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0058★小街道を見付けました

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 セシリアが楽しくグリフォンの雛に名付けをしている頃、グレンは指定された元小街道を探しながら、馬車を疾走させていた。

 んーと、どの辺にあるんだぁ?
 この辺の地理はある程度は知っているが、そんなモンあったかぁ?
 なんか、リアって不思議な人だよなぁ………

 俺やルリって名付けた猫型の魔獣のコトを、ちゃんとわかっていたみたいだ
 呪術師とか名乗るヤツの実験体にされた俺とルリを、わざわざ買ってくれたし

 それ以前に、あんな姿だった俺に触れて、念話を使ってくるなんてなぁ………
 たしか、念話ってかなり高度な技術だったはず
 なのに、普通に話しかけるように使って来た

 かなり太っているけど、どうもあの姿は、無理矢理作られた姿みたいだったな
 ちょっと引っ込み思案っぽいところは、従妹に似ているよなぁ………
 あいつ、どうしているかなぁ?

 俺達の権力争いに巻き込まれていなきゃいいけど………はぁ~……
 まさか、あいつに裏切られるとはなぁ………いや、ある意味ラッキーだけど
 もともと、なりたくてなった立場じゃないからな

 それよりも、今は、小街道のあとだな……いったいどの辺にあるんだぁ?
 とりあえず、あの盗賊らしい奴等は、かなり引き離したけど
 
 グレンは優れた感知能力があるので、盗賊達をかなり引き離したコトは知覚していたので、そこまで焦ってはいなかった。

 ただ、グレンとしては、今は知っている大街道の左手側に、消えかけている元小街道があるという情報以外に詳しいコトは知らないので、目視できるかを不安に思っていた。
 ぱっと見で、それらしい小街道の跡が見えず、グレンは馬車の中へと声をかける。

 「リア、元小街道ってヤツ…まだ遠いのか?もうすぐなのか?指示をくれないか?」

 高速で走る馬車の振動に身を任せながら、セシリアはグレンの問いかけに首を傾げる。

 「グレン、了解」

 セシリアは、返事をして御者台側の出入口に顔を出して、大街道を確認する。
 勿論、最初に手に入れたフード付きマントはしっかりと被っている。

 「ん~……もう少ししたら、見えてくるはずだから、馬達の走る速度をじょじょに落としてくれる?あんまりスピードが出ていると、通り過ぎちゃうそうだから……」

 ルリ達と会話をしたお陰で、喋るコトがかなりスムーズになったセシリアは、御者台に座り、軍馬達をコントロールするグレンの後ろ姿を見て、内心で溜め息を吐く。

 ほんとぉ~に…グレンってカッコイイ……まさにイッケメンだよね
 どこぞの乙女ゲームの攻略対象っぽいから、ずっと一緒にいるのはキケンかもね
 だからって、手放せるかって言えば、無理

 だってもの凄く好みなんだもん……理解っている、身の程知らずだって
 こんな、見事なコミュ症の墫女がっては思わないでもないけどね
 少しは、痩せる努力はするよ

 なんと言っても、もうあの魔道具を着けていないから負担はないんだから
 適度な運動して、ちゃんと栄養バランスを考えた食事を摂って
 ルナ達と冒険者でもすれば、今の体重の半分とはいかなくても、減るはずだもん

 半年から一年ぐらいかけて、ゆっくりと痩せるんなら、身体の負担も少ないはずだし
 前世の知識もあるから…少しは、効率好く痩せられると思う……たぶん
 とにかく、痩せる為の努力はしよう 

 それにしても、本当にグレンってイッケメンなのよねぇ……
 背後から観る分には大丈夫だけど、真正面からは見慣れるのに時間かかりそう
 今だけは、グレンを独占しても良いよね

 それに、コーラルージュ王国まで行ったら、グレンの隷属魔法も解く予定してるし
 グレンが誰かに恋焦がれて、私から離れて行かない限りは、私のモノで良いよね
 人手…特に男の人の手は助かるから、まだ…もう少し良いよね、このままで

 せっかく、自由になれて、お金の心配も………ってそうだ、今度こそ聞かないと
 この世界のレートを、ちゃんと聞かないと
 ぜぇ~んぶお任せでやってもらったけど、自立を考えたらソコからだよね

 でも、今は、取り敢えず、少し冒険したい
 ちょっと不安が無いわけじゃないけど……やっと自由を得られたんだから
 それに、小街道のかなり行ったあたりの廃村?らしい近くに、あったのよね

 あれって、遺跡っぽい感じたったのよねぇ…ちょっとの寄り道ぐらい良いよね
 ルリやグレンがいるから、危険度の高くないダンジョンなら大丈夫だと思うし
 んーと……そろそろ、それらしいのが見えてもおかしくないんだけど

 「グレン、そろそろ速度を思いっきり落として………馬車が並んで3台くらいの幅で立ち枯れた大樹の名残りが有るはずだから………左手側に腰の高さの折れた木株があるはずだよ……右手側はそれよりもかなり低くて小さいよ」

 セシリアの言葉に、グレンは軍馬の足を落とすように指示する。

 「聞こえたなぁー……速度を落とせぇー……」

 そう命令をしながら、グレンは軽く手綱を振るうと、2頭の軍馬は走る速度をほぼゆっくりと歩く速度にまで落としながら、セシリアの言った立ち枯れた大樹の木株を探すように見ながら、馬車を引く。

 左右にヒモで繋がれている軍馬も、それに併せて速度を落とすが、右手側の軍馬だけ馬車から半馬身ほど前に出て左手側を確認するように、足並みを併せていた。

 本当に、この世界の馬って頭が良いのねぇ……
 グレンと私の会話をちゃ~んと聞いて、それに併せた行動しているんだもん
 っと、そうだ、後で4頭の馬達にも名前を付けないとね

 この後、増やす予定はないから、馬の毛色で呼び名を決めても良いかなぁ?
 前世はコミュ症でも何とかなったレベルだけど、今世はあんなコトになっていたから
 かなり、人付き合いって苦手なんだよね

 でも、もの凄いイッケメンだけど、グレンは何故か平気なのよねぇ
 ルリもユナも人化しているけど、厳密には人じゃないからか、平気だし
 ぜんぜん、緊張しないんで、普通に喋れるんで困らないけど………

 ただ、やっぱり『夢の翼』達みたいな元気な人達とはテンポがズレるんだよねぇ
 前世と今世の人格が混ざったコトで、もったりした喋り方がだいぶマシになったけど
 今世のセシリアは、ほぼ虐待されて口が利けなかったから………

 下手なコト言ったら、王妃様や侍女長からムチで叩かれたたりしたし………
 王太子は、取り巻きからしてあんなんだったしねぇ………
 そのセイで、自分の意思を思うように伝えられなかった

 暗い思いにちょっとうつむき加減になったセシリアだが、左手側に大樹の名残りである木株を見付ける。
 当然、セシリアが見付ける前に、馬達とグレンはそれに気付い聞く。

 「リア、曲がるのって、そこで良いのかな?」

 気安く声をかけてくれるグレンに、セシリアはコクコクしながら言う。

 「うん…そこ……そこを曲がって……そしたら直ぐに停まってくれる?馬車の轍の痕跡を消すから………」

 「了解、んじゃ左に曲がるぞぉ~……」

 そう言いながら、人が歩く程度の速度で、ゆっくりと元小街道だった空間へと入る為に曲がる。
 勿論、ちゃ~んと聞いている母ウクダも長い耳を嬉しそうに揺らしながら、軍馬の後に続く。

 「グレン…そのまま走って良いよ………アタシがリアの代わりに風の魔法で轍の痕跡を広範囲で吹き流すから………」

 そう言って、ルリが馬車の背面の扉を開けて、風の魔法を唱える。
 馬車の御者台の側に居たセシリアが振り返った視線の先では、砂嵐なんて可愛いもんじゃない暴風が吹き荒れていた。

 うわぁ~…ルリの風魔法ってすっごぉ~い……私もあんな風に使ってみたい
 じゃなくて、あれなら、この馬車の轍なんてわからないんじゃないかな?
 あっそうだ……どうせなら………

 「ルリぃ~…あの2つの木株、砂で埋めるってできるぅ?…できれば小街道に入るところを砂山で塞いじゃった方が良いんだけどさぁ~………」

 セシリアの言葉に、ルリも悪戯っ子のように瞳を輝かせて頷く。

 「了解だよ、リア……そぉ~れ………」

 と、ルリは小街道の入口の目印になる木株を、起こした砂嵐を操って埋めて砂山へと変化させる。

 うん…あれなら、あの盗賊達も追い駆けてこれないだろうねぇ~……くすくす
 後で、別のところから大国ゼフィランス帝国に向かえる大街道を探そうっと
 さぁ~て……後は、またしばらく軍馬達には走ってもらわないとねぇ

 「んじゃ、あとは廃村らしきモノが見えるまで走ってもらうんだけど……ここから離れて、安全そうなところに出たら、ちょっと休憩しよう……子ウクダちゃん達もお乳飲ませてあげたいからね」

 「りぉ~かい…んじゃ、もう一走りするぞぉー…そらっ………」

 と、グレンが声かけすれば、馬車を引く軍馬達が意気揚々と走り始める。
 勿論、休憩になればお水とちょっとしたオヤツがもらえると、既に理解っている軍馬達と母ウクダは嬉々としてご機嫌で尻尾をフリフリはしるのだった。

 
 



    
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