誰かこの暴君を殴ってくれ!

木樫

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第九話 先輩後輩ごった煮戦線

21

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 ◇


 今日も今日とて、ここは戦場だ。

 備品や在庫ストックを調達して受け取りに走る竹本がいない露店内で、俺と接客メンバーの三人はせっせと働く。

「担当さん、レジおねしゃーす」
「はいッ」

 いつの間にやらレジ担当になっていた俺は、ゴミ回収の時間になってゴミ箱を片付けていた途中で、レジに向かう。

 ゴミ回収の時間は母体に決められているのに、こうも忙しければなかなか進まない。

 それに毎日俺が朝礼で細かいことを言うからか、接客メンバーは竹本がいないとどうも動きが遅くなるのだ。

 竹本は気が付いていない。
 というか、忙しくなった時からアイツはあまりここにいない。

 データで売り上げや時間帯客数等を確認するだけだ。じっくり見ている暇がないんだろう。

 だからここでは俺が一人でどうにかしなければならなくて、余計気張ってしまう。

 はぁ。怖がらせねぇようになるべく穏やかに言ってんのに、上手くいかねぇ。

 自分の部下ならキツく言える。
 自分の企画なら大胆にできる。
 自分が接客もプロなら厳しく指導できる。

 しかしヘルプのバイトで、竹本の考えた企画で、俺は接客もレジも拙く素人となれば、上から物を言えないのは当然だ。

(あぁ、クソ。竹本がいねぇ時だけなんかこう、やたら仕事増えんのって、俺の仕事が遅いからか……?)

 行列のレジを処理しきって、ぐるぐると考える。

 客が引いた僅かな隙間時間にゴミを集め、俺はバックヤードへ袋を担いで早歩き。

 客が引いて時間が空いても、やることは無限だ。準備、補充、入れ替え、各メンバーの休憩。

 できれば売上の悪いものを売り込む工夫をしたいが、そんな暇はないので最後になる。

 たくさんあるのに、顧客がいるのでフロアでは走ってはいけない。

 目の前に現れる自分の仕事をこなすだけで精一杯の俺は、自分がしている仕事が誰のものかなんて考える余裕がない。

 俺がゴミ回収をして持って行っている間に二人のどちらかが補充をしてくれればいいが、教えたものの、やってくれたことはなかった。

 二人が一人ずつ休憩する二時間は俺は雑務がなにもできないし、マジでままならねぇよ。

 やり方を教えても必要な時に動いてくれねぇってのは、自分の後輩ならぶん殴る。

 でも客に見えるところで叱責するのはだめ。始業と終業の前後はすぐ帰ってしまう。

 昨日はついに接客態度に対してのクレームがきた。
 うちの一人が、客を怒らせてしまったのだ。

 もちろん俺が頭を下げたが、対応している間もそのスタッフはずっと俺の隣で立っていたから、他の客を長く待たせてしまって、そちらからもクレームだ。

 当然後で指導はした。

 しかし俺だって接客は下手くそで愛想笑いが固くて怖いらしく、説得力皆無でぐうの音も出ない。

 終業後にクレーム報告書を作成しながら、ため息を吐いたという苦い話。



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