上 下
18 / 173

0017★奴隷に仮名を付けました

しおりを挟む


 セシリアにジャラリと魔石?と宝石?をのせられたデュバインは、自分の手の平を見て硬直する。

 側で見ていたカレンとエルザが、思わず両腕でバッテンにする。

 えーと……その……やっぱり……足りないってコトよねぇ………
 いや、まだまだ、魔石?と宝石?は……いっぱいあるから………

 と、セシリアが再び、フード付きマントの内側をごそごそしだしたコトにハッとして、バウが首を振って言う。

 「いやいやいやいや……多過ぎるだろう………なぁ………」

 そのバウの声でハッとしたデュバインもコクコクして首を振る。

 「……あ……いや…多いから……つーか多過ぎだから………」

 言葉が思うように出ない2人に、小首を傾げたセシリアは、ちょっと考える。

 あぁ~ん………金額のレートが全然わからないから…………
 カレンとエルザのバッテンは、そういうコトなのぉ………

 だからって、一度出したモノ回収する気なんて無いし……んぅ~………
 ………と、そうだ………良いコトを思い付いたわ………

 奴隷ゲットしたら別れようと思ったけど………もうちょっと良いよね………
 この奴隷の身体の持ち主と交換された魔獣?の代金ってコトにでもすれば………

 「なら………従魔の販売区域で……従魔…探すってことで…………」

 該当の従魔探しと、買い取り値段ってことで、手渡した魔石?と宝石?の返品をさりげなく回避する。

 セシリアが返品を受け付けないコトを見て取り、4人はちょっと溜め息を吐きながら頷く。

 「そんじゃ………これから探しに行く?」

 エルザの言葉に、カレンが首を振る。

 「まず、その前にその奴隷の装備を整えて………そしたら、ご飯を食べましょう」

 言われて、全員のお腹がくぅぅ~っと小さくなる。

 「あははは………なんかバタバタして、昼メシ忘れていたわ」

 バウの言葉に、こっそりと新しい古代遺跡の『ダンジョン』に潜り込んだ4人は、肩を竦める。
 そんなやり取りを見て、首を傾げたセシリアは、自分の隣りにしゃがみ込み、見上げている真紅の長髪の細マッチョの頭をナデナデしながら考えていた。

 ………えぇーとぉ…そう言えば、今って何時なのかしら?………
 時間の感覚がおかしくなっているみたいで、何時がわからないわねぇ………

 王国歴より………大陸歴のが良いわよねぇ………この大陸の名前って………
 そうそう……たしかアシュトン大陸だったはず……滅びしアシュトン神聖国………

 近年、なんとか解読された古文書に載っいた………私達の住む大陸名………
 神子と呼ばれる者が居た時代を代表して、そう呼ばれていたはず………

 「えーと……その…今っ………何時なのでしょうか?……そのアシュトン歴で……」

 時空間のズレも考慮して聞けば、デュバインが首を傾げて言う。

 「リアさんが何時、転移魔法陣で跳ばされたかわからないし…アシュトン歴ってやつでは、わからないけど………今は、ロマリス王国で………ちょうど500年だっけか?」

 話しをふられたエルザが頷いて言う。

 「うん…確か前の王国がクーデターで滅亡して、建国から…ちょうど500年………」

 「先月の7月が建国記念日だったので大変だったわねぇ~………」

 「ほぉ~んと………見栄っぱりだからさぁ~………」

 「色々な他国の王族とか呼んで、盛大に建国500年祭をしたセイで、王都の方はもっと大変だったらしいぜ」

 「そのお陰で、冒険者ギルドも忙しくて、新しい『ダンジョン』も未探索なんだよね」

 「まっ…だからまだ、正式な『ダンジョン』の名前もないんだよな」

 「そっ…危険度もわからないから、出入口も封鎖されてないし………」

 「だから、物は試しで、入った者勝ちさぁ………」

 「まず、1階部分なら、俺達みたいな低ランクでも大丈夫………」

 デュバインと頷くエルザ達の言葉で、セシリアは内心で頷く。

 あははは………そう言えば、建国祭に出席する為に不在だったんだっけ………
 近場の隣国のひとつってコトで、王と王妃と神官長で出席だったのよねぇ………

 ………って、そう言えば、魔法長は?………あれ?息子は攻略対象?
 いやいや………もう、そんなコトどうでも良いことよねぇ………

 そう言えば、この異世界の単位も日本の単位とほぼ変わらなかったわねぇ………
 年とか時間も……助かるわねぇ……覚えなおさなくて良いんだもの………

 前世の記憶が混じったセイで、セシリアとしての記憶が混乱中だから………
 にしても、大陸名は乙女ゲームで出て来たモノなのね………なるほど………

 「だから、ロマリス王国の歴で500年よ……今日は8月の2日ね」

 ふむ………卒業パーティーが7月の29日でしたから…………
 パーティー会場で意識を失ってから馬車で運ばれて…フフフフ………

 良かったわぁ……妙な時間のズレはなさそうねぇ………
 でも、どうりで喉は渇いているしお腹が空いているはずね………

 「んで、もう4時だわ……流石にお腹すいたわねぇ~………」

 「取り敢えず、その奴隷の装備を整えてご飯食べましょう」

 「「「さんせぇ~……」」」

 その言葉に、セシリアも頷く、勿論喋れずとも、言葉を理解している、奴隷の中のソレもコクコクと頷く。

 「そんじゃ、量もあって安い……食堂『ごっつもり』に行こうぜ」

 そうして、奴隷市区域から歓楽街の端にある安宿や酒場へと移動するコトにした。

 その際に、奴隷商が売買終了と共に逃げてしまった為、買った奴隷の名前がわからないので、仮の名前として、真紅の髪の色から、グレンと呼ぶことに決めた。

 「それじゃ……グレン…行こう………」

 買われる前の暴れが嘘のように、真紅の長髪の男、仮名グレンはセシリアの後に付いて行く。

 食堂『ごっつもり』に行く道すがら、道具屋が有ったので、そこでグレンの服を調達した。

 身体に合いそうな服をグレンに着せた後、武器防具は後と、さっさと食堂『ごっつもり』へと直行した。

 勿論、服を着せる前に、セシリアの生活魔法で、グレンの汚れきった身体を綺麗にして着せたコトは言うまでもない。

 ちなみに、ロマリス王国は幾重もの防護壁が張られていたりする。

 中心より少し東よりに王城があり、それを守る高い城壁がそびえ立っていた。
 その外には、諸外国に有名なべらぼうなお金と地位が無ければ入れない、高い逃亡防止用の壁に囲まれた遊廓が存在していた。

 そして、それぞれ、外に向かって、上級貴族が住む区域があり、次の防護壁に中級貴族の区域があり、また、防護壁があり下級貴族区域。
 その外には、更に裕福階級の区域、一般市民の区域、下級市民の区域に、貧民街となっていた。

 ちなみに、すべての土地は、ロマリス王国の王族もモノとされていた。
 あくまでも、借りて住んでいるというカタチだった。

 勿論、貧民街の民とて、ロマリス王国の大事な資産なので、勝手に殺したりすると、場合によっては、重罪になったりするコトも、しばしばあるのだ。

 余談だが、貧民街の生まれでも、容姿端麗ならば、遊廓に引っ張って行かれるコトがあるので、勝手な売買も禁止されていた。

 諸外国の外交官や王侯貴族の欲を満たし、お金を落としてくれるので、遊廓に連れて行かれた者は、案外、幸せだったりする。

 そして、遊廓に落とされる大金を元に、ロマリス王国の王族は、今の防護壁の更に外側に新たな防護壁を建築することを目論んでいた。

 そこまでロマリス王国の王族が下々までゆるぅーくだが管理しているのは、クーデターによって滅亡した前王国の持つ技術と財宝を盗られない為だったりする。

 ようするに、現在のロマリス王国は、滅んだ前王国の上に立っているのである。
 現在、前王国の7割を防護壁で囲んだ状態だったりする。

 







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】公女が死んだ、その後のこと

杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】 「お母様……」 冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。 古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。 「言いつけを、守ります」 最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。 こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。 そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。 「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」 「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」 「くっ……、な、ならば蘇生させ」 「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」 「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」 「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」 「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」 「まっ、待て!話を」 「嫌ぁ〜!」 「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」 「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」 「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」 「くっ……!」 「なっ、譲位せよだと!?」 「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」 「おのれ、謀りおったか!」 「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」 ◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。 ◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。 ◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった? ◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。 ◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。 ◆この作品は小説家になろうでも公開します。 ◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!

転生後モブ令嬢になりました、もう一度やり直したいです

月兎
恋愛
次こそ上手く逃げ切ろう 思い出したのは転生前の日本人として、呑気に適当に過ごしていた自分 そして今いる世界はゲームの中の、攻略対象レオンの婚約者イリアーナ 悪役令嬢?いいえ ヒロインが攻略対象を決める前に亡くなって、その後シナリオが進んでいく悪役令嬢どころか噛ませ役にもなれてないじゃん… というモブ令嬢になってました それでも何とかこの状況から逃れたいです タイトルかませ役からモブ令嬢に変更いたしました ******************************** 初めて投稿いたします 内容はありきたりで、ご都合主義な所、文が稚拙な所多々あると思います それでも呼んでくださる方がいたら嬉しいなと思います 最後まで書き終えれるよう頑張ります よろしくお願いします。 念のためR18にしておりましたが、R15でも大丈夫かなと思い変更いたしました R18はまだ別で指定して書こうかなと思います

ヒロインに悪役令嬢呼ばわりされた聖女は、婚約破棄を喜ぶ ~婚約破棄後の人生、貴方に出会えて幸せです!~

飛鳥井 真理
恋愛
それは、第一王子ロバートとの正式な婚約式の前夜に行われた舞踏会でのこと。公爵令嬢アンドレアは、その華やかな祝いの場で王子から一方的に婚約を解消すると告げられてしまう……。しかし婚約破棄後の彼女には、思っても見なかった幸運が次々と訪れることになるのだった……。 『婚約破棄後の人生……貴方に出会て幸せです!』  ※溺愛要素は後半の、第62話目辺りからになります。 ※ストックが無くなりましたので、不定期更新になります。 ※連載中も随時、加筆・修正をしていきます。よろしくお願い致します。 ※ 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

婚約「解消」ではなく「破棄」ですか? いいでしょう、お受けしますよ?

ピコっぴ
恋愛
7歳の時から婚姻契約にある我が婚約者は、どんな努力をしても私に全く関心を見せなかった。 13歳の時、寄り添った夫婦になる事を諦めた。夜会のエスコートすらしてくれなくなったから。 16歳の現在、シャンパンゴールドの人形のような可愛らしい令嬢を伴って夜会に現れ、婚約破棄すると宣う婚約者。 そちらが歩み寄ろうともせず、無視を決め込んだ挙句に、王命での婚姻契約を一方的に「破棄」ですか? ただ素直に「解消」すればいいものを⋯⋯ 婚約者との関係を諦めていた私はともかく、まわりが怒り心頭、許してはくれないようです。 恋愛らしい恋愛小説が上手く書けず、試行錯誤中なのですが、一話あたり短めにしてあるので、サクッと読めるはず? デス🙇

収納持ちのコレクターは、仲間と幸せに暮らしたい。~スキルがなくて追放された自称「か弱い女の子」の元辺境伯令嬢。実は無自覚チートで世界最強⁉~

SHEILA
ファンタジー
生まれた時から、両親に嫌われていた。 物心ついた時には、毎日両親から暴力を受けていた。 4年後に生まれた妹は、生まれた時から、両親に可愛がられた。 そして、物心ついた妹からも、虐めや暴力を受けるようになった。 現代日本では考えられないような環境で育った私は、ある日妹に殺され、<選択の間>に呼ばれた。 異世界の創造神に、地球の輪廻の輪に戻るか異世界に転生するかを選べると言われ、迷わず転生することを選んだ。 けれど、転生先でも両親に愛されることはなくて…… お読みいただきありがとうございます。 のんびり不定期更新です。

婚約破棄された悪役令嬢。そして国は滅んだ❗私のせい?知らんがな

朋 美緒(とも みお)
ファンタジー
婚約破棄されて国外追放の公爵令嬢、しかし地獄に落ちたのは彼女ではなかった。 !逆転チートな婚約破棄劇場! !王宮、そして誰も居なくなった! !国が滅んだ?私のせい?しらんがな! 18話で完結

どう頑張っても死亡ルートしかない悪役令嬢に転生したので、一切頑張らないことにしました

小倉みち
恋愛
 7歳の誕生日、突然雷に打たれ、そのショックで前世を思い出した公爵令嬢のレティシア。  前世では夥しいほどの仕事に追われる社畜だった彼女。  唯一の楽しみだった乙女ゲームの新作を発売日当日に買いに行こうとしたその日、交通事故で命を落としたこと。  そして――。  この世界が、その乙女ゲームの設定とそっくりそのままであり、自分自身が悪役令嬢であるレティシアに転生してしまったことを。  この悪役令嬢、自分に関心のない家族を振り向かせるために、死に物狂いで努力し、第一王子の婚約者という地位を勝ち取った。  しかしその第一王子の心がぽっと出の主人公に奪われ、嫉妬に狂い主人公に毒を盛る。  それがバレてしまい、最終的に死刑に処される役となっている。  しかも、第一王子ではなくどの攻略対象ルートでも、必ず主人公を虐め、処刑されてしまう噛ませ犬的キャラクター。  レティシアは考えた。  どれだけ努力をしても、どれだけ頑張っても、最終的に自分は死んでしまう。  ――ということは。  これから先どんな努力もせず、ただの馬鹿な一般令嬢として生きれば、一切攻略対象と関わらなければ、そもそもその土俵に乗ることさえしなければ。  私はこの恐ろしい世界で、生き残ることが出来るのではないだろうか。

言いたいことはそれだけですか。では始めましょう

井藤 美樹
恋愛
常々、社交を苦手としていましたが、今回ばかりは仕方なく出席しておりましたの。婚約者と一緒にね。 その席で、突然始まった婚約破棄という名の茶番劇。 頭がお花畑の方々の発言が続きます。 すると、なぜが、私の名前が…… もちろん、火の粉はその場で消しましたよ。 ついでに、独立宣言もしちゃいました。 主人公、めちゃくちゃ口悪いです。 成り立てホヤホヤのミネリア王女殿下の溺愛&奮闘記。ちょっとだけ、冒険譚もあります。

処理中です...