歳を迎えた。   本日デビュタントのものだけが着ることを許された純白のドレスに身を包みながらも、セイラはどこか浮かない顔をしている。 そんなセイラがなぜ浮かない表情を浮かべていたのか……いないのです。 そう.…見た目は麗しい淑女であり、引く手数多であろうと思われる彼女だが実際は恋愛経験ゼロ!! それならばと両親が躍起になって婚約者を探すが、それでも見つからないのだ…!! このままでは一生独身を貫くことになるのでは!?と危惧した父親が今回のデビュタントにて良い縁を結んでこられなければ、セイラを領地の修道院に入れると…!! のんびりスローライフを送りたいセイラはそれでも良いかもの楽観視するが、娘の現状を嘆いた母が泣きながらセイラを説得するため、渋々王宮へとやってきたのだ。 これからどうするか…と料理をつまんでいると、会場の奥から甲高い大きな声が響き渡ってきた。 遠くて話の内容がよく聞き取れなかったけど…王女様と見覚えのない金髪の優男が寄り添っている。 その2人の前には顔は見えないが黒髪の青年が絶望した空気を背負いうずくまっているのが見えた。 えっ!!いま婚約破棄とおっしゃいました!? でしたら、私のところに連れて帰っても問題ないのでは!? その青年、私に下さい!! 全て声に出ていたのか王女様と金髪と黒髪の青年は驚いた様子でセイラを見ていた。 そんな何を言い出すか分からない破茶滅茶な行動の辺境伯令嬢が巻き起こすドタバタラブストーリー!!

茶番には付き合っていられません

わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。 婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。 これではまるで私の方が邪魔者だ。 苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。 どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。 彼が何をしたいのかさっぱり分からない。 もうこんな茶番に付き合っていられない。 そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。

あなたがわたしを本気で愛せない理由は知っていましたが、まさかここまでとは思っていませんでした。

ふまさ
恋愛
「……き、きみのこと、嫌いになったわけじゃないんだ」  オーブリーが申し訳なさそうに切り出すと、待ってましたと言わんばかりに、マルヴィナが言葉を繋ぎはじめた。 「オーブリー様は、決してミラベル様を嫌っているわけではありません。それだけは、誤解なきよう」  ミラベルが、当然のように頭に大量の疑問符を浮かべる。けれど、ミラベルが待ったをかける暇を与えず、オーブリーが勢いのまま、続ける。 「そう、そうなんだ。だから、きみとの婚約を解消する気はないし、結婚する意思は変わらない。ただ、その……」 「……婚約を解消? なにを言っているの?」 「いや、だから。婚約を解消する気はなくて……っ」  オーブリーは一呼吸置いてから、意を決したように、マルヴィナの肩を抱き寄せた。 「子爵令嬢のマルヴィナ嬢を、あ、愛人としてぼくの傍に置くことを許してほしい」  ミラベルが愕然としたように、目を見開く。なんの冗談。口にしたいのに、声が出なかった。

所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!

ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。 幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。 婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。 王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。 しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。 貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。 遠回しに二人を注意するも‥ 「所詮あなたは他人だもの!」 「部外者がしゃしゃりでるな!」 十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。 「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」 関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが… 一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。 なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…

前世で処刑された聖女、今は黒薬師と呼ばれています

矢野りと
恋愛
旧題:前世で処刑された聖女はひっそりと生きていくと決めました〜今世では黒き薬師と呼ばれています〜 ――『偽聖女を処刑しろっ!』 民衆がそう叫ぶなか、私の目の前で大切な人達の命が奪われていく。必死で神に祈ったけれど奇跡は起きなかった。……聖女ではない私は無力だった。 何がいけなかったのだろうか。ただ困っている人達を救いたい一心だっただけなのに……。 人々の歓声に包まれながら私は処刑された。 そして、私は前世の記憶を持ったまま、親の顔も知らない孤児として生まれ変わった。周囲から見れば恵まれているとは言い難いその境遇に私はほっとした。大切なものを持つことがなによりも怖かったから。 ――持たなければ、失うこともない。 だから森の奥深くでひっそりと暮らしていたのに、ある日二人の騎士が訪ねてきて……。 『黒き薬師と呼ばれている薬師はあなたでしょうか?』 基本はほのぼのですが、シリアスと切なさありのお話です。 ※この作品の設定は架空のものです。 ※一話目だけ残酷な描写がありますので苦手な方はご自衛くださいませ。 ※感想欄のネタバレ配慮はありません(._.)

いらないと言ったのはあなたの方なのに

水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。 セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。 エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。 ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。 しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。 ◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬 ◇いいね、エールありがとうございます!

処理中です...