上 下
21 / 173

0020★猫型の魔獣をゲットしました

しおりを挟む


 檻の中にセシリアが入っても、猫型の魔獣はチラリッと見ただけで知らんぷりする。
 一応は、危害を加えられると言う危険がないか、少し警戒していたが、猫型の魔獣に魂?を入れ替えられた者は、既に諦めているのか、ほとんど反応しなかった。

 襲って来る様子が無いコトを確認し、セシリアはグレンの時と同様に、手を伸ばして猫型の魔獣の額に、その手の平をソッと触れさせる。
 そして、取り敢えずの意思疎通ができるかどうかと、念話を送ってみる。

 ーーーー私の声…聞こえるかなぁ?……魂?と身体…入れ替えられているよねーーーー
 ーーーー魂?と身体があっていないから…もしかしたら、答えられないかな?ーーーー

 ーーーー取り敢えず、助けてあげるから…おとなしく付いて来て欲しいのーーーー
 ーーーー了承だったら…んーと……お手……いや、頭下げてくれるかなぁ?ーーーー

 意思疎通できているかを知る為に、お手と言いかけて、張り飛ばされる未来を感じとり、セシリアは すぐさま頭を下げるに変える。

 と、猫型の魔獣から、言葉としては聴き取れないが、何かを訴えられているコトを感じて、無意識にセシリアは頷く。

 目の前の猫型の魔獣は、セシリアの言葉に応じて、上半身を起こして、手を上げかけてから、手を元の位置に戻し、頭を下げる。

 いくら衰弱し、死にかけになっているとはいえ、セシリアを軽く張り飛ばしてしまう膂力がある猫型の魔獣である。

 魂?を入れ替えられた者もそれに思い至り、指定された行動をとりながら、無意識の嬉しさに尻尾をファサリファサリと揺らしていた。
 その手首に嵌まる鎖付きの枷を鍵を使って、全部はずして言う。

 「はい…全部外れたから、ここからさっさと出ようねぇ………一緒に行こう」

 セシリアの言葉に、猫型の魔獣はゆっくりと身体を起こし、その背中についてゆっくりと檻の外に出て来て、ぐぅ~っと伸びをする。
 すっかり飼いならされた従魔という風情に、売れないと嘆いて男はぼう然とする。

 「うそだろぉー……まだ、何にもしてねぇ…んだぞ……」

 セシリアは、ぼう然として呟く男の手に、檻と鎖付き枷の鍵を、その手に無理やり握らせて、デュバインを振り返って言う。

 「売買契約書と譲渡書類……もらったんだよね………」

 セシリアの確認に、デュバインは頷く。

 「ああ、これだ」

 そう言って、目の前でぼう然としてブツブツと呟く男から手渡された契約書や譲渡証明書を、セシリアに差し出す。

 デュバインから書類を受け取り、セシリアは腰に結んだマジックポーチに入れる。
 先ほど受け取ったグレンの譲渡などの書類も、こちらに入れていたりする。

 書類をしまったセシリアに、カレンは声をかける。

 「リアさん…欲しいモノが買い終わったなら、移動しない?」

 その言葉に、エルザもコクコクと頷く。

 「そうだよ、その魔獣……じゃなくて…従魔の手当もした方が良いんじゃないかな?」

 2人の言葉に、ちょっとフラついている猫型の魔獣を見て頷く。

 「……うん…欲しいモノは買ったから……移動したいわ……」

 周囲を警戒していたバウが提案する。

 「なら、また食堂『ごっつもり』に行こうぜ」

 その言葉に、デュバインが頷いて言う。

 「ふむ…リアさんの買った従魔もかなり衰弱しているようだし………そうだな」

 セシリアは、遅い昼食を食べた食堂『ごっつもり』を思い出す。

 あの…じっくりと煮込まれたの…素朴だけど……美味しかったなぁ
 口に入れると…野菜も肉もホロホロと崩れる、具だくさんスープ

 衰弱ししてるけど……消化に良い煮込み料理なら食べるかな?
 流石に、生餌はないよねぇ……生の丸かじりはねぇ………

 「うん…あの食堂の具だくさんスープは美味しかった」

 セシリアの言葉に、カレンとエルザもコクコクする。

 「「だよねぇ~…安くて量がたっぷりだもの………」」

 そんな会話をしながら、セシリアとグレンと猫型の魔獣を囲んで、4人は一緒に移動するのだった。
 勿論、まだ幼体の猫型の魔獣の子供は、しっかりとセシリアの腕に抱き付いたままだったコトは言うまでもない。

 ただ、流石に猫型の大きな魔獣に鎖も付けずに、連れ歩いていたので、注目を浴びていたのは確かなコトだった。
 だが、注目されるコトに慣れているセシリアは、そんなものに頓着するコトは無かった。

 ちなみに、『夢の翼』の4人はというと、怒涛の事態にてんぱり過ぎて、そういうコトに意識がまわるだけの余裕は無かったりする。

 そして、再び食堂『ごっつもり』にくれば、太っ腹な女将さんが、ガーデンテーブルに従魔込みの席を用意してくれた。
 テーブルの上には、軽食とお茶が並ぶ。

 その足元では、具だくさんのスープを嬉しそうに尻尾を揺らしながら食べるかなり大型の猫型魔獣がいた。
 勿論、幼体の方も、小分けにされた具だくさんスープを嬉々として食べていた。

 それを眺めながら、セシリアは女将さん特製のリコを煮込んだジャムもどきをかたい黒パンにのせ、もきゅもきゅと食べながら考えていた。

 このリコって、前世のリンゴによく似ているわねぇ……
 まぁ……酸っぱいし、甘味は少ないし、硬いけどね

 だから、生食できないけど……ちゃんと煮込めば食べれるし
 これはこれで、私てきにはイケるのよねぇ……

 甘味が薄いから……甘くないコンポートかな
 じゃなくて、このあとどうしようかなぁ……

 これ以上は、この4人に……絶対に迷惑かかるだろうし………
 私の正体を知られるのも不味いしねぇ………

 ご飯を食べ終わったら、何とか馬車を手に入れて、速攻で此処を出る
 取り敢えず、冒険者登録はしたし……っと、従魔の登録も必要かぁ……

 そこで、ハタッとそのことに気付いたセシリアは、頑張って自分の意思を口にする。

 「そのぉ…悪いんだけど……従魔の登録……」

 セシリアの言葉に、デュバインが頷く。

 「ああ…それは当然だな……それで、この後どうするんだ?」

 「登録…終わったら…馬車買って……此処を出たい……」

 そう言ってから、済まなそうに続ける。

 「これ以上一緒に居たら……きっと…迷惑……かけるから………」

 セシリアの言葉に、デュバインは頷く。

 「わかった……んじゃ、まずは冒険者ギルドで従魔の登録だな」

 自分達『夢の翼』が、セシリアに付き合えるのは、此処までだと………。




 

  


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】公女が死んだ、その後のこと

杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】 「お母様……」 冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。 古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。 「言いつけを、守ります」 最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。 こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。 そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。 「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」 「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」 「くっ……、な、ならば蘇生させ」 「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」 「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」 「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」 「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」 「まっ、待て!話を」 「嫌ぁ〜!」 「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」 「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」 「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」 「くっ……!」 「なっ、譲位せよだと!?」 「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」 「おのれ、謀りおったか!」 「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」 ◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。 ◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。 ◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった? ◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。 ◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。 ◆この作品は小説家になろうでも公開します。 ◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!

転生後モブ令嬢になりました、もう一度やり直したいです

月兎
恋愛
次こそ上手く逃げ切ろう 思い出したのは転生前の日本人として、呑気に適当に過ごしていた自分 そして今いる世界はゲームの中の、攻略対象レオンの婚約者イリアーナ 悪役令嬢?いいえ ヒロインが攻略対象を決める前に亡くなって、その後シナリオが進んでいく悪役令嬢どころか噛ませ役にもなれてないじゃん… というモブ令嬢になってました それでも何とかこの状況から逃れたいです タイトルかませ役からモブ令嬢に変更いたしました ******************************** 初めて投稿いたします 内容はありきたりで、ご都合主義な所、文が稚拙な所多々あると思います それでも呼んでくださる方がいたら嬉しいなと思います 最後まで書き終えれるよう頑張ります よろしくお願いします。 念のためR18にしておりましたが、R15でも大丈夫かなと思い変更いたしました R18はまだ別で指定して書こうかなと思います

ヒロインに悪役令嬢呼ばわりされた聖女は、婚約破棄を喜ぶ ~婚約破棄後の人生、貴方に出会えて幸せです!~

飛鳥井 真理
恋愛
それは、第一王子ロバートとの正式な婚約式の前夜に行われた舞踏会でのこと。公爵令嬢アンドレアは、その華やかな祝いの場で王子から一方的に婚約を解消すると告げられてしまう……。しかし婚約破棄後の彼女には、思っても見なかった幸運が次々と訪れることになるのだった……。 『婚約破棄後の人生……貴方に出会て幸せです!』  ※溺愛要素は後半の、第62話目辺りからになります。 ※ストックが無くなりましたので、不定期更新になります。 ※連載中も随時、加筆・修正をしていきます。よろしくお願い致します。 ※ 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

収納持ちのコレクターは、仲間と幸せに暮らしたい。~スキルがなくて追放された自称「か弱い女の子」の元辺境伯令嬢。実は無自覚チートで世界最強⁉~

SHEILA
ファンタジー
生まれた時から、両親に嫌われていた。 物心ついた時には、毎日両親から暴力を受けていた。 4年後に生まれた妹は、生まれた時から、両親に可愛がられた。 そして、物心ついた妹からも、虐めや暴力を受けるようになった。 現代日本では考えられないような環境で育った私は、ある日妹に殺され、<選択の間>に呼ばれた。 異世界の創造神に、地球の輪廻の輪に戻るか異世界に転生するかを選べると言われ、迷わず転生することを選んだ。 けれど、転生先でも両親に愛されることはなくて…… お読みいただきありがとうございます。 のんびり不定期更新です。

婚約破棄された悪役令嬢。そして国は滅んだ❗私のせい?知らんがな

朋 美緒(とも みお)
ファンタジー
婚約破棄されて国外追放の公爵令嬢、しかし地獄に落ちたのは彼女ではなかった。 !逆転チートな婚約破棄劇場! !王宮、そして誰も居なくなった! !国が滅んだ?私のせい?しらんがな! 18話で完結

婚約「解消」ではなく「破棄」ですか? いいでしょう、お受けしますよ?

ピコっぴ
恋愛
7歳の時から婚姻契約にある我が婚約者は、どんな努力をしても私に全く関心を見せなかった。 13歳の時、寄り添った夫婦になる事を諦めた。夜会のエスコートすらしてくれなくなったから。 16歳の現在、シャンパンゴールドの人形のような可愛らしい令嬢を伴って夜会に現れ、婚約破棄すると宣う婚約者。 そちらが歩み寄ろうともせず、無視を決め込んだ挙句に、王命での婚姻契約を一方的に「破棄」ですか? ただ素直に「解消」すればいいものを⋯⋯ 婚約者との関係を諦めていた私はともかく、まわりが怒り心頭、許してはくれないようです。 恋愛らしい恋愛小説が上手く書けず、試行錯誤中なのですが、一話あたり短めにしてあるので、サクッと読めるはず? デス🙇

どう頑張っても死亡ルートしかない悪役令嬢に転生したので、一切頑張らないことにしました

小倉みち
恋愛
 7歳の誕生日、突然雷に打たれ、そのショックで前世を思い出した公爵令嬢のレティシア。  前世では夥しいほどの仕事に追われる社畜だった彼女。  唯一の楽しみだった乙女ゲームの新作を発売日当日に買いに行こうとしたその日、交通事故で命を落としたこと。  そして――。  この世界が、その乙女ゲームの設定とそっくりそのままであり、自分自身が悪役令嬢であるレティシアに転生してしまったことを。  この悪役令嬢、自分に関心のない家族を振り向かせるために、死に物狂いで努力し、第一王子の婚約者という地位を勝ち取った。  しかしその第一王子の心がぽっと出の主人公に奪われ、嫉妬に狂い主人公に毒を盛る。  それがバレてしまい、最終的に死刑に処される役となっている。  しかも、第一王子ではなくどの攻略対象ルートでも、必ず主人公を虐め、処刑されてしまう噛ませ犬的キャラクター。  レティシアは考えた。  どれだけ努力をしても、どれだけ頑張っても、最終的に自分は死んでしまう。  ――ということは。  これから先どんな努力もせず、ただの馬鹿な一般令嬢として生きれば、一切攻略対象と関わらなければ、そもそもその土俵に乗ることさえしなければ。  私はこの恐ろしい世界で、生き残ることが出来るのではないだろうか。

言いたいことはそれだけですか。では始めましょう

井藤 美樹
恋愛
常々、社交を苦手としていましたが、今回ばかりは仕方なく出席しておりましたの。婚約者と一緒にね。 その席で、突然始まった婚約破棄という名の茶番劇。 頭がお花畑の方々の発言が続きます。 すると、なぜが、私の名前が…… もちろん、火の粉はその場で消しましたよ。 ついでに、独立宣言もしちゃいました。 主人公、めちゃくちゃ口悪いです。 成り立てホヤホヤのミネリア王女殿下の溺愛&奮闘記。ちょっとだけ、冒険譚もあります。

処理中です...