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0041★その頃のアゼリア王国3

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 アゼリア王国の国王夫妻は、ロマリス王国の建国記念日に招待され、連日のパーティー三昧に浸っていた。

 仕事は、王宮にいる宰相その他に丸投げして………。

 そんな中、国王夫妻と大神官長が居ないのを良いことに、アゼリア王国貴族学院の卒業パーティーというイベントで、エイダン王太子が婚約破棄というコトをやらかしていた。

 国王夫妻が決めた、婚約者であるセシリア・アイリス・ラ・ハイドランジア公爵令嬢に、ありもしない冤罪を被せ、婚約破棄に、地位の剥奪、追放を言い渡していた。

 そして、セシリアが身に付けさせられていた豪奢な装身具………セシリアひとりを浄化の器という生贄とするを魔道具………を、ことごとく外したのだ。

 セシリアが身に付けさせられていた魔道具は、アゼリア王家直系にしか、外せない設定になっていたのだ。

 セシリアから外された魔道具は、外された瞬間に、その機能が停まるのだ。

 また、稼働させるには、ちゃんとした生贄としての儀式をしなれければ、動かないモノだったりする。

 魔道具の稼働が停止した途端に、アゼリア王国の国土と国民すべての浄化が停止する。

 強制的にセシリアひとりの身体に、集められていた穢れや災いから来る澱みが、本来の場所で拡散する。

 同時に、限界ギリギリだったセシリアの身体からはじき出された様々な、穢れ・災い・負の念などが、本来分担すべき3人の身体へと跳んで来たのだ。

 「……まぁ…そうですの……えっ?………」

 「……では…………んっ?……」

 アゼリア王国の夫妻がそれぞれ、セシリアが身に付けさせられていた魔道具がエイダン王太子の手によって、外された瞬間に、ズシッとしたモノが全身に乗るような違和感を感じた。

 勿論、3人のうちのひとりである、大神官長も、同じような感覚を味わう。

 そして、その次の瞬間に、エイダン王太子がやらかしたコトをさとった。

 3人は、同じモノを感じているか、視線を交わして、頷いた。

 そして、それぞれに、アゼリア王国へと戻る為の挨拶をする。
 
 帰国の挨拶を済ませた足で、連れて来ていた外交官や侍従達に侍女達、護衛騎士達に神官達に、とにかく急いで、馬車に乗って帰って来るコトを指示する。

 国王夫妻や大神官長の様子から、ただ事では無いコトを読み取り、外交官や護衛騎士達が動き始める。

 侍従達や侍女達も、王宮内に貸し与えられていた場所に置き去りにされた物を片付けに、半数が走る。

 そのままにして帰るコトは出来ないのだ。

 かりにも、アゼリア王国の国王夫妻が泊まっていた場所なのだから………。 

 神官達の半数も、大神官長が使っていた神殿内の部屋の片付けに向かう。

 その間に、国王夫妻と大神官長は、3人だけで、転移の場へとむかうのだった。

 「あの馬鹿者め……何をやらかしおった……」

 「セシリアに身に付けさせた…あの魔道具を外したようだわ」

 「また、身に着けさせれば良いでしょう…あんなに良い器はありませんからね……膨大な魔力量を誇るから、ひとりで支えられたのですから………」

 そんな会話をしながら、足早に転移の場所へと向かう。

 ただ、転移の場所は、ある意味で、遠くから攻めて来るコトができる場所なので、基本的に王城から離れた場所にあるのだ。

 ロマリス王国では、最初の防護壁の側にあったりする。

 本当は、貴族達の住む地域へと移したかったのだが、予算と使用する魔力量の都合で、そのまま、最初り防壁にへばりつくように設置されたままになっていたのだ。

 ちなみに、アゼリア王国はと言えば、市民街の1番外側にあったりする。

 国王夫妻と大神官長の回りには、それでも半数の護衛騎士と神官達がついて回っていた。

 勿論、侍従や侍女も、身の回りの世話が必要な為ついて回っている。

 王城を出ると、先回りしていた侍従と護衛騎士が馬車を用意して待っていた。

 ライル達のように、各自が馬に乗ってというコトが出来ない為である。

 国王夫妻に、お気に入りの側仕えである侍従と侍女も連れて、馬車に乗り込む。

 大神官長も、神官達が用意した馬車に乗り込む。

 当然、腰ぎんちゃくをしている神官2人もついて乗る。

 2台の馬車を護衛しながら、指示に従って、出来るだけ早く転移の場所へとむかうのだった。

 転移の場所に到着すれば、誰何される。

 当然、緊急な為に、事前に使用の申請をしていなかった為に、手続きが必要だったのだ。

 自国の転移の場所じゃない為に、侍従が急いで転移の場を使う使用許可の要請を行う。

 その間も、侍女は王妃の身の回りの世話をする。

 「大神官長よ…私達の他に、何名跳ばせる?」

 国王の質問に、チラリと付いて回った者達を見て答える。

 「国王夫妻に私で3人、それに護衛騎士なら2人ですね」

 その言葉に、王妃が異議を唱える。

 「困るわ、最低でも侍女のデイジーが居ないと………」

 「ふむ、私も侍従のセバスを連れて行くぞ」

 使用許可が出るまでの間に、それぞれひとりずつというコトになった。

 大神官長は、お気に入りの腰ぎんちゃくのベルンを連れて行くコトにしたのだ。

 ちなみに、護衛騎士なら2人というのは、持っている魔力量その他で、転移に必要な魔力を計算しての回答だったりする。

 外交もあって、複雑な手続きをかなり簡略化し、転移の場を使用する許可を取り付けて、急ぎ、転移の場へと入る。

 この選択が、更に自分達を追い詰めるコトになるとは知らない3人は、それぞれのお気に入りを連れて、転移の場へと入るのだった。
  
 「さぁ…魔法陣の中央に集まってくだされ……では、しばしお待ちを……」

 転移の魔法陣に、魔力を込めて跳ぶ場所を指示し、十分に跳ぶ為の魔力が溜まったのを感じて、大神官長が言う。

 「…………跳びますぞ」

 その言葉と同時に、全員の全身を魔力が包み上げる。

 グニャリとした感覚を感じて、少しした頃に、見たことのある空間に到着していた。

 「……はぁ~……成功しました……無事に、アゼリア王国の転移の場に………」

 と言う言葉が終わらない内に、大神官長が倒れ伏す。

 勿論、今まで10年以上もの間、国土と国民の穢れや災いの浄化を、セシリアに押し付けて、サボっていた国王夫妻も同じように倒れ伏していた。

 ただ、3人ともまだちゃんと意識はあったりする。

 だが、身体が鉛でも詰め込まれたかのように、重くて動けないのだ。

 その上で、吐き気や悪寒が襲って来ていた。

 「陛下っ……」

 「王妃様……」

 「大神官長様っ……」

 倒れ伏す3人に、侍従も侍女も腰ぎんちゃくの神官もワタワタするだけだった。

 勿論、側近に選ばれだけあって、全員が薄いとはいえ、アゼリア王家の血を引いていたので、次々と力なく倒れ伏すだけだった。

 もしも、3人が、お気に入りを選ばずにいたなら………。

 転移で跳ぶ前に、護衛騎士2人を選んでいたならば、即座に3人を転移の場の魔法陣から連れ出し、王宮へと迎えの馬車と医師達の用意をさせていたコトだろう。

 だが、実際に3人が選んだのは、お気に入り達だけだった。

 このコトで、国王夫妻と大神官長が帰還したコトに気付くまでしばらくかかったコトは言うまでもない。

 その中で、セシリアの魔道具を外しただろう、不出来な息子をうらみまくる国王夫妻と、外すコトをそそのかした者をうらむ大神官長が居たのは確かな事実だった。



 エイダン王太子一行に、暴風を纏ったら落雷が落ちるまで、あと少し………。










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