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39.合コンで持ち帰り?5

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 合コンも終盤に差し掛かって女の子達がそわそわし始めた。意を決して一人の女子が口を開いた。

「あのぉ、よかったら連絡先教えて」
「あたしも」
「あ、ずるいっ……私もお願い!」

 女の子達は上目遣いで霧谷、花岡、春風に向けて話した。女子達の可愛らしい目の奥には各々熱い何かが宿っているように真剣だ。

「僕は普段携帯を持ち歩いてないんだ。ごめんね」
「あー、俺もだ」
「うーん、えっと……俺のは今修理中だよー」

(お前ら絶対嘘だろ……)

 三人はそう話すが、学校やプライベートを見ているから携帯は普段から常に持ち歩いてると断言出来る。連絡先を欲しそうにしている可愛い女子達に誤魔化す理由が理解しがたい。女とワンチャンあるかも知れないのに勿体無い。

 女子達は「一之瀬くんは……」と期待の眼差しで霧谷達から標的を一之瀬に変えた。その切り替えの早さに呆れとどんよりとした気持ちが混ざる。

 仕方なく俺のは……と下のポケットから携帯を出そうとしたら花岡に急に手首を掴まれて制止させられる。

 何故、お前が止めようとする。

「一之瀬は俺の……だ──」

「あ、あぁ……メモ用紙とかに連絡先書いてくれると僕はありがたいな。なぁ、霧谷?」
「えぇっ、俺に振るなって。あ……そうそう、忘れないように何かに書いた方がいいな。それに女の子の字好きなんだよねー」

「へー、そうなの? よかったぁ。私、メモ帳持ってたんだー。連絡先書いておくね!」
「次、私ね」
「あたしも書く~」

 花岡の言葉を遮って春風が連絡先について女子達に提案をする。霧谷も巻き込んでまでだ。女子達は嬉しそうに頬を赤くして順番に連絡先を書いて行く。
 またイケメンリア充どもに持ってかれたと悔しがるが、何故か今回は胸の奥が何かつっかえたような不安定な感情を抱く。

「あぁー、つまんねーの。今日は期待外れだったわー」

 不貞腐れ気味な久保田は山下の方を一度睨んでテーブルの上にバンッと札を何枚か置いて店の外に出て行った。
 「久保田くん、どうしたんだろう?」とか「今のはちょっと感じ悪かったねぇ」と女子達はひそひそと困惑した顔で話していた。
 その後、盛り上がりが落ち着き丁度いい所で合コンはお開きとなった。

「あのぉ、この後、私達とカラオケ行かない?」
「みんなで行こーよ! 凄く楽しかったし、まだ帰りたくないなぁ」

 帰り際にみんなに向けて女子達に誘われた事により一之瀬のテンションが爆上がりした。霧谷はおー、いいね~とノリノリで嬉しそうに笑っている。山下は何やら複雑そうな顔をしていた。カラオケが苦手だったのかそれとも疲れてしまったかは表情から読めない。武田はこれから何があるの? と純粋な子供みたいな輝いた瞳をしている。

 女子達の誘いに花岡と春風は目を見合わせていたが、付き合いが長い分目の合図だけで何か通じるものがあるかもしれない。

「俺らはこれから予定があるんだ。誘ってくれたのに悪いな」
「ごめんね、タイミングが合わなくて残念だな。次に機会があったら誘ってね」

 花岡と春風は残念そうに断るが、一之瀬にとってはその様子は腑に落ちない。

(残念そうには見えねぇよな……。特に花岡が……なぁ)

 花岡は顔を作っているかのように不自然だった。嘘が下手過ぎて笑いそうになった。春風の方は何となくだった。一之瀬とは付き合いは数ヶ月だが、初見では中々わからないと思う。

 こいつらは帰ってしまうと思うと少し寂しい気がする。まぁ、いい。残りのメンバーでカラオケを楽しむ事にするか。

「さぁ、一之瀬。僕らと一緒に帰ろう」
「……えっ? 俺もか?」
「一之瀬、さっさと行こうぜ! お前との時間が勿体ねぇからな」
「おいっ……待てって」

 話の流れでカラオケに参加しようと思っていたら、半端強制的に帰る事になった。「じゃあなー」と合コンメンバーに向けて大きめに言ったが、聞こえてたかはわからない。

 花岡と春風と手を繋ぎながら引っ張られるように歩いた。期待はしていたが、合コンの成果が得られずに結果、この男二人にお持ち帰りされてしまったようだ。
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