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0053★母ウクダから、お乳をまたわけてもらいました
しおりを挟む朝食を食べた後、小休止したセシリアが立つと、母ウクダがテテッと走り寄り、頭をグリグリと手に擦りつけて、何事かを訴える。
えっ?…はっ?……えーと……なに?…手にグリグリ?…なにを望んでいるのかしら?
ウクダは懐かないと聞いているだけに、昨日お乳をもらえただけでもラッキーと思っていたセシリアは、懐く母ウクダの頭や首筋をナデナデしながら困惑する。
「ああ…そいつは、リアに、乳を搾って欲しいようだねぇ………たぶん、均等にあげたいんだろうねぇ……」
と、ルリが言えば、ユナも頷いて続ける。
「うん…子供達にお乳を吸われると、急いで飲もうとして、3人で競争するから、牙が当たって痛いんだってぇ………」
2人の言葉に、セシリアはなるほどと頷く。
「あらあら……そうだったのぉ?……それは、痛かったわねぇ……それじゃ、今搾ってあげるわね……ここは狭いから、あっちにいきましょうか?」
そう言って、母ウクダをテーブルから少し離れた場所へと移動させる。
移動の間に、ユナにお乳をまた分けて欲しいコトを母ウクダに伝えてもらう。
グレンは、お乳を入れる壷として、昨日使って洗浄を済ませてある壷を、スッとセシリアの側に置き、乳搾りがしやすいように、低めの木箱を置く。
「この木箱に座って搾った方が良いだろう………本当は、俺が乳搾り出来れば良いのだが……気を許しているのは、リアだけっぽいからなぁ………」
グレンはそう言って、警戒を含めたツバ飛ばしをしようとする母ウクダの側から、サササッとすぐさま離れる。
実は、ウクダのツバは物凄く臭い上に、皮膚が溶けたりするのだ。
その個体の警戒度や機嫌によって、かなり差異もあるらしい。
ツバをかけられても、単に臭いだけから、骨まであっという間に溶けるまで、ツバの濃淡がかなりあるのだ。
これで、普通の野獣(=家畜では無い野生の獣)なのだ。
ウクダが魔物化すると、物凄く狂暴になり、付近にある村や町は、甚大な被害をこうむるコトになる。
集団魔物化も、ごく稀にだがある。
もっとも大概は、集団行動しているので、群れの中で淘汰されて終わるのだが………。
ちなみに、セシリアは母ウクダから、一度もツバをかけられていなかった。
ユナは、最初に1度だけ、かけられはしなかったが近付く前に、警告のツバ飛ばしを受けていた。
勿論、ルリにも容赦なく何度も飛ばしていたりする。
溶けはしない代わりに、ものすごぉ~く臭いツバをペッペッペッと飛ばすのだ。
ただし、セシリアが側にいる時は、そんなコトしませんという表情で、優雅にわずかしか生えていない雑草などを探していたりする。
グレンは、ルリと魂が交換されていたセイか、やはり、ルリの半分ぐらいの確立で、臭いツバを飛ばされていた。
子ウクダ達は、グレンが怖くないらしく、楽しそうに周りをついて歩くだけだった。
グレンも、子ウクダ達が周りを楽しそうに跳ねているコトを気にせずに、自分のできるコトをモクモクとするだけだった。
つかず離れずという距離だったりする。
もっとも、グレンの内心としては、どうせ馬車が移動をはじめれば、親子で離れると思っていたから………。
ウクダは基本的に、縄張りにした地域を離れない。
群れで決めた縄張り内を移動するだけだから………。
だから、グレンは気付かなかったのだ。
親子だけでいるという意味を。
だから、どうら馬車が縄張り内から外へと移動すれば、すぐに離れると思ったのだ。
勿論、その習性(=決まった縄張り内移動するだけ)を知っているルリも、親子ウクダ達は直ぐにいなくなると思っていた。
そんなそれぞれの気持ちなど知らないセシリアは、、子ウクダ達用に大きな……もはやタライと言って良いような………深皿を用意してもらう。
母ウクダの前には、たっぷりの飲み水と砕き麦を用意する。
砕き麦は、なぜかあったふるいで、粉麦を振りなおして残った粒の大きいモノを選り分けたモノだったりする。
「取り敢えず、お乳を搾る間、砕き麦とお水を飲んでいてね」
そう母ウクダの首筋を撫でて言い、セシリアは母ウクダの乳房を水と火の魔法を使ったぬる湯の水球で包んで、温風で拭い乾かす。
こうした方が、血行が良くなって搾られる時に痛みが少ないって聞いたのよねぇ
うふふふ………今日も、2つの壷くらいになってくれると良いなぁ………
そう思いながら、お乳を搾るために母ウクダの乳房をソッと握って、セシリアは驚く。
あらあら……これは、痛かったわねぇ…もの凄い張っているわ
どうりで、私にお乳を搾ってと訴えるはずだわ
そう思いながら、ちゃんと乳首を指の輪で閉めて、順番に指を折り曲げながら、最初のお乳を壷の中に搾り出す。
本当に、今更ながらだけど、前世で牧場の体験・乳搾りコースを経験していて良かったわぁ~……
バター&アイスクリーム作りコースも一緒に体験しておいたから………ふふふふ
何度かゆっくりと確実に搾った後は、乳腺がちゃんとお乳を通るようになるので、手際良く、かつリズミカルに、シャコシャコと搾る。
母ウクダは、セシリアがお乳をリズミカルに搾り出すと、ホッと溜め息を吐いて、用意してももらった砕き麦と、お水を優雅に食べ始める。
お乳が張り過ぎて、痛かったらしい。
セシリアは知らないコトだが、時空神様のお供えをつまみ食いしたコトも、原因の一つかもしれなかった。
シャコシャコというリズミカルな音を聞いて、子ウクダ達はセシリアの側に駆け寄る。
そして、子ウクダ達は、搾ったお乳がもらえるのが理解っているので、とても楽しそうにセシリアと母ウクダの周りをタンタンと飛び跳ねていた。
しばらくして、きっちりと最後までお乳を搾り出したセシリアは、もう一度母ウクダの乳房を軽くサッと温水で洗い、温風で乾かす。
あまりキレイキレイし過ぎると、免疫が落ちちゃうのよねぇ……
清潔にし過ぎても、今後に影響あるかもしれないものね
それにしても、今日は壷が3つも搾れたわ
昨日、ちゃんと食べれたからね………ふふふふ
本当は、このおとなしい母ウクダと可愛い子ウクダちゃん達を、飼えたら言いんだけど
野生っ子を無理にはねぇ……たぶん、この周辺が縄張りなんだろうしねぇ
「はい、ありがとうお母さん…うん、ちょうど良く砕き麦とお水も終わったみたいね」
そう言って、感謝を込めて首筋と鼻筋を撫でたセシリアは、グレンを呼ぶ。
「グレン、一番左の壷を子ウクダちゃん達の器に入れてあげてくれる」
「ああ、こいつか?…了解」
セシリアに呼ばれて来たグレンは、用意して置いた子ウクダ達用の深皿に、母ウクダから搾られたお乳をなみなみと注ぐ。
乳首の獲得競争をせず、一生懸命に吸わなくて良いので、子ウクダ達はご機嫌で尻尾をフリフリしながら飲み始めるのだった。
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