悪徳夫人の娘

猫狐

文字の大きさ
上 下
4 / 8
1章

4話

しおりを挟む
「何なのですか?せっかくわたくし達が着飾って差し上げてるのにひどいわ!?
そうですよね~お母様。」

と、思いっきり侮蔑の目を向けて睨み付けた。横目で母親が大仰に頷くのが見えた。

「そうよ!アリアスの言うとおりよ!!貴方ごときがわたくしの邪魔をしないで頂戴。」

「だから!お前の浪費のせいで我が家は回らなくなっているんだ!いい加減にしろ!?」

「その言い方は何なのよ!それはわたくしのせいではないわ!!わたくしはオンハラート家が侮られないために、当然のことをしているだけですもの。」

「当然のことの訳あるか!!本来は民のために使われるお金を全てお前たちが、食い潰しているんだぞ!?王家から毎年貰っている、かなりの額のお金も!ほんとにどうしようもない奴らだな。」

「まあまあ、旦那様落ち着いて。」

ちなみにこれは日常茶飯事である。

母親と父親が口論して、母親が癇癪を起こして暴れ始め、最後に執事のクレイルが仲裁に入る。この間、私はずっと侮蔑のこもった目で父親を睨み付けている。

ああー、目と表情筋が疲れる。っていうかクレイル、オクサマオチツイテ~はないんだね。旦那様はあるのに。

おっと、母親が取り抑えられてる。そろそろこっちにも来るかなー。目一杯暴れないと。

「何するのよ!?わたくしは侯爵家のご令嬢よ、放しなさいよ!!」

「申し訳ございません、旦那様のご命令ですので。」

暴れる私を部屋まで抱えて連れていくクレイル。子供の抵抗ではびくともしない。

さっきも思ったけど、クレイルって執事だよね?子供の抵抗とはいえ、抱えられた所で大暴れしてるのに、びくともしないっておかしくない?後でリリーに聞いてみないと。

母親も父親に抱えられて、部屋に連れていかれていた。こちらもなかなかすごい。

あの人、目視でたぶん100キロを超えてるよ?

でも、まぁ父親は騎士団長だしね。まだ、分かる。

抱えるっていうのは、お姫様だっこのことなのに、全くムードがないね。見ていて清々するぐらいだよ。

お姫様だっこで部屋まで連れていかれてるって状況だけ見れば、すごいロマンチックに感じるはずなのに、この二人がすれば全然そんな感じがしないなんて、最早大嫌いの極地に達しているよ。

お、部屋に着いた。

お出かけも無くなったし、さっさとこの重い服を脱ごおっと。

はぁ、軽くなった。じゃ、疲れたし軽く運動しよう。

この時間なら、裏の森には誰もいない。メイドに扮してレッツゴー!

ちゃんと変装はしてるよ?ほんとだよ?

私の髪は銀色で珍しいし、瞳は王家のしるしである紫色と母親の眼の深い青色とのオッドアイで私しかいないらしいから、見つかったら、即バレるし。

実は四歳頃から抜け出しているから、もう慣れちゃったよ。

日々面白がりながら過ごしても、ずっとあれがあるわけではないし。部屋でやることと言えば、リリーに持ってきてもらった本を読むか、リリーとおしゃべりするか、癇癪を起こしたふりをするかぐらいしかやることがなくて暇なんだよ~。

部屋からは母親の許可が出ないと、出させてもらえないし。

心の中で必死に言い訳をしながら、気配を消して歩いていく。

この森が特別なのか、それともこの世界では普通のことなのか分からないが、簡単に気配も周りの音も消せる。

森の入り口まで来て(アラウー見せてー。)と、心の中で叫んだ。

すると、目の前の景色が一気に変わった_。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。  しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。  冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!  わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?  それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~

涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!

別に要りませんけど?

ユウキ
恋愛
「お前を愛することは無い!」 そう言ったのは、今日結婚して私の夫となったネイサンだ。夫婦の寝室、これから初夜をという時に投げつけられた言葉に、私は素直に返事をした。 「……別に要りませんけど?」 ※Rに触れる様な部分は有りませんが、情事を指す言葉が出ますので念のため。 ※なろうでも掲載中

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...