上 下
3 / 173

0002★状況確認をしましょうか

しおりを挟む
 

 セシリアは現状を認識し、無意識に頷く。

 まずは、私を運んでいる者達の確認をしないとね
 でもって、何を考えているか?
 どんな命令を出されているか?

 それと、エイダン王太子に追放宣告されてから、どのぐらい時間が経ったかよね
 国の生贄として、澱みや穢れの浄化の器としての私はもう居ない

 私に集まっていたモノは無くなり、魔道具を持つ者へと殺到するはず
 そのコトに気付くのが、何時かってコトよねぇ………

 王も王妃も神官長も、あと20日は帰国しないはずだけど
 国に異変があれば、どうしたって戻って来る

 まして、転移ができる神官長も一緒にいるんだもの
 何時、転移で戻ってくるか………時間との勝負よねぇ

 とはいえ、焦っても良いコトはないわ
 とりあえず、まずは状況を確認よ

 下手に動けば、いくらガタガタと音を立てていても馬車の御者をしている者達に気付かれる可能性があるので、セシリアは双眸を閉じて、耳に意識を集中する。

 幼少期から、エイダン王太子が本来学ぶはずの、あらゆる魔法から帝王学までを学習させられたセシリアは、身体強化などもできるようになっていた。

 聴覚をより強化し、外での会話を聴き取る。 

 『なぁ…あの樽のようなお嬢ちゃん…この辺で捨ててかないか?』

 『あっ俺もソレに賛成』

 『あのお嬢ちゃん…公爵令嬢なんだろ』

 『下手に、商業都市の中央楼閣にある遊廓に放り込んだらヤバイって………』

 『だが、俺達は頭に売ってこいと命じられた……それも、奴隷として売ったという……契約書を持ちかえれとも命じられている』

 『いくら、そうしろって命令されたってさぁ』

 『魔獣に襲われたコトにして、捨てようぜ』

 『もう、この際だからさぁ……俺達も、あの国捨てて別の国に行こうぜ』

 『こんなヤバイ命令されたってコトはさぁ………』

 『俺達も切られたってコトだろ………』

 『ああ…そんなコト理解ってる…けど……』

 『ふふふふ………それならもう手配してあるよぉ~……』

 『『『『えっ手配って?』』』』

 『招集されたメンツ見てヤバイって思ったんだぁ………』

 『ああ、それは俺も思った…過去に頭に睨まれた奴等ばかりだって……』

 『うん…だから、俺はみんなの家族を説得し回ったんだ』

 『何時の間に?』

 『あはは……頭に酒持ってこいって命令された時にね』

 『ああ、あの時か………』

 『みんなには黙ってたけど、長距離は跳べないけど、転移モドキはできるからさぁ…』

 『そんな特技あったのか………』

 『ああ…んで、別の門から出でもらって、今頃は国境の検問越えていると思うよ』
 
 そんな会話に、セシリアは嘆息する。

 はぁ~…会話からは、時間の経過は判りませんわねぇ………
 まぁ…声の数からして、御者台と屋根に居るのは4人か5人ってコトね

 それにしても、私の側に見張りとして居ないのは……やっぱり…へこみますわねぇ……
 この色彩が不気味だからかしらねぇー……はぁ~……

 はぁ~……今の現在地が何処だかわかりませんが、不味いですわね
 というか、商業都市の中央楼閣にある遊廓って………

 こんな……自分で言うのもなんでが、醜い姿の私を売るの?
 流石に、無理でしょ………

 売買以前に、引き取りすら無理だと思うのよねぇ………
 じゃなくて、現在地は何処になるのかしら?

 商業都市で中央に楼閣と遊廓がある都市って言ったら、ロマリス王国よねぇ
 あそこって、ゲテ専もあるの?
 まぁ…異種族に平気で盛る……変態が……げふんげふん……

 じゃなくて、とりあえず、ロマリス王国に向かってるのね
 なら、西の門から出たってコトよねぇ……たぶん

 確か砂漠を迂回しないとダメなのよねぇー……
 サンドワームにサントアントとサンドアリゲーター
 それに、サンドスコーピオンもいるわよねぇ………

 あと忘れちゃいけないのが、蟻地獄よね
 正体不明の流砂の中に潜む魔物って言われるアレ

 流砂の中に、漏斗状態の場所が有ったら危険なのよねぇ
 確か、1割ぐらいの確率で居るって何かの報告書で読んだわ

 あれは、冒険者ギルドからの報告書だったかしら?
 ロマリス王国に向かう砂漠にそんな場所が有るって………

 はぁ~……やんなっちゃうわねぇ……捨てる以前に、襲われるわよ
 最近、盗賊よりも魔物の被害増えているって報告上がって来ていたし

 討伐の為に、騎士団の派遣要請が何日か前に上がってたはずなのよねぇ
 サンドリザードにサンドスネークも居るし………
 それも、毒持ちが多いのよねぇ………

 などと考えている間に、馬車の御者台との間の扉が開き、3人の男が馬車内に飛び込んできた。

 1人がセシリアの側を駆け抜けて、バンッと後部の扉を開く。
 同時に飛び込んで来た男2人が、ガシッとセシリアの手首と足首をそれぞれ掴む。

 えっ?……ええっ!……なにっ?…なにっ?…ひえぇぇっ…………
 なにごとぉ~っ?……って?………えぇぇぇ~………

 驚きすぎて猫だま状態のセシリアは身動くコトもできない。

 一方、男達は無言でびっくりしているセシリアの手足を鷲掴みにして、開かれた後部の扉から、無造作にポイッと捨てるのであった。







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

転生した愛し子は幸せを知る

ひつ
ファンタジー
 宮月 華(みやつき はな) は死んだ。華は死に間際に「誰でもいいから私を愛して欲しかったな…」と願った。  次の瞬間、華は白い空間に!!すると、目の前に男の人(?)が現れ、「新たな世界で愛される幸せを知って欲しい!」と新たな名を貰い、過保護な神(パパ)にスキルやアイテムを貰って旅立つことに!    転生した女の子が周りから愛され、幸せになるお話です。  結構ご都合主義です。作者は語彙力ないです。  第13回ファンタジー大賞 176位  第14回ファンタジー大賞 76位  第15回ファンタジー大賞 70位 ありがとうございます(●´ω`●)

転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。 けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。 そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。 ‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。 「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

世界樹の下で

瀬織董李
ファンタジー
神様のうっかりで死んでしまったお詫びに異世界転生した主人公。 念願だった農民生活を満喫していたある日、聖女の代わりに世界樹を救う旅に行けと言われる。 面倒臭いんで、行きたくないです。え?ダメ?……もう、しょうがないなあ……その代わり自重しないでやっちゃうよ? あれ?もしかしてここ……乙女ゲームの世界なの? プロット無し、設定行き当たりばったりの上に全てスマホで書いてるので、不定期更新です

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

処理中です...