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第十話 誰かこの暴君を殴ってくれ!
07
しおりを挟む当然だ。俺は俺の酒を譲ったりしない。俺のだからだ。できれば無限に飲んでいたい。
この不自然さを払拭するために、俺はプイ、とそっぽを向く。
「誕生日、祝ってくれたから。嬉しいから、今日は特別。今日だけの酒だ。わかったらさっさとそれを空にして俺によこせ。酌してやる」
もちろん真っ赤な嘘である。
それはもう毒々しいほど赤い嘘である。
この程度のしおらしい発言で釣れる確信はないが、これはエビで鯛を釣るシステムだった。
「んー……?」
三初は俺からの提案を聞いて、なにを考えているのかわからない表情で思案する。
先輩で年上である俺が、大事な大事な最後の一杯を、手酌で差し出すと言っているのだ。相当貴重な体験だろう。
こんなに貴重なエサを差し出しているのだから、さっさとノればイイ。
じれったい態度にもどかしさを感じ、「早くしねぇともう今日は口利かねぇ」と据わった瞳で睨みつけた。
すると三初は適当な返事をして、手に持ったグラスを一気に煽る。
しめた、と内心でほくそ笑んだ。
表情には出さない。ざまぁみやがれ、という強情な気分である。
さらされた喉仏がゴク、ゴク、と動くのをしっかりと見届け、三初が空のグラスをテーブルに置く様を目視で確認。
コン、とテーブルにグラスが当たって硬質な音が鳴る。
「はい、どーぞ? 接待してくださいよ」
「ん」
片眉を上げてからかうような言い草をする三初に、俺はなにも文句を言わず、期待に満ちた鼓動を隠してグラスに酒を注いだ。
(ふん、馬鹿め。俺の完全犯罪を知らず、飲み干しやがった)
こうなったら三初は俺にデレるだけである。
いつ頃効き始めるのかわからないが、そのうち気分が高揚して俺に触りたくなるんだろう。
俺が注いだ酒もグッと飲み干した三初は、その時を今か今かと待っていた俺にちょいちょいと手をこまねいた。
理由は不明だが、呼ばれている。
呼ばれているなら行きたくない。が、行かねば強引な手段に出られるだろう。
ガタン、と椅子から立ち上がって、仏頂面で三初のそばへ歩み寄る。
立ち上がって歩く足取りが覚束ないものになっているので、俺はかなり限界だ。
このまま倒れて寝落ちする可能性が大である。
どうにかこうにか目の前に立つと、三初は俺に赤ワインがなみなみ注がれたグラスを差し出し、ニンマリとキャットスマイルで俺の手に握らせた。
「は? ぁ、ん?」
「ちゃんと明日起こしてあげますから、まぁまぁ」
「えぁ、ぇ」
「飲んで飲んで飲んで、飲んで?」
「っんぶ、うぅ」
「飲んでる君は超かわいーねー」
「う、ぐ」
にこやか~な笑顔でグイグイと俺の手ごとグラスを持ち上げ、三初は理解が追い付かない俺に酒を飲ませる。
なんだよそのコールは。ホストかテメェ。いやホストなら天職そうだけどよ。
──なんて考えられていたのは、グラスの中身を零さずに嚥下できていた最初までだ。
「んうぇ、うぅ……うぅぅ~……」
「いっちょ上がり、と」
ドサッ、と椅子に座る三初の膝の上へ倒れ込んだ俺を、とどめを刺した張本人が抱き留めた。
俺は真っ赤に染まった腕で三初の首にしがみつき、霧とぐらつきが同時に襲う視界を正そうと瞬きを繰り返す。
けれど酩酊状態の俺は、これ以上はもう危ない、の境界線を越えてしまった。
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